見出し画像

Research in Japanese pronunciation & perception 日本人が話す英語の発音に偏見の壁日本人が直面する不当なコミュニケーション差別の実態 (2008)

By: Scott Perry, CPL

Speech therapist and language instructor for Japanese people.

Scott Perry & The S Perry Research Group April, 2008 (Pittsburgh, Pennsylvania)

言語学者 スコット・ペリー

日本人のための発音矯正専門家・言語インストラクター

日本人の英語発音スキルに対する偏見を発見

日本人は長年、英語の中でも特に文法、読み書き、綴りといった分野においては適切な教育が行われ、習得してきました。しかし、英語を話すこと、円滑にコミュニケーションすることについては日本の教育システムでは対応できていない、教師は生徒達に教えきれていないと長年批判があります。日本人は英語の読み書きに関しては全くといっていい程問題ありませんが、英語の発音の間違いは長年、そして今も日本人が抱える最大の問題であります。さらに最近の調査で、日本人が英語を話すとき、さらなるチャレンジに直面していることがわかりました。それは、 日本人だからです。

私は20年以上にわたり、日本人を専門とした発音矯正、英会話の指導において成功を収めてきました。その中でわかったことは、日本人はよく英語の上達と英語におけるコミュニケーションを混同してしまうということです。事実として、日本人が英語を習得するには2つのアプローチが求められます。1つは、語彙、文法、読み書きを習得すること、そしてもう1つは正確な発音を習得することです。日本人の方たちは、“日本人にとっての”英語の発音方法は、日本でもアメリカでも正確に教えられていない、とよくおっしゃいます。正確な発音なしでは、ほとんどの日本人は口頭で上手くコミュニケーションできないでしょう。実際、9年間もアメリカに住んでいたとしても、日本人の英語のアクセントでは平均的に60%程度は理解されていないことが多いのです。(SIPAC統計結果より)結果として、TOEICやTOEFLで高得点を修め、英会話学校で何年も勉強したような優秀な日本人が、夢を実現しようと、もしくは会社の看板を背負ってアメリカに渡ったとしても、アメリカ人が彼らの英語を理解してくれないという現実に直面するのです。20年以上の私の教師経験の中で生徒達が語ってくれた多くのことがこの事実を証明しています。私は20年前から、発音こそがこの問題の原因であると理解していました。しかし最近の調査で、日本人は別の原因に直面しており、それは“日本人が単に日本人であること”、であることがわかったのです。

2008年4月に発表したThe SPerry Research Groupと私の最近の共同調査結果で、日本人が直面している差別は人種偏見であり、日本人の発音スキルに対する先入観であることがわかりました。私の調査では、発音とコミュニケーション能力に対する評価は、声の主が日本人とわかるとマイナスになることが証明されました。つまり、多くの人が、全ての日本人の発音はわかりにくいと思っているのです。

調査の詳細:

調査では、2人のアメリカ人ネイティブスピーカーの声の録音を、私のウェブサイト scottsensei.comに掲載し使用しました。女性の声にはペンシルバニア州ピッツバークの大学卒業生の女性を起用、男性の声にはカリフォルニア大学ロサンゼルス校卒業生のアメリカ人ネイティブスピーカーを起用しました。2人とも、英語の発音は完璧です。合計350人のアメリカ人と日本人がこのスピーカーの発音の評価をしました。ここでは彼らを評価者と呼ぶことにします。ある評価者のグループは、ウェブ上でアジア人女性の写真を見ながら、アメリカ人ネイティブスピーカーの声を聞きました。もう一方の評価者グループは違うウェブページ上で白人女性の写真を見ながら同じネイティブスピーカーの声を聞きました。日本人の写真を見ている評価者は、聞こえてくる声は実際目にしている写真の日本人の声であると思っているわけです。評価者は、聞こえてくるその人の発音をレベル1(完璧・ネイティブ並)~10(理解できない)で評価をしました。具体的にはR音、L音、スピード、リズムについても評価してもらい、最後にこの人物の発音について自由にコメントもしてもらいました。この実験は、前述の男性の声と、白人男性の写真、日本人男性の写真を用いても同様に行われました。

女性、男性共に使用された声は同一のネイティブスピーカーの声のみだったわけですから、どちらの写真を見ても評価はほぼ同等だったと予測されると思います。理論的には、日本人の写真でも白人の写真でもレベル1を獲得し、否定的なコメントや改善項目などは書かれないはずです。しかし、実際の結果に私は衝撃を受けました。というのも、人々はきちんと聞く耳を持っていると思っていましたし、外見で生徒を判断することは私自身ありませんでしたし、そして何よりも、この実験で使用した男性の声は、私自身の声だったからです。私は自分の声を録音し、両方の写真の声として利用したわけですから、評価者は私の声を評価していたのです。

結果の詳細

白人アメリカ人女性の写真を見ながらネイティブの声を聞いた評価者は、平均レベル 1.2をつけました。(不思議なことに、ネイティブ女性の写真を見てネイティブの声を聞いた人でも、コメントでは完璧な発音としながらもレベル2をつけた人がいました。) 一方、日本人女性の写真を見ながらネイティブの声を聞いた評価者は、平均レベル4.3 をつけ、発音改善の余地や、聞きにくかったという趣旨のコメントを記入したのです。男性の声についても、白人男性の写真の方は平均レベル1.1、一方日本人男性の写真では平均レベル5.2(+‐0.5の誤差範囲)という結果になったのです。

