オンラインで情報の受け取り方が変わるーー「オンライン会話の大声」を考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「オンライン化で情報の受け取り方はどう変化するか~オンライン上の会話における大声」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2020.5/15 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、オンラインで行われる会話の「声の大きさ」について考えてみたいと思います。

◾オンラインビデオツールのメリット・デメリット

新型コロナウイルスの影響で、仕事であれプライベートであれ、オンライン上で語り合う機会が増えました。中でもZoomやTeamsといったオンラインビデオツールが注目されていますが、その使い方にも一長一短があります。

音声とは異なる事例ですが、例えばオンラインで講義を行うと、大教室での講義よりも質問が挙がりやすくなるという声も聞かれます。これは、物理的な距離がなく、画面上から自分に語りかけられるような錯覚、つまり1対1のコミュニケーションが行われているように錯覚するためなのだと考えられます。リアルな対面空間ではありませんが、逆にオンラインの方が他者を近くに感じられるという側面もあるのです。

一方、デメリットもあります。例えば、狭い画面上で表現しようとして、いつも以上に感情表現を行った結果、疲れてしまうという指摘です。あるいは、いつも以上に他者の動作を気にするなど、集中力の面でも負担が多いとも考えられます(もちろん、「慣れ」の問題である程度解決されることもあるでしょう)。

オンラインビデオツールで発生する音声問題のひとつに、声がつい大きくなってしまうというものがあります。その結果、家族から注意されたり、大声を張り上げすぎて疲れてしまう、というものです。この点に関しては、対面であればボディランゲージなどの非言語的な行為を自然に読み解き、音量を調節できるものが、オンラインだと相手の反応がわからず、相手に伝えようとすればするほど、気づかずに声が大きくなってしまうものと考えられています。

◾声が大きくなる様々な要因

オンラインビデオツールの大声問題は、以前から指摘されています。2005年という比較的はやい時期にオンラインビデオツール(論文では「インターネットビデオ会議」)の利用について検討した研究があります。

Mac-Mac間で「iChatAV」というツールを利用したこの研究では、マイクとカメラが一体化した機器を利用したため、数十センチ離れたところから話すことが心理的に作用して、声が大きくなるといった分析がなされました。

この問題はヘッドセットを用いることである程度解消できましたが、現在でも、大人数で行うオンライン会議などで、特定の人の声だけが小さい場合では、自分の声が伝わっているとわかっていてもなお、私たちは大きな声を出してしまうのです。

相手を遠くに感じてしまう心理的要因や、マイクの位置、また相手の音量など、私たちの声が大きくなる原因は複雑化しています。一方でこのことは、こうした心理的、物理的、技術的環境によって、私たちの情報に対する感性に変化が生じていることでもあります。私たちの情報に対する感覚は、環境とともに変化するのです。

今後はオンラインであることのメリットを最大限利用しながら、デメリットを減らすため、さらなる改善が求められます。そしてまさに今、世界中でそのための試行錯誤が繰り広げられているのです。

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