4ヶ月先までの音楽トレンドがわかる?ーー「音楽のトレンド予測」は可能か

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2021.1/1 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、音楽のチャート予測技術について紹介します。

◾音楽トレンドを予測する

以前も紹介したように、AIが自動で音楽を作曲したり、既存の音楽をアレンジするサービスが登場しています。2019年にはマーラーの未完の交響曲をAIの続きを作成したり、バッハやベートーヴェン風の音楽を作曲するAIも登場しています。

そんな中、ヒット曲の予想をAIで行おうという研究が行われています。NTTデータ、NTTデータ経営研究所と阪神コンテンツリンクが共同で研究を行い、ヒットソングの特徴の可視化や、それによる未来の音楽トレンドが予想できると発表しました。

この研究は、NTTデータの「NeuroAI」という技術と、阪神コンテンツリンクのBillboard JAPANのチャートデータを利用したものです。分析には2016年12月から2020年5月までにチャートインした2185曲を対象に、チャートデータや音楽のジャンル、歌詞やコード進行といったデータをNeuroAIに読み込ませるのですが、NeuroAIはコンテンツに触れた人の脳の反応や印象を予想するという技術的特徴を持っています。そこで、楽曲を聴いた際の推定脳活動を新たな指標に加えて分析するところに、この研究の特徴があります。

これによって、新たな音楽の特徴やヒットソングの特徴を可視化することが可能になると、研究は述べています。この研究結果を利用すれば、これまで以上におすすめプレイリストの精度が向上すると考えられます。ジャンルや曲調が異なった楽曲でも、脳活動の観点から聴いて心地よい楽曲を提供が可能になるからです。

ちなみに、コロナ前とコロナ後では、歌詞に「夜」のある楽曲が増えたことがわかりました。また脳活動の特徴という意味で類似した曲は、石川さゆり『天城越え』と米津玄師『Lemon』であり、一見すると全く異なる楽曲を楽しむ、つまり興味の範囲を拡張するサービスが登場するかもしれません。

もうひとつ、研究は4ヶ月先までの未来の音楽トレンド予測が可能になったと述べています。実際にヒット曲の予測が可能かどうかを試すため、2020年のBillboard JAPANの上半期のランキングと、NeuroAIが脳活動や歌詞、コードに、過去の音楽チャートを加えたものを分析した結果を対比させました。分析にはチャートデータを読んでいるものの、アーティストのこれまでの社会的知名度などは考慮していません。

結果は、あいみょんや菅田将暉、Official髭男dismなど人気のアーティストを反映している一方、一位にwacci「別の人の彼女になったよ」という、人気はあるもののお茶の間レベルに浸透したものではない楽曲が挙げられています。この意味で予測は完璧ではありませんが、一方で、今人気のある音楽にはどのような特徴があるかを示しているとも考えられます。

他にも、週単位の急上昇楽曲の予想もしており、実際に2020年7月第4週の音楽チャートを予測したところ、こちらはYOASOBI、ヨルシカなどのランキング上昇を予測ができたとのことです。こうした研究により、ヒット曲の予兆を感知したり、新たなアーティストの発掘にもデータが参考になると考えられます。

今回の研究だけでなく、世界中でヒット曲やトレンドの予測を行う人工知能の開発が進められています。未来がわかってしまうことに抵抗を感じる人がいるのも事実ですが、音の未来に関する研究は、日々続けられているのです。

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