音を長期間記憶し、音で社交性が向上する動物達ーー「動物と音」の紹介

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2022.8/05 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、動物が音に関連して有している、驚きの内容についてご紹介します。

◾長期間音を記憶するコウモリ

動物の持つ驚きの能力が発見されました。スミソニアン熱帯研究所やアメリカの大学に所属する研究者たちの研究では、メキシコ南部やボリビア、ブラジル南部等に生息するカエルクイコウモリが、ある音を最長で4年間記憶することを示しました。

研究では、まず49匹のカエルクイコウモリを捕獲します。次に、好物のカエルの音を流し、その音に近づくとエサが得られるように訓練しました。さらに、カエル(トゥンガラガエル)の音に徐々に自然界には存在しない携帯の着信音を混ぜ、最終的に着信音だけでエサが得られると感じさせることに成功しました(少なくとも40回訓練した他、エサにありつけない別の着信音も流して、音を聞き分けられるようにしています)。

その後このコウモリたちにマイクロチップをつけて野に放ってから4年後、その中から8匹の捕獲に成功しました。このコウモリたちに対して、かつて聞かせた着信音と別の着信音を聞かせたところ、そのうちの6匹が正確に、かつて聞かせた着信音の方に飛んでいきました。

つまり、多くのコウモリは、4年経ってもエサに直結する音を覚えていたということになります。これには研究者も驚いたと述べています。

◾クラシック音楽を聞くと社交性が向上するイルカ

次に、近年は動物福祉の立場から、飼育動物の「幸福な暮らし」を重視し、そのための具体的な工夫を指す「環境エンリッチメント」という言葉が注目されています。その一環として、イルカに対してクラシック音楽を聞かせる実験が行われました。

よく知られている通り、イルカは知能が高く、人の発音を真似るなど、高い学習能力を有しています。

そこで、イタリアのパトヴァ大学の研究チームは、イタリアにあるイルカ園で飼育されている8頭のバンドウイルカに実験を行いました。

その方法は、バッハやベートーヴェンのクラシック音楽を水中スピーカーから一日20分、計7日聞かせるというものです。また、その他の7日間で、雨音(聴覚)や自然の風景動画(視覚)、水に浮かぶおもちゃ(物体)等を与えて比較も行いました。

結果、クラシック音楽だけが、実験中や実験後も、仲間への親密な行為や一緒に泳ぐといった、イルカの社交性を向上させることがわかりました(比較対象である実験でも一時的な社交性向上はありましたが、実験中だけでなく、実験後にも効果があるのはクラシック音楽だけでした)。

なぜクラシック音楽にこれだけ効果があるかは今後の課題ですが、それぞれの動物に適切な環境エンリッチメントが模索される中、音がもたらす効果を証明した研究のひとつであることがわかります。

このように、動物と音の間には、まだまだ知られていない事柄があります。これらを理解することで、環境エンリッチメントなど、動物と私達のより良い関係を構築することができるようになるかもしれません。

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