秋に聞いてリラックスが期待できる音はこれだ!!ーー「虫の音」特集

2021.10/01 TBSラジオ『Session』OA

https://www.tbsradio.jp/articles/45181/

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、秋になると耳にする、虫の音について紹介します。

◾虫の音に感じるイメージ

秋も近づき、夜になると自然と虫の音が聞こえる季節となりました。日本では一般的に、コオロギ等の虫の音は自然の情景を感じさせる好ましい音だとされていますが、欧米では騒音と感じられているなど、文化的な差異が指摘されています。


そこで、実際に日本では虫の音をどのように感じているのかについて調べた2007年の研究があります。研究では、20代〜50代の男女計29名に対して、夜に鳴く虫の代表であり、スズムシ、エンマコオロギ、カンタンの3種の音を、それぞれ聞かせて、音から感じられる要素を調べました。この3種はだいたい8月〜長くて11月にかけて活動する虫です。

調査にあたっては、音の種類を
①音質:温かい/冷たい、力強い/弱々しい、暗い/明るい、低い/高い
②音律:高揚感のある/ない、穏やか/騒々しい、抑揚のある/ない、はっきり/ぼんやり、豊か/貧弱
③音の印象:美しい/汚い、情緒がある/ない、風情がある/ない、清涼/濁った、気にならない/うる さい

の3つに分けて調査しました。

その結果、3種類の虫のそれぞれに、いくつかの特徴があることがわかりました。まず、この3種の虫の全般的特徴として、「美しい」「高音」「清涼」の項目に該当することがわかりました。また、その虫の音も、リラックス効果をもたらすとされる「1/fゆらぎ」が確認されました。

より詳細には、スズムシの音はコオロギに比べて「冷たい」「金属性」の印象が強く、逆にコオロギの音はスズムシに比べて「温かく」、「深みのある」音となります。 カンタンは他の2種と比べると「力強い」「騒々しい」「うるさい」といった印象があります。

また被験者29人中24人が回答した虫の音のイメージは、秋や夜といった「季節・時刻」が36%田舎、月夜といった「風景」が33%など、全体的に季節感や情景を想起させるという傾向がみられます。

 
◾どのような音にリラックス効果があるか

上記と同じ研究者が参加した研究では、コオロギ等の虫の音を聞いた被験者の脳波を計測しています。その結果、虫の音にはリラックスや落ち着きを促す「α波」が生じることがわかりました。

このように、虫の音には良いイメージやリラックス効果が期待できるため、生活の様々な場面で用いることが考えられます。では、実際にどのような虫の音を聞くのが良いのでしょうか。

まず、無音時間が多くなるとリラックス効果が損なわれるため、一匹虫の音ではなく、単一の虫の音を複数同時に鳴らすことで、よりα波が、つまりリラックス効果が高くなるだろうことが指摘されています(ただし、無音が一切ない場合は、虫の種類によっては「うるさい」と感じる可能性もあります)。

ただし、音の評価に関しては地域の文化等にも影響されることがわかっています。

したがって、虫の音のイメージについても、住んでいる地域によって変化があると考えられます。鳴いている虫について知っているなど、音の認知度が高いと快適感・親和感も強くなるため、リラックス効果を求めるのであれば、住んでいる地域に生息する虫など、ある程度聞き馴染みのある虫の音を選択する必要もあるでしょう(今回紹介した研究は茨城県で、茨城在住の被験者を対象としているため、別の地域では別の結果が生じる可能性も指摘できます)。

いずれにせよ、秋は虫の音が聞こえる季節です。耳を澄ませてみるのはいかがでしょうか。

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