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色彩の再現と審美的基準の統一的理解を目指して(4/10) 2つの三原色 分離と相補性②

 長くなりましたが疑問の解明に必要な知識が整いました。
 PCディスプレイに表示された蜜柑の画像と、それを印刷した蜜柑の写真が見せる色は何が違うのか?
 まずPCディスプレイに表示された蜜柑の画像を考察します。
 この画像を見たとき、おそらく橙色(オレンジ色)を感じるでしょう。この色は光の三原色RGBによる加法混色に従って表示されています。例えば、AdobeRGB値(8bit)=(233,163,38)であるとしましょう。
 Bを1とすると、R:G:B=6.132:4.289:1となって、
 橙色(オレンジ色)=6.132R+4.289G+B
と表せます。言い換えれば、このディスプレイ上の橙色(オレンジ色)はL錐体:M錐体:S錐体=6.132:4.289:1の比で網膜に到達し反応を引き起こすためにこの色に見えると言えるでしょう。
 次に同じ画像を印刷した蜜柑の写真です。この写真を見たときも橙色(オレンジ色)を感じるでしょう。この色は色材の三原色CMYによる減法混色に従って表現されています。例えば、CMY(Japan標準紙)=(0,0.457,0.91)であるとしましょう。
 これは橙色(オレンジ色)=0.457M+0.91Y(Cはゼロ)ということですが、RGBとCMYの相補性によってM=R+B・Y=R+Gが成り立つので、
 橙色(オレンジ色)=0.457(R+B)+0.91(R+G)
          =1.367R+0.91G+0.457B
と変換できます。Bを1とすると2.991R+1.991G+B、さらに2倍すると5.982R+3.982G+2Bとなります。
 言い換えれば、この写真の橙色(オレンジ色)はL錐体:M錐体:S錐体=5.982:3.982:2の比で網膜に到達し反応を引き起こすように印刷されていると言えるでしょう。
 まとめると、題材とした橙色(オレンジ色)は、
 PCディスプレイ表示ではL錐体:M錐体:S錐体=6.132:4.289:1の反応比を示すように、写真印刷ではL錐体:M錐体:S錐体=5.982:3.982:2の反応比を示すように調整されているということです。
 各錐体の存在比がL錐体:M錐体:S錐体=40:20:1であることを考慮すると、B成分の違いには若干鈍感だと言えるので、この2つはほぼ同じ色に見える(知覚される)と言って差し支えないでしょう。

 つまり、加法混色RGB原理と減法混色CMY原理は、人間の眼にある視細胞(錐体)を反応させ神経信号を生じさせる「目的と結果は(ほぼ)同じなのにその方法が違っている」というわけです。
 ・加法混色RGB原理は光源から出ている光を直接(あるいは全反射して)
  人間の眼に送り、RGBに対する視細胞の反応を生起させる方法。
 ・減法混色CMY原理は光源から出ている光を表面で一部吸収し、一部反射
 (透過)して人間の眼に送り、RGBに対する視細胞の反応を生起させる
  法。
 太字部分が共通の目的・結果であり、《》部分が方法の違い(=ディスプレイ上に表示された蜜柑と印刷された蜜柑の表現方法の違い)です。
 もう少し説明を加えると、光源に含まれるRGB成分を反射(透過)・吸収によって効率よく人間に知覚させるためには、「CがRを吸収・B+Gを反射する」「MがGを吸収・R+Bを反射する」「YがBを吸収・R+Gを反射する」性質を利用して、CMYの混合比率を変化させることで反射されるRGBの比率をも変化させ、人間の眼に届く光の波長(RGB成分)を調整すればよいということになるのです。
 ここに至ってわかるのは、結局人間の眼が反応しているのはいわゆる光の三原色RGBに対してだけということです。しかし、光を発しない物体の色を人間が知覚するためには物体表面での光の反射(透過)そして吸収がなければならず、その反射(透過)・吸収を利用して人間の眼で起こるRGBに対する反応をうまく調整できるのが色材の三原色CMYであるというわけですね。
 わかってしまえば当たり前かもしれませんが、無意識の反応の中でこれだけのことが起こり、技術的な利用の前提にもなっています。

※本節で採用したAdobeRGBとJapan標準紙の各値はその定義値は正確なものであり、まさしく橙色(オレンジ色)を表現するものですが、説明の題材を蜜柑にすることを含めて便宜上許容されると思われるものを恣意的に選択しました。直視と反射・吸収を簡易な足し引き計算に見立てたとき、操作上好都合な近似値を示すので感覚的な理解の助けになるだろうと考えました。このような結果となる例は稀で、正確性の観点からすれば褒められたものではありません。大幅に簡略化した説明です。あくまで「直視と反射・吸収をわかりやすくする例」だと捉えていただければ幸いです。
 また、写真印刷から受けるRGB反応比を最後に2倍する操作を加えていますが、これもB成分に鈍感であることを考慮すれば許容されるだろうと考えて行った恣意的な操作です。

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