評価者からの発音に対するコメント
調査では、評価者から数百のコメントが寄せられました。日本人の写真に対するコメントにはひどく否定的なものや改善を提案するコメントが少なからずあり、肯定的なコメントは若干でした。例えば、”話す速度を上げるべき“”リズムを直すべき“”唇をもっと動かすべき“”もっとレッスンを受けるべき“”音がスムーズでない“”言っていることが理解できない“”聞きにくいスピーカー“”発音が明瞭でない”“聞きとりにくい”“もっと練習して”“悪くはないが、もっと時間をかければ上達できる”といったコメントです。

一方、白人アメリカ人の写真に対するコメントの97%は肯定的なもので、コメントが全くないか、“とても良い”“これこそネイティブの発音だ”“こんな風にいつか発音できるようになりたい”“完璧な発音”“素晴らしい”“聞きやすく滑らかな発音”“プロのよう”といったものでした。

このようなコメントを読みながら、アメリカ人、日本人、私の生徒や生徒でない人も、発音の先生である私の発音をレベル5か6と評価し、改善提案までしてくれているのだということに気がつきました。評価者の中には、私の監督のもとオンラインで評価をした人たちもいました。彼らは日本人の写真を見て、レベル3から6をつけ、たった1分後に全く同じ声を聞いてアメリカ人の写真にはレベル1(完璧)という評価をつけたのです。彼らはまた、自分の先生の発音を評価しているということにも気がつきませんでした。(評価実験の一部は録音され、www.scottsensei.comで聞くことができます。)

明らかに、評価者が“日本人の声を聞いている”と思ったときには、実際には存在しない発音上の問題さえも耳にしてしまっていたのです。彼らは、日本人がどうやったら発音を改善できるのかを、ネイティブスピーカーに対して行ったのです。コメントの75%は否定的ではりましたが、公正なコメントもありました。ごく少数の評価者が、両方の声ともに完璧であるとし、高レベルをつけていました。評価者がネイティブの声を
聞いていると思っていたときは、発音の間違いを見つけなかったのです。

日本人同士で辛い評価

平均して日本人評価者の方が、日本人の発音に対し厳しい評価を下していることがわかりました。アメリカ人の中には、日本人の発音を聞いていると思いながらも、完璧な発音と評価した人もおり、平均レベルは3.5でした。しかし、日本人の評価者はレベル4や5をつけていました。私の生徒に限って言えば、評価はわかれました。上級レベルの生徒の大半は、アメリカ人評価者と類似した評価をしていましたが、まだレッスンをはじめたばかりの生徒達は低い評価をだしました。もう1つ面白いことは、私の声だと気がついた生徒はたった1人、そして2つの声が全く同じであることに気がついたのもたった1人(音楽家、歌手)だったのです。

もし実際の日本人の発音を使ったら結果はどうなるのでしょう?
もし、日本人女性の写真と、本当の日本人女性の声を使ったら結果はどうなるのかと思い、調査をしました。結果の前にまず私が使っている発音評価システムについてですが、これは発音の誤りをパーセントで算出する科学的なものです。例えば、1人の日本人が 100単語の文章を読み、アメリカ人が50単語しか認識できなかったとしたら、発音レベルは7(50%)になります。(scottsensei.comのSIPACをご覧ください。)私はレベル8の日本人の発音を録音しておき、私のサイトに掲載しました。私の予想は、アメリカ人、日本人の評価者共に前回より悪い結果になるというものでした。というのも、今回は本当に発音に多々誤りがあったからです。しかし、結果はまた驚くべきものでした。本物のレベル8の人の発音に対して、アメリカ人は9や10など非常に低い評価をつけ、ほとんど何も理解できない、英語かどうかもわからないとコメントしました。しかし、日本人評価者は8より高い評価、平均レベル6をつけたのです。これにより、アメリカ人は、日本人の完璧もしくは高水準の発音を聞くと話し手の顔に関わらず高く評価することがわかります。時に本来は存在しない間違いを探してしまうこともありますが、そこまで厳しい評価はしません。ところが、発音レベルが6より下だと、アメリカ人はその日本人の発音を全く理解できず、レベル8より低い評価を下すことになります。レベル6より下の日本人の発音にはいくつもの音の誤り(日本人英語)があり、一般的なネイティブには理解できません。しかし、日本人はレベル6より低い日本人英語の発音でも理解できますから、レベル8より高い評価を出したのです。発音がよければ、発音スキルへの偏見による差別を受けますが、発音がまだ下のレベルであれば、平均的なアメリカ人は全く理解できず、ひどい発音と過小評価されるのです。

平均的なアメリカ人とは?

