ヨーロッパ文化教養講座(2022年 スペイン・フランス映画 「パラレル・マザーズ」鑑賞記)

2024/01/09
よくある乳児取り違え事件かと思ったが、それ以上の深い話であった。秀作だと思う。

スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督が、「オール・アバウト・マイ・マザー」「ボルベール 帰郷」など数々の作品でタッグを組んできたペネロペ・クルスを主演に迎え、同じ日に出産を迎えた2人の母親の物語を描いた人間ドラマ。

写真家として成功しているジャニスと17歳の少女アナは、同じ病院の産科病棟で偶然出会い、同じ日に女の子を出産。ともにシングルマザーとして生きていくことを決意していた2人は、再会を誓って退院する。ところが、ジャニスがセシリアと名付けた娘は、父親であるはずの元恋人から「自分の子どもとは思えない」と言われてしまう。

それをきっかけにジャニスがDNA検査をしたところ、セシリアが実の子でないことが判明。アナの娘と取り違えられたのではないかと疑うジャニスは、悩んだ末にこの事実を封印し、アナとも連絡を絶つ。しかし1年後、偶然アナと再会し、アナの娘が亡くなったことを知る。

ジャニス役を演じたペネロペ・クルスが、2021年・第78回ベネチア国際映画祭でボルピ杯(最優秀女優賞)を受賞。2022年・第94回アカデミー賞でも主演女優賞にノミネートされた。アナ役はこれが長編映画出演2作目のミレナ・スミット

2021年製作/123分/R15+/スペイン・フランス合作
原題:Madres paralelas
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2022年11月3日

映画.com

コメントと感想:

1.スペイン映画は、ほとんど観たことが無かったが、主演女優のペネロペ・クルスは、2017年の「オリエント急行殺人事件」に出演して、凄い美人女優だなと思っていたのですぐにわかった。

2.最後まで観ると三つの話が絡み合っていることがわかる。

1) 17才のアン(演 ミレナ・スミット)と、写真家のジャニス(演 ペネロペ・クルス)が同じ日に同じ病院でこどもを産む。この乳児が取り違えられた。

2)アンとジャニスが、再会してレズビアンの関係になる。

3)フランコ将軍の独裁に端を発したスペイン内戦で政治犯として処刑された、人々の遺骨を収集する事業が、ジャニスの故郷で始まる。この事業の中心人物がジャニスのパートナー。アンは、そのことに嫉妬する。

3.ペドロ・アルモドバル監督は、同性愛者であることを公言しているとのことだが、それにしては、この映画の男性の登場人物は、女優2人に比べて全くと言って良いほど存在感がないのは、どうしてだろう。

4.映像は、カラフルでスペインらしい光りと色に溢れている。

ピカソが「ゲルニカ」を書いたときは、内戦の酷さが、ピカソの目には、この色と光りを消し去って見えたのだろうなと思った。

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