猫のあの音は人間にも様々な効果をもたらすーー「猫のゴロゴロ音の秘密」を紹介
2022.11/25 TBSラジオ『荻上チキ・Session』OA
Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、ゴロゴロと鳴くネコの音に関する様々な研究を紹介します。
◾猫のゴロゴロ音の秘密
猫は人と同じ喉頭(こうとう)を利用して声を出しており、おなじみの「ニャー」という鳴き声も、基本的に人間の発音と同じ原理で発せられます。一方、ゴロゴロ音は発音時だけでなく、息を吸う時にも発生させることができます。
猫には喉の奥に舌骨(ぜっこつ)という骨があり、呼吸で空気の出し入れをする際、この舌骨に声帯の振動が当たると、残響音として「ゴロゴロ」という音が出るのです。
そんな猫のゴロゴロ音。猫はなぜこの音を出すのでしょう?一般的に考えられているのは満足を示すものと考えられています。ですが、緊張や空腹を感じる時にも出されている時もあるとのこと。この点について、ある生体音響学者(エリザベス・フォン・ムゲンタラー Elizabeth von Muggenthaler)は「自己治癒の一種である可能性が高い」と指摘しています。
というのも、ゴロゴロ音の周波数帯(平均25~150ヘルツ)は、骨の成長を促進して、痛みを軽減する効果があるという研究があるからです。つまり、座ることが多い猫は、自己治癒としてゴロゴロ音を発している可能性があるということです。
◾ゴロゴロ音は人間にも有効
そんな猫のゴロゴロ音。実は人間にも様々な健康効果をもたらします。
一般的に、猫と触れ合うと、飼い主は幸せホルモンとも言われるオキシトシンといった、リラックス効果をもたらすホルモンが分泌されることが指摘されています(近年はアニマルセラピーが注目されています)。
一方、ネコ心理学者の高木佐保氏によれば、猫のゴロゴロ音に含まれる微細な振動は、人の骨の骨密度を上げることがわかっています。実際に骨密度が減少するリスクの高い人を対象に実験を行うと、ゴロゴロ音を聞く/聞かないで、骨密度の度合いに有意な差があったことがわかりました。
また、ゴロゴロ音はリラックス効果があるホワイトノイズと比べても、人間にリラックス効果をもたらすことも実験で明らかになりました(この実験は、猫を好きかどうかは関係ありません)。要するに、猫のゴロゴロ音人の骨の健康に寄与し、またリラックス効果をもたらすということです。
◾ゴロゴロ音をいつでもどこでも聞く
そんな健康効果のある猫のゴロゴロ音。ブリュッセルを拠点に活動するエンジニア兼サウンド・デザイナーのステファーヌ・ピジョン氏が、このゴロゴロ音をいつでも聞けるだけでなく、ゴロゴロ音をカスタマイズできるサイト「Purrli」(purr:猫がゴロゴロと喉を鳴らす)を立ち上げています。
このサイトは、本物の猫の泣き声を参考につくられたサウンドエンジンを利用して、睡眠/幸福、リラックス/喜びといった、パラメータを調整して、リラックスや睡眠、あるいは集中したい時等、自分の状態に合ったゴロゴロ音を聴くことができます。加えて鳴き声も出せるこのサイト、無料で聞くことができます(イヤホンや外部スピーカー環境推奨)。
このように、猫のゴロゴロ音は人間にとっても様々な効果をもたらします。猫を飼っている人は、猫の音にも注目してみてください。
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