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クジラやイルカの声のリズムが教えてくれる進化の謎

クジラやイルカたちは美しく複雑な歌声を持ちます。実は彼らのリズムが動物たちのコミュニケーション、そして人間の言葉や音楽の起源を探る重要な手がかりになるかもしれません。

これまで、動物の声のリズムの研究は小鳥のさえずりやサルの鳴き声などが中心でした。しかし、これらの動物だけを調べても人間の声や音楽の進化は完全には解明できません。そこで、研究者たちの熱い視線を集めているのがクジラやイルカといった「鯨類」です。

鯨類は人間と同じように、周りの音を聞いて歌を覚えたり複雑な呼吸を器用に操って歌ったりします。また、歌で異性を口説いたり、親子で長く一緒に暮らしたり、集団で息の合った行動をとったりと、社会的な動物でもあります。こうした行動は人間を含む動物の声のリズムと深く関わっていると考えられていて、鯨類は進化の謎を解き明かすための材料と言えます。

例えば、大きな口でオキアミなどを食べる「ヒゲクジラ」と鋭い歯を持つ「ハクジラ」ではリズムの使い方が違うことが分かってきました。ヒゲクジラのリズミカルな歌は主に恋の季節に使われます。複雑なリズムを操ることで、異性に自分の魅力をアピールしているのかもしれません。一方、ハクジラは音を出して周りの様子を探る「エコロケーション」や、仲間とのコミュニケーションなど、様々な場面でリズムを使います。

なぜハクジラはこんなにも多彩なリズムを使いこなせるのか? それは、彼らが進化の過程で手に入れた、驚異的な聴覚システムと関係があるようです。エコロケーションを使うには音を出してから反響が返ってくるまでのわずかな時間の差を正確に聞き分けなければなりません。ハクジラはこの能力を極めることで複雑なリズムを聞き分け、自ら奏でる能力も同時に高めていったと考えられています。

鯨類の声のリズムは動物たちのコミュニケーション、そして人間の声や音楽の進化を探る上で、まだまだ多くの謎を秘めています。

注目すべき研究テーマ

  • 複雑な歌の秘密: ヒゲクジラの歌やハクジラの複雑な音声パターンに隠されたリズムの法則を解き明かすことで、彼らがどのように情報をやり取りしているのかが分かります。

  • リズムと気持ち: リズムは感情を伝える役割も担っていると考えられています。鯨類がどのような気持ちでリズムを使っているのかを探ることは、動物の感情表現の理解に繋がります。

  • 息ぴったりの行動: 鯨類はまるでオーケストラのように、集団で息の合った行動をとることが知られています。リズムが彼らの見事なチームワークにどう貢献しているのかに注目です。

  • 鯨類の文化とリズム: 人間と同じように鯨類にも文化があります。文化がリズムに影響を与えているのか、あるいは逆にリズムが文化を生み出すのか、興味深いテーマです。

引用元

タイトル:Cetaceans are the next frontier for vocal rhythm research
URL:https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2313093121
著者:Taylor A. Hersh , Andrea Ravignani , and Hal Whitehead

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