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エンタメの帝国はこうやって君臨した

はじめに

遠出に旅行をする事が困難な事大に於いて、
「今日本で最高に脂が乗っているスポット」
を的中するならば、どこを思い浮かべるだろう?

外出・移動自粛を政府から求められる昨今、
ユニバーサルスタジオジャパンの広告が、
凡ゆるSNS媒体で目撃しない日はない。

コロナに日常的な話題総べてを吸収された、
20.21年の来場者数は、歴代最多であると噂される。

筆者も九州在住ながら、昨年だけで3度も来園。
年パスの利用が格安な程、距離的な問題もおかまいなしだ。

この、世界に輝きを放つエンタメの帝国は、
わずか10年ほど前まで慢性的な赤字が長引き、
存続の危機に立たされた過去がある事を知ることは少ない。

コロナも跳ね除けた日本屈指のパワースポットは、
崩壊直前から如何にして復活を遂げたのか⁇

奇跡のフェニックスエピソードの裏側を、
この場を通して分析したい。


崩壊手前より見直したマーケティング

「本番ハリウッドの臨場感と興奮を」
とコンセプトとし、2001年に開業したUSJ。

開業当初、ディズニーのキャラクターで結晶化された東京ディズニーをモデルとして、
ハリウッドの映画の世界観に溶け込める、
洋画専門の遊園地としてスタートを切った。


ジュラシックパークやバックトゥーザフューチャー、ET等の映画界の名作を、
水飛沫で物理的に、卓越性ある映像技術で視覚的に直接訴えかける画期的なアトラクションが注目を浴びた。


だが、老若男女問わず支持されるディズニーランドと対照的に、USJは一部の映画マニア以外に需要が低い事は明確だ。


ニッチなマニアに限定された洋画専門の遊園地は
開業5年目にして停滞期に突入してしまうのだ。


① 子供の目線に合わせた世界観

当初こそハリウッド映画の世界観を、忠実に再現する事に拘ったUSJだが。

小さな子供が、銃火器や肉食恐竜が飛び交うような大人向けのハリウッド作品に馴染むは厳しい。

USJは、来場した子供達にも例外なく、
子供目線の感想・意見を聞き出すことに徹底した。


思い起こせばディズニーキャラクターはなぜ幼児層にも支持されるのか。


〝キャラクターは可愛らしいアニメタッチで描かれている〟



大人達のが好む一方的な目線、
子供達が求めるのはターミネーターでもティラノサウルスでもない。

ポップでファンシーなアニメのキャラである


本日のUSJに於いて、スヌーピーやセサミストリートの様なキャラクターが、
看板的な存在を担っている事にそういった背景があるのだ


現在は〝ユニバーサル・ワンダーランド〟と呼ぶエリアが完成。


子供達が大好物とする、遊園地のアトラクションを
ふんだんに取り入れたエリアが誕生したので、
年中家族連れで賑わう光景を観ることができる。


② 非日常を日常に、現実を忘れ去りたい

子供視点の変革を取り入れた次は、アグレッシブで斬新な刺激を求めたがる若者達に注目した。



「ストレスの溜まった社会を忘れ、日常では禁じられている行為、ふざけ合って、絶叫したい」


若者達は、日々職場という密室の出来事に対して
強いストレスを抱えている。

もし社会が許してくれるならば

日常から離れ

玩具のチェーンソーを持って鬼ごっこすることも

街中でハメ外して水をかけ合うことも

禁じ手の一線を越えて暴れ狂いたい……


イベントやショーに対しても

受動的ではなく積極的な参加型で

自分達がショーの主役に立ちたい……




血気盛んな若年層の言葉こそが、
停滞したパーク全体の活気にシンクロする事に注目をしたのだ。


若年層達の根強い希望を受けて、USJのショー・イベントは、
単なるクルーによる実物的な意味から、
ゲスト主体の参加型と生まれ変わり、
始めて大事を成す形式に変貌した。


