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ヨーロッパ文化教養講座(映画「オフィサー・アンド・スパイ」録画鑑賞記)

2023/06/04
1894年フランスのドレフュス事件を基にして書かれたイギリスの小説の映画化作品。

「戦場のピアニスト」「ゴーストライター」のロマン・ポランスキーが19世紀フランスで実際に起きた冤罪事件“ドレフュス事件”を映画化した歴史サスペンス。

作家ロバート・ハリスの同名小説を原作に、権力に立ち向かった男の不屈の闘いと逆転劇を壮大なスケールで描き、2019年・第76回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞した。

1894年、ユダヤ系のフランス陸軍大尉ドレフュスが、ドイツに軍事機密を漏洩したスパイ容疑で終身刑を言い渡された。対敵情報活動を率いるピカール中佐はドレフュスの無実を示す証拠を発見し上官に対処を迫るが、隠蔽を図ろうとする上層部から左遷を命じられてしまう。

ピカールは作家ゾラらに支援を求め、腐敗した権力や反ユダヤ勢力との過酷な闘いに身を投じていく。

ピカールを「アーティスト」のジャン・デュジャルダン、ドレフュスを「グッバイ・ゴダール!」のルイ・ガレルが演じた。
2019年製作/131分/G/フランス・イタリア合作

映画.com より

コメントと感想:

1.実際に起きた19世紀末の事件を題材にしているとのことだが、えん罪、証拠隠蔽、文書改ざん、改ざんした将校の自殺など、数年前の日本でも起きた事件との類似に愕然とする。
人間は何と進歩しない生き物だと暗澹たる気持ちになる。

2.エンディングは、フィクションのように、正義が100%勝つまではいかないが、何とかえん罪で投獄されたドレフュスが助かってほっとした。

3.正義の味方である、主人公のピカール中佐も、上司の妻と不倫していたりして、正義の味方=道徳的に正しいという構図でないところが、欧米の映画らしくて好ましい。(人間は原罪を持って生まれたというキリスト教の基本価値観によるものだと、小生は勝手に思った。)

4.権力側の軍隊が証拠隠滅を計ろうとするが、ゾラを筆頭にマスコミも力を合わせて糾弾するところが、外圧ではなく自国民の力で民主国になったフランスらしいと思った。

5.この事件の約半世紀前を舞台にした、「ラ・ミゼラブル」の悲惨な人権抑圧のシーンを思い出すと、この時代は人権意識が大幅に改善されたのかなと思った。
そうではなくて、ジャン・ヴァルジャンの階級と、ドレフュスやピカール中佐が属する階級が大きく違うからで、庶民に対してはまだ人権意識が低いままなのかもしれない。



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