音楽は快感や記憶力の向上にも貢献するーー「音の効果」を考える

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2021.4/02 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、音が私達に対して及ぼす影響について、改めて考えていきたいと思います。

◾音楽がもたらす快感

音楽を聴くと、人は快感を感じます。人は食事やアルコールを摂取すると、脳内の報酬回路(ドーパミン)が刺激されて快感を得ますが、音楽を聴いても、これらと同様の回路が刺激されるのかどうか、実際にカナダの研究者が実験しました。

この音楽と快感に関する研究は2021年3月に発表されました。方法としては、「経頭蓋磁気刺激法(TMS)」と、「機能的磁気共鳴画像法(fMRI)」という方法を用いて、脳を刺激します。

TMSは電磁力を使って、脳内のニューロンを興奮させる方法で、fMRIは脳内の血流反応等を視覚化する方法です。MRI(核磁気共鳴画像法)という名前はよく知られていますが、fMRIは、脳の機能活動がどの部位で起きたかを画像化するという方法です。

TMSとfMRIを用いて17人の被験者に対して実験を行ったところ、音楽(ポップミュージック)を聴く前に報酬回路を刺激すると、音楽を聴いた時の快感が増加し、逆に音楽を聴く前に報酬回路を抑制すると、音楽を聴いた時の快感も減少しました。このことから、聴覚刺激と報酬回路が相互に関係することがわかりました。この回路はアルコールや薬物、食事にも共通しているので、音楽がもたらす快感は、これらと共通しているということがわかりました。

聴覚刺激は、食事やアルコール、薬物で得る刺激と基本的に同じということです。したがって、いかに私達の生活にとって、音が重要であるか、逆に音楽のない生活が困難なものであるかがわかります。

◾音が記憶力の向上をもたらす


他にも音響刺激は、多くの利益をもたらします。例えばアメリカの研究者は60歳〜84歳までの13人の被験者に、睡眠中にピンクノイズという音の刺激を、各自の脳波とシンクロさせながら聞かせます。その結果被験者は、いわゆる深い眠りである「ノンレム睡眠」の中の、徐波睡眠(Slow-wave sleep:SWA)と呼ばれる睡眠が増加し、睡眠の質が向上。起きてからの記憶力テストでは、音響刺激を受けなかった人々に比べてテストのスコアが平均で3倍になりました。

このように、音は私達に多くの利益をもたらしているのです。

◾お知らせ

2021年4月3日(土曜)、夕方5時から特別番組
「さらに広がるAudioMovieの世界」をお送りします。進行役はTBSの小川知子アナウンサーと塚越健司です。
新年度も活動の幅を広げていくAudioMovieのラインナップを紹介し、
各作品の主要キャストや制作者も出演します。




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