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魚類にも睡眠は存在する?その謎に迫る最新研究

睡眠は人間を含む多くの動物にとって、心身の健康や生命維持に欠かせない行動です。しかし、魚類においてはその存在自体が長年議論の的となってきました。脳波計を用いて計測される脳波や、睡眠中に眼球が素早く動く急速眼球運動(REM)といった、哺乳類や鳥類に見られる典型的な睡眠の特徴を魚類は持たないとされてきたためです。「魚類は眠らない」あるいは「ただ休んでいるだけ」と考えられてきたのです。

1984年にキャンベルとトブラーが提唱した「行動睡眠」の定義により、魚類の睡眠研究に新たな局面に入りました。この定義は、脳波やREM睡眠といった生理学的指標の代わりに、概日リズムによる活動と休息のサイクル、外部刺激に対する反応性の低下、種に特異的な睡眠場所や姿勢、そして睡眠不足になった場合にその後、より長い時間休息する「反発睡眠」といった行動学的特徴を基準に睡眠を定義しています。

この行動睡眠の定義に基づき、ゼブラフィッシュを始めとする様々な魚種を対象とした研究が進められています。そして、魚類も上記の睡眠基準を満たす行動を示すことが次々と明らかになってきています。

例えば、ゼブラフィッシュは日中は活発に泳ぎ回っていますが、夜間になると活動量が減少し、水槽の底でじっとしています。また、この時ゼブラフィッシュは外部からの刺激に対して反応が鈍くなり、睡眠時特有の状態を示します。さらに、ゼブラフィッシュを睡眠不足の状態にすると、より長い時間休息することが確認されました。これは、魚類も人間と同じように睡眠不足を解消するために「反発睡眠」をとっている可能性を示しています。

魚類の睡眠は、光、温度、酸素濃度、騒音、捕食リスクなど、様々な環境要因の影響を受けることも分かってきました。人工光による光害や船舶の航行音などの騒音は魚類の睡眠を阻害する可能性があり、捕食者の存在は魚類の警戒心を高め、睡眠を抑制すると考えられています。

引用元

タイトル:The interplay between sleep and ecophysiology, behaviour and responses to environmental change in fish
URL:https://journals.biologists.com/jeb/article/227/11/jeb247138/352391/The-interplay-between-sleep-and-ecophysiology
著者:Helena Norman, Amelia Munson, Daphne CorteseBarbara KoeckShaun S. Killen

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