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アフリカのサバンナで、野生動物が外来サボテンの侵入を抑制

世界中で侵略的外来種は増加の一途を辿っていて、生態系や人間の暮らしに深刻な影響を与えています。こうした侵略的な外来種の侵入に対して、環境はどのような抵抗力を持つのかでしょうか。

従来の研究では、北米やヨーロッパ、オーストラリアなど、限られた地域を対象としたものが多く、アフリカのサバンナのような多様な大型草食動物が生息する生態系における外来種の影響については十分に解明されていませんでした。

イギリス・リーズ大学のハリー・ウェルズ氏らの研究チームは、ケニア中央部のサバンナに設置された3つの長期的な動物排除実験区のデータと周辺地域の広域観測データを用いて、野生動物が外来サボテンの侵入にどのような影響を与えるかを調査しました。対象となったサボテンは世界の侵略的外来種ワースト100にも挙げられる「オプンティア・ストリクタ」と「オプンティア・フィカス・インディカ」(いずれもウチワサボテン属)です。

調査の結果、野生動物、特にゾウなどの大型草食動物が生息する地域では、サボテンの密度が大幅に低いことが明らかになりました。大型草食動物を排除した実験区においては、サボテンの密度が排除していない区に比べて最大で99%も高くなっていました。また、時間の経過とともに大型草食動物を排除した区ではサボテンの密度が急速に増加する傾向も見られました。

この結果は、大型草食動物がサボテンを直接食べる、踏みつけるなどして物理的に破壊する、あるいはサボテンと競合する植物の密度を調節して間接的に影響を与えることで、サボテンの繁茂を抑制している可能性を示しています。

また、中型の草食動物を排除した場合も、サボテンの密度がわずかに増加する傾向が見られました。これは、大型草食動物が不在の場合、中型の草食動物もサボテンの侵入抑制に一定の役割を果たしている可能性があります。

さらに、広域観測データの分析からも、野生動物の種数が多い地域やゾウの生息密度が高い地域ほど、サボテンの分布確率が低いという結果が得られました。

引用元

タイトル:Wild herbivores enhance resistance to invasion by exotic cacti in an African savanna
URL:https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1365-2745.14010
著者:Harry B. M. Wells, Ramiro D. Crego, Jesse M. Alston, S. Kimani Ndung'u, Leo M. Khasoha, Courtney G. Reed, Abdikadir A. Hassan, Samson Kurukura, Jackson Ekadeli, Mathew Namoni, Peter S. Stewart, Duncan M. Kimuyu, Amelia A. Wolf, Truman P. Young, Tyler R. Kartzinel, Todd M. Palmer, Jacob R. Goheen, Robert M. Pringle

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