なぜ自家受粉で実ができないか

ひとつ前に自家不和合性について書いた。自家受粉で種ができた方が便利なのに、なぜ自家不和合性が発達したのか。

少なくともふたつの理由が考えられる。ひとつは遺伝的多様性を保つため。自家受粉だけだと、子孫の遺伝子が均一化して環境の変化に適応できなくなる。もう一つは内婚弱勢。卵子や精子をつくるときに生じる突然変異の大部分は有害なものだが、ヘテロでは発現しないことが多い。メンデルのエンドウ豆の実験で、緑色の豆の個体と黄色い豆の個体をかけあわせてできた個体は緑色の豆をつくる(うろ覚えで書いてる)。いわゆる顕性(優性)と潜性(劣性)の関係だ。

他花受精だとヘテロになる可能性が高いが、自家受精だとホモになる。ホモになると有害な遺伝子が発現してしまう。それを避けるために自家不和合性が進化したのだろう。

これは性の進化にも関わる。雄がいなくて雌だけで子供をつくれれば、雄がいる場合の2倍の効率で子孫を増やせる。自然選択は残せる子孫の数が多い方が有利なので、雄がいない生物が有利になるはず。ところがそうならないのは環境の変化に対応できる遺伝的多様性を維持した方が有利だからだとされる。赤の女王仮説というが、また別の機会に。

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