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鉄でコーティングされたコモドドラゴンの歯:肉食爬虫類における驚くべき進化の物語

インドネシアのコモド島に棲むコモドドラゴンは、世界最大のトカゲとして知られています。この爬虫類は鋭い歯と強力な顎を持ち、水牛をも倒すことから「コモドオオトカゲ」とも呼ばれる生態系の頂点捕食者です。その強靭な顎を支える歯の秘密を探るべく、イギリス・キングス・カレッジ・ロンドンを中心とした国際研究チームは最先端の分析技術を駆使し、コモドドラゴンの歯の構造を分子レベルで解き明かしました。

鉄のコーティングが歯の鋭さを維持する鍵

研究チームは博物館に収蔵されているコモドドラゴンの頭骨標本や、飼育個体から自然に抜け落ちた歯などを用いて様々な角度からの分析を行いました。その結果、コモドドラゴンの歯の鋸歯状の突起部分と先端には鉄を豊富に含んだオレンジ色のコーティングが存在することが明らかになりました。

このコーティングの正体を突き止めるため、研究チームはさらに詳細な分析を行いました。その結果、コーティングの主成分は「フェリハイドライト」と呼ばれる酸化鉄の一種であることが判明しました。フェリハイドライトは自然界では土壌や堆積物中に微量に存在する鉱物ですが、硬度が高く、摩耗や酸に強いという特性を持つことが知られています。

コモドドラゴンの歯のエナメル質は他の爬虫類と比べて薄く、わずか20マイクロメートルほどしかありません。人間の歯のエナメル質が1ミリメートル程度であることを考えると、その薄さは際立っています。しかし、この薄いエナメル質を鉄のコーティングが覆うことで、強度と耐久性が飛躍的に向上し、獲物の肉を引き裂くという過酷な環境に耐えうる構造を獲得したと考えられます。

現生ワニの歯にも鉄の存在を確認!

コモドドラゴンの歯に見られる鉄のコーティングは他の爬虫類にも見られるのでしょうか?研究チームはワニ、ヘビ、トカゲなど、様々な爬虫類の歯を分析しました。

その結果、興味深いことに、現生のワニの一部の種の歯からも鉄のコーティングの存在が確認されました。ワニの歯のエナメル質に含まれる鉄の量はコモドドラゴンほど多くはありませんでしたが、爬虫類が歯の強度や耐久性を高めるために鉄を利用する能力を持っていることを示す重要な発見です。

化石から恐竜の歯の秘密に迫る

コモドドラゴンやワニといった現生爬虫類の歯に鉄のコーティングが確認されたことを受け、研究チームは恐竜時代の巨大爬虫類の歯にも同様の構造が存在したのではないかと考えました。

しかし、化石化の過程で歯のエナメル質に元々含まれていた鉄と、周囲の環境から後から混入した鉄を区別することは非常に困難です。そのため、恐竜の歯に鉄のコーティングが存在したかどうかを断定するには至りませんでした。

一方で、研究チームはティラノサウルスの歯の構造を詳細に分析した結果、コモドドラゴンとは異なる進化を遂げたことを発見しました。ティラノサウルスの歯の鋸歯状の突起部分に「波状エナメル質」と呼ばれる特殊な構造が見つかったのです。

波状エナメル質とはエナメル質の結晶が規則正しく波打つように配列することで、歯の強度と柔軟性を両立させる構造です。これまで、波状エナメル質は植物をすりつぶすために歯を使う草食恐竜の歯で発見されていましたが、肉食恐竜であるティラノサウルスの歯にも同様の構造が見つかったことは驚くべき発見でした。

引用元

タイトル:Iron-coated Komodo dragon teeth and the complex dental enamel of carnivorous reptiles
URL:https://www.nature.com/articles/s41559-024-02477-7
著者:Aaron R. H. LeBlancAlexander P. MorrellSlobodan SirovicaMaisoon Al-JawadDavid LabonteDomenic C. D’AmoreChristofer ClementeSiyang WangFinn GiulianiCatriona M. McGilveryMichael PittmanThomas G. KayeColin StevensonJoe CaponBenjamin TapleySimon SpiroOwen Addison

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