スピノサウルス水棲説についての研究
今回は、スピノサウルスの水棲説についての研究をまとめ、考察していきたいと思います。
水棲説が示され始めた2014年
ニザール・イブラハム たちが率いる研究チームによって、 2014年にスピノサウルスは反水棲の恐竜だったのではないかという主張がされています。
根拠としては、スピノサウルスの骨が分厚く浮力を調整するのに役に立っているからです。現代で言うと、マナティーのような海の中で生活する動物も 骨格がしっかりしている特徴があります。これは骨がスカスカになっていると浮力に負けて水のなかに沈み混むことができず、水中での狩りがままならないからです。スピノサウルスも水のなかに潜っていたのではないか?と言われ始めたわけですね。
2020年スピノサウルスの尻尾の研究
そして、水棲説を指示する最もインパクトの強い発表が出たのが2020年。2020年の研究では、スピノサウルスのしっぽが他の獣脚類よりもより幅広く、水の中で動かして推進力を得ることができると示されました。研究によると獣脚類のコエロフィシスと比べると、およそ8倍もの推進力を得られるとのこと。
これでやっぱりスピノサウルスは水棲だったね~。めでたしめでたし…となるかと思いきや、その後もウジウジと議論が続いています。
川岸のハンターだった説
スピノサウルスは積極的に水の中に入っていて泳いでいたというよりも、川岸で魚を取っていた ぐらいにとどまるのではないかという考え方もあります。
理由としては、いくつか挙げられます。
S 字を描いている長い首
鼻腔の位置
尻尾は泳ぐ以外にも用途がある
まず、スピノサウルスの S 字を描いている長い首は 浅瀬で獲物を待ち伏せしている時や水面を泳いでいる時に役立ちます。水中で獲物を待ち伏せするのに首が短かったら屈むのに疲れてしまいますからね。
対して、アシカ などの水中で獲物を追い回す動物は首が短くて太いです。首が長いと水の抵抗が大きくなって機敏に泳ぐには不利になるからです。
次に鼻腔の位置です。スピノサウルスの鼻腔は頭の頭頂部にないので、呼吸したり周りを伺うのが水中の中では大変なのではないかという反論が挙がっています。実際に、現代の動物の鯨なども鼻腔は頭頂部についており、頭を少し出すだけで呼吸できるようになっていますよね。
ただ、スピノサウルスの鼻腔は頭頂部とまでは行かないものの、鼻先から後ろの方にあるので鼻先を水に突っ込んだ状態でも息ができます。これもまた、川岸で獲物を取るのに適している特徴です。
そして、幅広い尻尾の別用途について。しっぽは確かに太いけど泳ぐためではなく、性的アピールのためではないかと考えられていのです。実際に、現代でもグリーンバシリスクといった爬虫類は 幅広い 尻尾を持っており、それを性的アピールに使っています。
スピノサウルス水棲説について考察
S 字を描いている長い首
鼻腔の位置
幅広い尻尾はディスプレイ?
以上の点から、スピノサウルスは水中のハンターとまではいかず、川岸のハンターだったのではないか?という説を見てきました。確かに説得力はあるのですが、これらの反論は以下の点でさらに反論することも可能だと考えます。
まず、「水のなかを泳ぐにしては長い首が邪魔」という点に関しては、同じく中生代に生きていた「首長竜」に関しても首が長いけど水の中でガッツリ 狩りをしていましたので一概には言えません。急に方向転換する獲物を追いかけたりするには、首が長い方が有利かもしれませんしね。
また、鼻腔の位置に関しては新生代に登場したムカシクジラ類であるバシロサウルスも鼻腔が頭頂部になく、どちらかというと鼻先に近い位置についていました。バシロサウルスは水中生活をしていたものの、現代のクジラのように100%合理的な水中仕様ではなく発展途上だった言えるでしょう。
スピノサウルスもまた、水棲特化になりかけていた 進化の途中段階の恐竜だったのではないでしょうか。
最後に、幅広い尻尾は泳ぐ目的ではなく性的ディスプレイだったのでは?という指摘については、これからの新しい化石を待つ必要がありそうです。
例えば、新たにスピノサウルス類の化石が見つかって、幅広い尾がメスにはなくオスだけにある特徴だった!などとわかれば、性的ディスプレイ説が補強されそうです。
個人的にはスピノサウルスは水中を優雅に泳いでいて欲しいなぁなんて思っています。というのも、小さい頃にやっていた「恐竜キング」というアーケードゲームの影響で、「スピノサウルス類は水属性」というイメージがあるんですよね~。
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