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小角X線散乱(SAXS)(2)‐ 散乱ベクトルと散乱角の対応表、Porod則

散乱ベクトルと散乱角の対応表と広角での挙動(Porod則)を示しました。


1.散乱ベクトル(h)と散乱角(2θ)の対応表

X線の波長:$${\lambda (\mathrm{CuK\alpha})=0.15418 \:\mathrm{nm}}$$
散乱ベクトル:$${h=\displaystyle \frac{4\pi}{\lambda}\sin\theta}$$
$${1 \:\mathrm{nm}=10\: \AA}$$
$${2\theta}$$:散乱角
$${\theta (度)=\displaystyle \frac{180}{\pi} \theta (ラジアン)}$$

表1 過去の文献には、nmの代わりにÅ(オングストローム)が使われていました。

2.光エネルギー(E)と波長(λ)

2.1 関係式

$$
\lambda \;\;(\mathrm{nm})= \dfrac{ch}{E} = \dfrac{1239.841984 \;\; \mathrm{nm \cdot eV}}{E\;(\mathrm{eV})}
$$

$${\lambda}$$:光の波長(nm)、$${c=299\;792\;458 \; \mathrm{m \cdot s^{-1}}}$$:光速度、$${h=6.626\;070\;15 \times 10^{-34} \;\mathrm{J \cdot s}}$$:プランク定数、$${E}$$:光のエネルギー(eV)

2.2 例

(例1) $${E=18 \; \mathrm{keV}}$$のX線の波長$${\lambda = 0.0689 \; \mathrm{nm}}$$
(例2) $${E=8.26 \; \mathrm{keV}}$$のX線の波長$${\lambda = 0.150 \; \mathrm{nm}}$$

3.Porod則 [1~3, 5]

散乱ベクトル$${h}$$が十分大きいとき(広角)、散乱強度は$${h}$$の4乗に逆比例する:

$$
|F(h)|^2\simeq \frac{2\pi\rho^2 S}{h^4}       (hが十分大きいとき)
$$

$$
I(h)\simeq \displaystyle A_e^2|F(h)|^2
$$

$${F(h)}$$:構造因子[4]、$${I(h)}$$:散乱強度、$${h}$$:散乱ベクトルの大きさ、$${\rho}$$:電子密度、$${S}$$:粒子の表面積、$${A_e^2}$$:1個の電子の散乱強度[1, 4]

4. モデル形状の広角での挙動

図1 散乱関数P(h)。散乱ベクトルhが大きい領域では、針(Needle)は傾き-1、円板(Disk)とガウス鎖(Gaussian chain)は傾き-2、球(Sphere)と回転楕円体(Spheroid)は傾き-4の直線に近づきます。円柱(Cylinder)は最初傾き-1の挙動から傾き-4の直線に近づくようにみえます。両軸とも対数。横軸は回転半径RGで規格化されています。Pythonで計算しました。

文献

[1] 林久夫、"X線小角散乱入門”、輪講資料、1978.
[2] A. Guinier, G. Fournet, "Small-Angle Scattering of X-rays", John Wiley & Sons, New York, 1955. 
[3] 松岡秀樹、"小角散乱の基礎〜X線・中性子の小角散乱から何がわかるか〜"、日本結晶学会誌、1999, 41(4), 213-226.
[4] 小角X線散乱(1)- 基本的なこと
[5] 橋本竹治、"X線・光・中性子散乱の原理と応用"、講談社、2017. 大著です。原理的なことが詳細にしかも網羅的に著されています。



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