SC Paderbornでのシーズンを終えて/ エドアルド・シュミット分析担当コーチに聞く
4年という長期にわたるシュテファン・バウムガルト監督時代が終わり、2021年7月からドイツ2部のSC Paderborn(SCパーダーボルン、以下SCP)に、ルーカス・クワスニョク監督がやってきました。ルーカスは、カールスルーエのユース監督から始まり、ドイツ3部のカール・ツァイス・イエナ、ザールブリュッケンを経て、SCPにやってきました。ドイツ2部にチャレンジするのはこれが初めてです。
前任者のバウムガルト監督は、カルト的な人気を集めただけではなく、SCP在籍中はクラブを2部、ブンデスリーガと連続昇格へ導きました。2021/22シーズンからはケルンの監督に就任しています。彼が抜けた穴は大きく、シーズン初めは残留争いも覚悟しましたが、終わってみれば7位でフィニッシュ。新任監督の初年度としては上出来だったと思います。
40歳と若いルーカスを支えるコーチ陣の一人として、サンクトガーレンからエドアルド・シュミットがアシスタントコーチとしてやってきました。
彼は有能なサッカー・アナリストとして知られていて、『フットボール批評31号』では、日本の杉崎健氏と対談もしています。SC Paderbornの英語版ファンサイトを作っている方が、エドアルドにインタビューをしているので、許可を取ってその内容を少しまとめてみました。ここでは、ウェブ記事とPodcast音声の両方から少しずつ引用しています。
SCPに来るきっかけは
昨シーズンの終わり頃、SCPのヴォルゲムートGMから連絡を受けました。電話で何度かやりとりをし、新監督のクワスニョクとも話しました。ドイツのプロサッカーチームでの仕事は、自分のさらなる成長にもつながると考え、すぐにチームに加わりたいと思いました。
アナリストの仕事
一日の大半はデスクに向かっています。隣には監督。一緒にいる時はいつも議論しています。それと同時に、ビデオを使って分析をするのが私の仕事です。昨年の夏に加入した際、トレーニンググラウンドに新しいビデオシステムを導入しました。様々な角度で練習を撮影することが可能なので、使いたいシーンを自由にカットできます。対戦相手の映像を見ることも重要です。週の始まりはまず次の対戦チームの分析からです。これには2、3日かかります。その後、試合をどう進めたいかを監督と議論します。試合日までにはいろいろなことが起こるので、毎週全て同じとは言えませんが、分析をしながら状況に備えます。
12フォーメーション
SCPは今季12フォーメーションを試したと言われていますが、私たちは『試した』わけではありません。確かにさまざまなフォーメーションでプレーしましたが、それは試合の解決策を見つけるためでした。ある程度固定されたラインナップを好むファンがほとんどだと思いますが、それで負けると『SCPはまた負けた。監督が変更しないからだ』と言いますよね(笑)。私たちがたくさん変更を加えるのは弱いからではありません。対戦相手に対するアドバンテージを持ちたいからです。リーグのライバルたちはそれぞれに違います。例えばHSVとカールスルーエは全く別のチームです。シーズンを折返し、19節のニュルンベルク戦と20節のブレーメン戦は、同じフォーメーションでプレーしました。すでに非常に強力なチームができていたので、大きく変える必要がなく、できることなら毎週同じ形でプレーしたいと思いました。ええ、そしてその後、ご存知の通りスヴェン・ミヒェルが去りました。
プレシーズンから好調な序盤へ
新しいコーチ陣と一緒に働くのは初めてだったので、まずはチーム作りが重要となりました。キープレイヤーも失いました。ションラウやアントヴィ=アジェイ、ヴァシリアディスなどです。ポカール1回戦でディナモ・ドレスデンに1-2と敗れたときに、おかしな話ですがようやくプレシーズンが終わったと感じました。同時にチームの強みや、自分たちがどうプレーすべきかを理解した時でもありました。このドレスデン戦では初めて、プラッテとミヒェルが一緒にプレーしました。それから3節のブレーメン戦。あれがまさに始まりでした。
ミヒェルとプラッテの2トップ
この頃は何をしてもうまくハマりました。私たちはミヒェルとプラッテの2トップの形を見つけました。ビルドアップで引きつけ、相手が後ろ2枚を残している状態でボールを奪い、ミヒェルとプラッテを走らせます。その状態では相手も準備ができていません。そしてこの時期の二人は驚異的に調子が良かった。もちろんそれがずっと続くわけではないのですが。
シーズンが進み、対戦相手が慣れてくると私達も苦労しました。ですから、冬にクレメントやムスリヤのような選手を獲得したのは納得できます。ダイレクトで相手を上回ることを狙うだけでなく、もう少し複雑なビルドアップを加えてバリエーションを持たせたのです。
HSV戦からシーズン終了まで
28節のハンブルク戦での勝利は大きかったです。私たちが望むスタイルではありませんでしたが、5バックにし、ボックス内で上手く守りました。そして3、4度の少ないチャンスで2得点を上げました。基本は5-4-1、5-2-3、ボールを保持したら普段と同じく3-4-3。この勝利で私たちは勝ち点を40とし、リーグ残留が確定しました。(HSV戦での勝利に関しては、SCP公式のYouTubeでも同じようなコメントをしています)
この試合をベースにした3-4-3で、シーズン終了までサッカーを楽しみました。バックラインの前にクレメントを配置し、クリエイティブな彼と、走り回ってカバーするシャレンベルクのバランスはとても良かったです。前3人は、ムスリヤ、スルベニー、プレガーのセット。ウイングではこちらもクリエイティブな選手であるユストファンもいます。彼がサイドにいるときは、攻撃面が強化されます。逆サイドには安定感があり運動量の多いシュスター。この構成は多くの選手にフィットしました。そして、それまでチームに少し欠けていた自信という要素をHSV戦で得たのです。(以上、SC Paderborn Englishより)
2022/23シーズンへの期待
エドアルドのインタビューは、他にも気になるところがたくさんあるのですが、すでに新シーズンも始動しているので、また折を見てご紹介できればと思います。6月9日からはプレシーズンが始まり、SCPはアメリカでキャンプと親善試合を行います。対戦予定のフォワード・マディソンFCが素敵な紹介ビデオをリンクしてくれています。
ドイツ2部の中でもかなり地味で、注目する人も少ないSC Paderbornですが、2022/2023シーズンはどのような年になるか、今からワクワクが止まりません。