2022/11/12、11/20 聞きかじり生物多様性条約 参考資料

こちらの件、参考にした主な資料を置いておきます。聞いてくださった皆様、ありがとうございました。

そもそもCOPの意味とは、あくまでConference Of the Partiesであって、気候変動の会議だけを意味しません。

気候変動枠組み条約について→米国がいますね

生物多様性条約について→米国は署名はしていますが締結(ratification)はまだです。やる気はあるけど、やってない、みたいな。

ここまでのことで、CBD COP15とは、CBD(生物多様性条約)のCOP(締約国会議)の15(回目)ということが分かりますね。

https://www.cbd.int/conferences/2021-2022

米国がCBD未加盟である理由、一方でFCCCには加盟できた背景については、いくつかの資料や当時を知る政府、NGO、メディアの関係者に聞き取りをさせていただきました。書籍で参考にしたのは以下の資料。

CBDと日本の関係を見ると、最大の拠出国だったり、名古屋議定書に名前が付いていたり、浅からぬご縁があります。気候変動については京都議定書はパリ協定に代わったのですが、名古屋議定書はABSをめぐる透明性確保という意味では、今後も重要であり続けると思われます。

CITESの説明としては、WWFのページが分かりやすかったです。あくまで絶滅の恐れのある野生動植物の国際取引という、生物多様性保全や利用のごく一部を担っていることが分かります。あとは、決定・決議の仕組みや、留保など、CBDと比べてみると、国際条約にもいろんな違いがあることがよく分かりますね。

2010年には、愛知県でCBD COP10が開かれ、2020年までの国際目標「愛知目標」が採択されました。ところが…

愛知目標の棚卸しをしてみると、簡単にいうとほとんど達成できていませんでした(※ただし無意味だったと言うことは全くありません。詳しくは出典に当たってください)。

IPBES版(2018年時点)

図は日本語版SPMから

GBO5(2020年まで)


画像はNACS-J(https://www.nacsj.or.jp/2020/09/21770/)から

こんなことをやっている間に、生物多様性の損失はとてつもなく大きなリスクになってしまいました。2022年のWEFのGlobal Risk Report では、これから10年で世界が直面する脅威として、気候変動対策の失敗と異常気象に次ぐ3番目に。関連で言えば自然資源の危機というものも8位に入っています。

Global Risk Report 2022(WEF)

https://www.weforum.org/reports/global-risks-report-2022/

そんな中で2030年までの国際目標を話し合うCOP15はとても重要なCOPになってきます。

こうした目標があるからこそ、様々な措置が現場まで降りてきます。そしてそれは保全のために活用できるツールでもあります。例えば、保全現場でも根拠にすることが多々ある生物多様性地域戦略が出来るまでの背景をたどってみると…

環境省資料から小坪作成

→生物多様性地域戦略は事実上の「義務化」

ほかにもこんなご指摘がありました。

では、今回のCOP15で目玉となる新しい国際目標、post2020 GBFとはというのが2回目のテーマ。こちらはアーカイブもあります(12月20日ごろまで)。


分かりやすい資料(※ただし、実際はもう少し議論が進んでいます)

https://www.env.go.jp/content/900489613.pdf

図は上記資料から抜粋

なお、これまでのzero draft、1stdraft、現在のworking paperはこちらから。

zero draft

https://www.cbd.int/doc/c/efb0/1f84/a892b98d2982a829962b6371/wg2020-02-03-en.pdf

1st draft

https://www.cbd.int/doc/c/abb5/591f/2e46096d3f0330b08ce87a45/wg2020-03-03-en.pdf

現在のworking paper

https://www.cbd.int/doc/recommendations/wg2020-04/wg2020-04-rec-02-en.pdf

https://www.cbd.int/doc/recommendations/wg2020-04/wg2020-04-rec-02-en.pdf


ここからは主に一次ドラフトの内容に沿って見ていきます。

Target 3「30 by 30」
少なくとも30パーセントの陸域及び海域、特に、生物多様性にとって特に重要な地域及びそれが人々へもたらすものが、効果的及び衡平に管理され、生態学的に代表的で、また良好に連結された、保護地域及びOECMのシステムを通して保全され、また、より広範なランドスケープ及びシースケープに統合される。

環境省
図は環境省のパンフレット(https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/documents/flyer30by30.pdf)から。