フェンスを破壊しチェーンソーを振り回す

神出鬼没に襲いかかるゾンビ達から逃げ回り

サバイバルホラー映画の世界観を存分に体験できる

世界屈指のクオリティを誇るハロウィンの名物 

「ホラーナイト」から始まり


夏場こそ海水浴場張りに、

ゲストもキャラも一体となってびしょ濡れになる

真夏の定番「水かけ祭り」

若者の視点、彼らが求めるもの、描いている世界観を実現化した産物なのだ。



③ 縛りなくとも、手抜かりなし


日本人のエンタメ傾向を分析すれば明確な通り、
日本人は欧米人と相対的に、映画を集中的に好まない。


四六時中ハリウッド作品をを愛して止まない映画マニアの視点から、
パーク内の新アトラクションを希望すれば、
確かに一部のニッチな客層には需要はある。

ただし、目的の老若男女の視点を第一とすれば、
そもそも映画界の枠に縛られず、
幅広い観点、特に人気ジャンルから着想を得た方が確実だ。



「時代は変わった。日本人の熱狂の渦は映画業界からゲーム・アニメ業界へ推移する様を」


日本より産み出され、国内も世界も興奮させたゲーム・アニメが本日のUSJの主流となる背景は、
決してハリウッド作品だけに固執せず、
「クルーが求める世界観」を第一に目を向けた。


本日のUSJの通り、 

「洋画専門の遊園地」から、

「世界最高峰のエンタメ大帝国」へと

進化を遂げた瞬間だ。


2015年から現在まで、
エヴァンゲリオン、鬼滅の刃、モンスターハンター
を始めとした、

世界的に知名度の高いアニメ・ゲームの世界観を、

革命的な映像美よりライドアトラクションに落とし込む事を実現した。

2021年には世界一有名なゲームの世界観をエリア化

「スーパーニンテンドーワールド」が開園。


細部まで忠実に再現されたハイクオリティな世界に、日本中に収まらず地球全土が感動している。


衝撃×感動×完成度=命 を再現化するその裏側、
携わるクルー達は、世界観を作り上げるアニメやゲームの視聴を四六時中没頭する。


マリオカートのアトラクションを実現すべく、
のべ1000時間以上のゲームプレイを通して、
緻密な箇所までマリオカートの世界観を徹底分析する。


高質に拘る上で、予算面の課題は切っても切れない。


USJは、ゲストにとってアニメが高い需要を誇るジャンルだと安易な理由で、
アニメ関連の体験を闇雲に採用することはない。


関東よりも低い予算内で、切るべき所はスッパリ切る事に躊躇せず、
投資を決めた場面には一切の妥協も惜しまず投資する。

その上で完成したのが、2014年にオープンした
ハリーポッターエリアだ。


エリア内にはゲスト参加型のギミックを多用し、
販売されているニワトコの杖を使って始めて世界観に溶け込める。

ハリーポッターの功が奏して翌年には、ディズニーランドを超える日本一の入場者数を記録。

クルーや内部者の一方的な主観よりも、
来場するゲストにとって何が需要あり、彼らは何を要求するのか。

拘るべき部分、切り捨てる部分を的確に分析した成果が、日本一来場者の多いエンタメ大帝国と実現したのだ。


かつて、世界初の自動車大量生産を成しえ、
全面的に自動車を大衆のモノとしたヘンリー・フォードは語った。


「大衆は、もっと速い馬が欲しいと望む」


マーケティングは、自己欲に迷走して顧客の望みを蔑ろにしては相互の利益に繋がらない。

一念発起したUSJも、顧客の求める欲に対して
耳を傾ける事に惜しまなかった。


本格的なビジネスの場では、時に自分本位の意見ばかり押し通すのではない。

利用者・消費者の声を重視し叶える姿勢の偉大さが、USJ成功のエピソードより私たちにも痛烈なまでに伝わるのだ。

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