韓国で水田農業がシギ・チドリに与える影響

Choi, S. H., Choi, G., & Nam, H. K. (2022). Impact of rice paddy agriculture on habitat usage of migratory shorebirds at the rice paddy scale in Korea. Scientific Reports, 12(1), 1-11

韓国の牙山湾および牙山湖の南端に位置する水田で春のシギ・チドリの飛来を調査した。単位水田の平均面積は0.45 ± 0.07 ha(範囲:033 - 0.66 ha)、調査地域は1,022枚の単位水田から構成されている。

生息地の形成は、湛水された水田の耕起、代掻き、播種を行った時点とし、水田タイプを(1)耕起後の水田、(2)代かき後の水田、(3)播種した水田の3つに分類した。

4月21日、シギ・チドリ類が初めて観察され、圃場に初めて水が張られはじめた。
調査地域の水田では、15種7,852羽のシギ・チドリ類が観察された。調査地で頻繁に観察されるオグロシギ(Limosa limosa)、アオアシシギ(Tringa nebularia)、タカブシギ(Tringa glareola)の3種を注目種として選定した。それぞれ4/24、4/21、4/21に初めて観察された。

3種のシギ・チドリ類の使用水田数および密度(平均個体数/水田)は、オグロシギ:809水田、2.53個体/水田(範囲:0~1,198個体/水田)、アオアシシギ:250水田、0.03個体/水田(0~15個体/水田)、タカブシギ:465水田、0.09個体/水田(0~41個体/水田)

表1. 各水田タイプで観察されたシギ・チドリ類の数。N=調査期間中の総水田数、SE=標準誤差、Min=水田あたりの最小鳥類数、Max=水田あたりの最大鳥類数

3種については、湛水後日数と圃場タイプが密度に大きな影響を及ぼしていた。オグロシギ、アオアシシギ、タカブシギは、初回観察後に急増し、それぞれ5/5、5/16、5/2に高い頻度で観察された(図1)。圃場タイプ別では、3種とも耕起後水田での観察頻度および総個体数が他の2つの圃場タイプよりも高かった。個体数は時間とともに減少し、耕起水田、代かき水田、播種した水田では、それぞれ最長でオグロシギは14、22、20日間、アオアシシギは2、18、10日間、タカブシギは16、22、14日間観察された。

一般化線形混合モデリング(GLMM)の結果から、水位はオグロシギとタカブシギの密度に大きく影響していることがわかった(表2)。オグロシギはタカブシギよりも広い範囲の水位を利用した。オグロシギの範囲:1.29 - 23.34 cm、タカブシギの範囲:1.20-11.40 cm。オグロシギとタカブシギの平均水位は、それぞれ4.38 ± 2.14 と 4.20 ± 1.94 であった(図4)。

表 2. 水田を訪れるシギ・チドリ類の個体数と分布に、田んぼの種類と作業日からの時間が与える影響を検討した一般化線形混合モデルの結果。クロアシシギ、アオアシシギ、キアシシギの標本数はそれぞれ809、250、465であった。密度(個体数/水田)を応答変数、圃場タイプ(耕起、代かき、播種)と各作業日からの時間を説明変数、調査時間と個々の水田を確率変数として、それぞれの種について分析した。

餌候補としてのイネ種子と底生生物の総量は圃場タイプとは有意な関係がなかったが(表3)、生息地形成からの時間とは有意かつ負の関係があった(表3)。さらに、個体数は初期(形成後5日以内)の方が後期(10日以降)よりも多かった(稲種子:初期=4.89±0.64、後期=2.86±0.34、底生生物:初期=10.60±1.13、後期=5.76±4.92、Fig.5)。

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