ウラシルからRNAは合成できないのか?

3月25日の記事「小惑星からRNAの材料がみつかった」で小惑星りゅうぐうからウラシルが発見されたことを書いた。
RNAが注目されるのは、生命が誕生した時に遺伝情報を担っていたのはDNAでなくRNAだったという仮説があるからだ。
地球上か宇宙でかは別として、RNAのような複雑な分子は低分子の化合物からいくつかの反応を経てつくられる。これを化学進化と呼ぶ。

RNA 分子は、核酸塩基とリボース(糖)とリン酸基から構成されるヌクレオチドがつながったものだ。したがってRNAの前生物的合成は、低分子化合物から生じたアデニン、グアニン、シトシン、ウラシルといった塩基とリボースが縮合することでヌクレオシドとなり、リン酸ジエステル結合によって生成されると想像できる。

岡村(2021)より

しかし、岡村(2021)によると塩基とリボースが結びつくことは非常に難しいとあった。リボースとアデニンからアデノシンが生成することはOrgel (1972)によって報告された。しかし、収率4%と低く、無数の構造異性体がつくられるという。

さらに、他の塩基、グアニン、シトシン、ウラシルはリボースと反応しなかった。なので、小惑星でウラシルが見つかっても、そこから直接RNAの合成にはつながらないらしい。

そこで、別の経路が探られた。Sutherland and Powner (2009)は、グリコールアルデヒドに低分子窒素化合物塩基や炭化水素化合物を反応させてリボースが結合したピリミジンヌクレオシドを合成することに成功した。

また、Becker et al. (2019)は、リボースと結合できるN- イソキサゾリルウレアという物質がシトシンとリボースが結びついたシチジンの前駆物質となることを報告した。シチジンに亜硝酸を作用させるとウリジン(ウラシル+リボース)ができる。

実際にどのような化学進化を経て生命が誕生したのか、まだまだ謎が多い。

岡村秀紀(2021)原始地球におけるRNA の化学的起源の探求 -リボヌクレオシドの前生物的合成-.Viva Origino 2021,41,12

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