ここでいう平均的なアメリカ人とはどのような人のことを言うのでしょうか。この調査および発音評価システム用の定義として、平均的なアメリカ人とは、日本語を話さない、日本に住んだことがない、日系企業に勤務していない、ニューヨーク、ボストン、サンフランシスコ、ハワイ、ロサンゼルスに住んでいない、日本人と結婚していないアメリカ人を指しています。それは、日本人英語をほんの少しでも理解できれば、調査結果や意見の偏見につながるからです。カンザス、モンタナ、ケンタッキー、テキサス、ユタ、バーモントなどを訪れれば、日本人とほとんど話したことがない平均的なアメリカ人に出会うでしょう。

調査結果は何を意味するのでしょうか?

この調査結果を知れば、日本人の発音学習意欲が低下してしまい、改善を試みなくなるのではないかと危惧する声も聞かれました。しかし、私はこの調査結果が発音の重要性を強調するものであればと願っています。調査結果には肯定的な面もあり、私はこのような差別を克服する方法をお伝えしたいと思います。私の仕事は日本人の発音を矯正し、自信を持って話してもらえるようにすることです。そのために、個人個人に合ったトレーニング方法を提案し上位レベルを目指してもらいます。私はこれまで多くの日本人の発音を3-4ヶ月でネイティブ並の発音レベルにしてきました。もし皆さんが私の生徒さん達と同様に5年、10年、あるいは20年もの間発音で苦労していらしたとしても、
今現在ネイティブ並の発音で話せる生徒さん達のように、望みはあるのです。

私が生徒さん達にネイティブレベルの発音で話せるようになったことを告げると、彼らはそれを信じることができます。調査結果からもわかるように、日本人やアメリカ人の中には偏見から実際には存在しない発音の誤りを作り出してしまう人たちもいます。上位レベルの生徒達でさえ、そのような否定的な人たちに会うと自分の発音にはやはり問題があるのではないか、と不安になる人たちもいます。そんなときは、つい緊張したり、恥ずかしくなったりして自分の能力を疑い、言葉を変えたりもっと悪いことには普段はしない発音の間違いをおかしてしまうこともあるのです。この調査結果を受けて、私が生徒さん達や日本人の皆さんにわかっていただきたいことは、私が“ネイティブ並の発音になったと”言えば、自分は完璧な英語を話しているのだと理解し、自信を持って話して欲しいのです。上位レベルを達成した上であなたの発音を理解しないような否定的な人に会ったときは、是非、一歩前に出て、相手の目をしっかり捉え、同じことをただ声を大きくして言っていただきたいと思います。何一つ変える必要はありません。こうすることで、相手はあなたの発音が完璧であることに気がつき、問題は自分自身の聞き方にあるということを悟るのです。ただ同じことを声を大きくして言えばそれでいいのです。私の上位レベルの生徒さん達の発音は日々改善されており、確固たる自信により偏見を受けることも少ないのです。
その証拠として、アメリカにおける全国ネットのアジア版ニュースに出てくるレポーターがあげられるでしょう。アメリカ人が何ら問題なく彼らを理解できるのは、彼らが自信を持って話し、アメリカ人の同僚と積極的にコミュニケーションするからです。私達視聴者は、テレビに出ているくらいだから発音は完璧なのだろうと想定し、他の人がそのレポーターの言うことを理解しているのだから自分も理解できると思うのです。一方、自分の発音レベルがわからなければ、あなたは平均的日本人のレベル、つまりレベル7か8で話している可能性が高いのです。この場合、発音に問題があるため、ネイティブスピーカーの耳には特に聞き取りにくくなり、平均的なアメリカ人はあなたを理解するのに大変苦労することになります。買い物するときなど何かお金を使おうとしているときでれば、アメリカ人はあなたを何とか理解しようとしてくれます。でも、ビジネス上他のネイティブスピーカーと競って自己スキルやとある商品を売らなければならないときは、発音レベルが低いうちはハンディを背負うことになるでしょう。そして、直面する偏見を克服するには発音レベルをあげ自信もつけなければなりません。偏見の問題は紛れもない事実で、今日も存在し、英語を話すときには必ず直面することになります。そう簡単には克服できません。ですから、自分の発音をネイティブ並にし、自信を持って話せるようになることこそがあなた自身にとって、そして日本人の方々にとっての解決策なのです。もしご自分の発音がコミュニケーションの妨げになっているのではないかと少しでも疑問に思われる方は、まずご自身の発音レベルをチェックし、発音矯正のプロである私からアドバイスを受けるようお勧めします。

発音に関する詳細をお知りになりたい場合は、ウェブサイトを通じてスコット先生と直接連絡をとることができます。また、ニュースレターを受信し、英語に関する情報や会話・発音向上のヒントを得てください。ご自身の発音レベルを知りたい方は、ウェブサイト上の案内を是非ご覧ください。そして最終的に、“自信を持って英語を話しましょう。”

Scott Perry, CPL    
Website www.scottsensei.com   email Scott@scottsensei.com   
Offices in    Los Angeles,  Tokyo,  Pittsburgh
Phone 800 741 8016

調査報告のPDF

発表当時のものですので、事務所の住所等は変わっていますが、ご参考まで添付致します。


よろしければサポートをお願い致します。英語教材の開発や、英語のあたらしい学び方の開発に使用させていただきます。