マダガスカルにカエルを求めて その1

両生類の危機

 両生類は、足を持つ脊椎動物で最も原始的なグループであり、普通成体は肺を持ち陸上で生活するが、卵は水中に産まれ、幼生は鰓を持ち水中で生活する。そのため、湿地を主な生息場所としているが、湿地は人間による開発によって急速に失われてきた生態系でもある。世界で知られている両生類6242種のうち2361種が絶滅の危機に瀕している。原因として考えられているのは、生息場所の消失、気候変動(温暖化や地域的な乾燥)、外来生物、カエルツボカビ病、紫外線による影響などである。このうち、最大の要因は生息場所の消失である。

マダガスカル

 私は、2013年から2016年までマダガスカルでカエルを調査していた。マダガスカルはアフリカ大陸の東にある島で、面積は587000 km2、日本の1.5倍ほどの大きさである。「星の王子様」に出てくるバオバブの木が自生することで有名である(図1)。しかし、日本列島と同じように脊梁山脈の東西で気候が異なり、バオバブのあるのは乾燥した西側で、島の東側は雨が多く、人手が入っていない場所には雨林帯が広がっている。両生類の多くは、こうした雨林帯に分布する。しかし、森林伐採や火入れが両生類をはじめとする野生生物の存続を脅かしている。

バオバブ

マダガスカルの里山

 マダガスカルでは、伐採跡地に成立した二次林や昔の日本の里山のような農耕地が存在する(図2)。しかし、材木や燃料のために木は頻繁に切られ、家畜の餌として草も刈られるため、多くの山ははげ山になっている。かろうじて、ラヌマファナ国立公園にはキツネザルの棲む豊かな自然林の生態系が残されている。そのため、人為かく乱による生態系への影響を評価するためにはうってつけの場所である。

 夏のラヌマファナは毎日霧がかかり雨が降る。神秘的な風景だが、上からも下からもヒルが襲いかかるので気が抜けない。宿舎に帰って雨具をぬぐとたいていTシャツが血で染まっている。しかし、ランの花や夕暮れとともに聞こえるカエルの声など魅力も多い。

棚田



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