2022年の音と生活ーー「様々な音環境を生きる」ためには

2021.12/31 TBSラジオ『Session』OA


Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、様々な発展を遂げる音環境についてご紹介します。

◾骨伝導の人気

現在、音を聴くための機器は豊富にあります。骨で音を聴く骨伝導イヤホンは、耳をふさぐことなく周囲の音を聴くことが可能です。特にコロナ禍でリモートワークとなった人が、在宅でイヤホンを利用し続けた結果、耳を痛めるケースもあり、改めて骨伝導に注目が集まっています。

中には、腕時計のようにワイヤレスの骨伝導イヤホンを常時装着して過ごす人もいます。骨伝導であれば、通話もワンタッチで耳をふさがず、作業しながら可能であり、利便性が強調されています。

また以前も紹介しましたが、骨伝導方式であれば、ケースにもよりますが、難聴等の困難を抱えた人も音を聴くためのハードルを下げてくれます。実際、補聴器では聴くことができない音を聴くことができる、骨伝導の聴覚サポートデバイスが、クラウドファンディング等を中心に登場しています。

◾よりよいヘッドホンとは

一方、やはり音質にこだわりたい時など、ヘッドホンを利用するという人も多いでしょう。そこで、アメリカの音響技術の研究者で、大学で教鞭を執ると同時にミュージシャンでもある、ティモシー・スー氏は、良いヘッドホンについて解説しています。

まず前提として、音とは空気の振動によって生み出される波です。この波のサイクル数(周波数)によって高い音や低い音として聞こえますが、人間の耳は概して20ヘルツ〜2万ヘルツです。また、音を聴くためには、鼓膜や中耳、内耳で音を電気信号に変換し、脳が最終的に音として解釈します。

ヘッドホンは様々な技術を用いて、なるべく歪みがないまま、収録された電気信号としての音を空気振動に変換し、私たちに届けます。一方、その過程ではどうしても多少の歪みが生じますが、それがヘッドホンの個性にもなっています。スー氏によれば、年齢や文化、好きな音楽の傾向によって、個々人に最適なヘッドホンがあると言います。

例えば、ヒップホップであれば低音が強調されるもの、クラシック音楽であればなるべく歪みがないものが良いヘッドホンであるといいます。さらに、聴覚に困難がある人は、より聞き取りやすい1000〜5000ヘルツの周波数が強調されたものが良いヘッドホンです。また昨今では、スマホでも周波数の変更などを行う「イコライザ」機能があり、シーンに合わせた音楽の聴取がある程度可能です。

このように、音を聴くための様々な環境が整うことで、より豊かな音響環境を生きることが可能になっています。2022年も、音とともに私たちは生活していくのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?