国内の30by30で絶滅リスクの抑制効果

各国で30by30をやると

https://doi.org/10.1126/sciadv.abl9885

50まで増やすともっといい

https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.2200118119

本気でやるなら80%だ

面白かった論文

https://www.science.org/doi/abs/10.1126/science.abn0098

Target 18「悪しき補助金」
生物多様性にとって有害な奨励措置の転用、目的の変更、改革又は撤廃を公正・衡平に行うことで、最も有害な補助金のすべてを含め、少なくとも年5,000億ドル減額し、また、公共及び民間の経済的及び規制的なものを含む奨励措置が生物多様性に対して正もしくはニュートラルなものであることを確保する。

環境省

5000億ドルの出典

得に焦点となっているのは農業や水産業です。

日本でもいくつか問題視されている補助金はあります。

一方で、どんどん生物多様性にお金を入れていこうよ、という目標も。

Target 19「資金の導入」
各国の生物多様性のための資金計画を勘案しつつ 、 途上国への国際的な資金の流れを少なくとも年100億ドル増加させ、民間資金を活用し、国内の資源動員を増やしながら、すべての財源から、追加的かつ効果的な新規資金等を少なくとも年2,000億ドルまで増加させる。また、本枠組のゴール及びターゲットの野心度に見合う実施へのニーズを満たすため、能力開発、技術移転及び科学協力を強化する。

環境省


自然への投資のイメージ

下記、State of Finance for Nature(UNEP, WEF, ELD, Vivid Economics) から

各国の中央銀行や金融監督官庁による報告書も出ています。

自然への投資を呼びかけたり、投資機会を説明したりする資料や具体例

サイ債権

MS&ADの金融商品

https://www.ms-ins.com/news/fy2022/pdf/0614_1.pdf

明治安田生命の投資

https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/release/2022/pdf/20220728_01.pdf


Target 15「ビジネス」
各地域から地球規模まで、すべてのビジネス(公的・民間、大・中・小)がそれぞれの生物多様性に対する依存状況及び影響を評価及び報告し、漸進的に負の影響を低減して、少なくともこれを半減し正の影響を増加させ、ビジネスへの生物多様性に関連するリスクを削減し、採取/生産活動、ソーシング/サプライチェーン、使い捨てにおける 完全な持続可能性を目指す。

環境省

特に、生物多様性(自然資本)に関する情報開示の取り組みとして、TNFDは何度も出てきますし、テストにも出ます。

キーワードとしてのNature Positive。環境省によると「自然再興」だそうですが、いい日本語がないものでしょうか。とても重要な概念(でもまだフワッとしている)なので。


環境省資料(https://www.env.go.jp/council/content/12nature03/000063326.pdf)から

情報開示に向けては、ビジネスの連合Bussiness for Natureなどからも提言が出ています。報告書によれば、70カ国1100以上の企業が署名し、その売り上げは5兆ドルに上るとのこと。

日本の企業も気候変動の時に比べると、具体的な動きがいろいろあるように思えます。アジアの中では、意識は決して低くないようです。

いくつか事例ですが、ここに挙げているのはごく一部です。


面白かったのが外来種

まず、生物多様性条約の域内保全の項目にこうあります。

(h) 生態系、生息地若しくは種を脅かす外来種の導入を防止し又はそのような外来種を制御し若しくは撲滅すること。

環境省

そしてpost2020 GBFでは

Target 6「外来種対策」
侵略的外来種の侵入経路を管理することで、侵入及び定着率を少なくとも 50 パーセント削減し、また、優先度の高い種及び場所に重点的に対応して侵略的外来種を 管理もしくは根絶することでその影響を除去もしくは軽減する。

環境省

結構強気なのですが、本気でやろうとしたら貿易関係の仕組みにも相当関係してくるのでは、というところで、例としてWTOを挙げました。

【参考】WTOの考え方

工業標準や安全・環境面の規制など、産品の規格及び規格適合性を評価する手続(認証)は、規制が行き過ぎたり、濫用されたりすると、貿易に対する大きな障害となるため、当該制度が不必要な貿易障害とならないよう、措置、手続の透明性の確保や可能な限り国際規格への整合化を図るなど、規格の適正を確保することを目的とするものである。


「2007年版 不公正貿易報告書(第Ⅱ部 総論:WTO協定の概要)」

外来種やNature Positiveと絡みますが、植林(Afforestation)は全然うまくいっていないというような記事も出ています。とにかく「再生(Reforestation)」だと。

自然の力を発揮する場を整えてやることが一番大事なのでしょう。急がば回れ。しかし、時間はそんなに残されていない。


興味のある分野の目標はどうなのかとか、お仕事や地域の特徴など、関係の深い分野から見たらどんな目標が自分に関わってくるのかとか、考えながら見ていくと面白いかもしれません。


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