ますます進む技術発展ーー「視覚支援」ツールの最前線

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「ますます進む技術発展〜「視覚支援」ツールの最前線を考える」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2020.9/11 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、最新の音響技術と視覚支援デバイスについて紹介します。

◾アップルが進める音響技術

音を活用したサービスが次々と生まれる昨今、アップルが2018年に米特許商標庁(USPTO)へ出願した特許の内容が、2020年8月に公開されました。この技術は音声が特定の方向から聞こえるもので、それがナビゲーション代わりになるというものです。

目的地を決定すれば、ステレオのヘッドフォン等を装着したユーザーに対して、進行方向に音楽やナビの音声等を流すことになります。もちろんナビゲーションの方法は声による指示だけでなく、音楽やラジオが目的地の方向から聞こえる、ということも可能でしょう。

この技術が実際に特許として登録されたり実用化されるかどうかはまだわかりませんが、アップルは2020年6月にもワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」向けに、「空間オーディオ」(spatial audio)と呼ばれる技術を、この秋にも搭載すると発表しています。これもまた、ワイヤレスイヤホンに搭載された加速度センサーやジャイロセンサーを用いることでユーザーの位置情報を正確に把握し、より立体的な音環境を提供するものです。以前紹介した「音のAR」技術がますます発展しているということであり、自分と音の位置について、より複雑な事が可能になるでしょう。

◾ここまでできる視覚支援デバイス

以前も紹介した視覚障害者向けの技術も、興味深い製品が登場しています。例えばイスラエルに本社を置く「オーカムテクノロジーズ」が開発している、メガネのフレームに小さなAIを搭載したオーカムマイアイ(OrCam MyEye)という視覚支援デバイスは、非常に多くのことが実行可能です。

視覚障害者にとってお札は、それが10000円なのか1000円なのかを区別することは難しく、服の色の判別も同様に困難です。そこでこのデバイスは、目の前の文字を読み上げたり、登録した人の顔を認識したり、商品を識別してユーザーに伝えることができます。さらに、人混みの中で家族を識別してどこにいるかを教えてくれるなど、視覚情報の多くを言葉で伝えるのです。

また、オーカムテクノロジーズは2020年9月、世界的に有名なサッカー選手のリオネル・メッシをアンバサダーに迎えました。また日本ブラインドサッカー協会の日本代表選手である加藤健人選手も、同社が立ち上げた目の不自由な人々のためのプロジェクトに参加しており、社会的な活動や啓発運動も期待されます。

視覚支援デバイスは今後、目の前の物や周辺情報など、より複雑な情報を伝えることが可能になるかもしれません。そしてそこには、上述の音響技術などを組み合わせることも可能かもしれません。

とはいえ、現状ではこのような製品はまだまだ値段的に高く、普及には困難も伴います。補助金などによって開発が進むとともに価格を下げることも、求められているように思われます。

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