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説明つかぬ逃走劇が目の前で起こった

私は生まれ持って自他共に認める根っからのクレイジー野郎だ

自称することも痛々しいが

脳のボルトが充分に固定されていない自覚があるのだ

「類は友を呼ぶ」言葉のある通り

親密な関係に至った人は
良い意味で空気を読まない「不思議ちゃん」が主である



それは人間関係のみならず
映画やアニメといったサブカルコンテンツも例外でない

きっとこの怪奇に満ちた作品も
神の思し召を受けて必然的に出会うことに至ったのだろう


インド映画「ジャリカットゥ 牛の怒り」


なぜこの映画を視聴したのか動機なんてない

変人は良くも悪くも記憶に残る意味で

本作も怪奇的な変人作品として

大多数の方の脳裏に焼き付くような衝撃を

今後も与え続けるだろう


狂気に満ちた本作だが物語は極めてシンプル

インド南部の村の一角にある肉屋の男が作業ミスを起こして家畜の牛を誤って脱走させてしまう

大衆を跳ね除けて小屋から未知の世界に解き放たれた牛は田畑や村を踏み荒らして逃げ惑う


脱走した一頭の牛をとっ捕まえるべく

村を巻き込み1000人の屈強な男たちが

牛を地の果てまで追いかけ回す


村で発生したローカルな出来事だが

人口の多いインドが舞台ならば

何にでも大規模で壮大に感じてしまうのだ


画面狭しと端から端までムンムンの男が突撃する様

必死で止めに入る治安警察も今は使い物にならない

大量の男が団結した時に理性なんて隅にもない

非日常的で異常を極めた衝撃映像による

インパクトと現地の熱気がダイレクトに刺激される


「家族に怪我をさせない」「村の治安を守る」
共通意識と愛郷心に満ちた男の眼光は
殺意すらも感じ取れる


牛を捕らえるためならば

足が悪い沼地だろうが

視界の悪い夜間の密林地帯だろうが

松明を真昼間のように照らしながらどこまでも逃がさない

暴れ牛を軽く圧倒する理性を失った全身凶器の男たち×1000の方がはるかに危険であり

一種のホラー要素に見える

私が暴れ牛の立場ならばその場で失禁し大人しく自首しているはずだ 

むしろ追い回される牛の方が可哀想にみえる



牛をただ追うお祭り状態なら平和でよい方だ

牛を捕らえた男が村の名誉なのか

終いには男同士が互いに憎み合い
銃撃戦を交え
空中を血液が飛び交う殺し合いにまで発展する


   「この村にルールなんてない無法地帯」


開始直後から既にアドレナリンもドーパミンも強制的にドバドバ放出される本作は

後半に差し掛かれば 限界点に達した脳を誰も制御する事ができないのだ



「脱走した牛を、皆さんで追いかけましょー!」
と、要約すれば極めてシンプルなストーリーである本作

そんな作品に感想を述べるとするならばこう答える


    「表現できる言葉が見つからない」



この作品は
視聴後に言語を使って面白いだのつまらないだの意見を述べることすらも許さない特別な存在なのだろう


私はトラップに引っかかったのだ

深夜帯に安易な気持ちで観てはいけない

視覚に訴えかける脳内麻薬が 

この度「類は友を呼ぶ」形として出会ってしまった




男だらけの本作は

インド映画特有の豪華絢爛な装飾や衣装はない

突拍子もなく一般人を巻き込んでミュージカルに発展する描写もない


あるのはただ 

人間の質より量を重視した圧倒的人海戦術と

不気味で緊張感を最大限まで昂らせる独特のBGMが淡々と鳴り響き   耳の奥に残る


それにしても
最終的に牛はカレーに煮込まれて胃の中に入るそうだが

牛食をタブーとするヒンドゥー教のインドではこの辺りは許されるのだろうか

いや 

一概にインド=ヒンドゥー教徒と思い込む事すらも思考停止の域ではないかな



こんな狂気を極めた怪物作品もしっかりとアカデミー賞を受け取り

現地の年間興行成績のトップを飾るので 

内容がどうであれ結果は着実に残したのだ


深夜テンションのノリで見入った結果

その日は熱狂で眠りにつく事ができず

気がつけば太陽が登っていた


偶然であった狂気の一作

涼やかな風が吹く6月のこの日の夜を

生涯忘れることはないだろう

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