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小角X線散乱(SAXS)(3)- 【演習】 散乱ベクトル

散乱ベクトルが、X線の波長λと散乱角2θでどう表せるか問う問題です。


【演習】 散乱ベクトル


下図のように、点OとPで入射X線が散乱角$${2\theta}$$で散乱されている。入射X線と散乱X線の方向を表す単位ベクトルをそれぞれ$${\boldsymbol{s_0}}$$、$${\boldsymbol{s}}$$と表す。

このとき散乱ベクトル$${\boldsymbol{h}}$$を次式で定義する:

$$
\boldsymbol{h}=\displaystyle \frac{2\pi}{\lambda}(\boldsymbol{s_0} - \boldsymbol{s})
$$

ただし、$${\lambda}$$は入射X線と散乱X線の波長とする。

(問1) 散乱ベクトルはどの方向を向いているか?
(問2) 散乱ベクトルの大きさを$${h}$$で表すとき、

$$
h=\displaystyle \frac{4\pi}{\lambda} \sin\theta
$$

で与えられることを示せ。


【解説】

(問1) ベクトル$${\boldsymbol{s}-\boldsymbol{s_0}}$$の方向(図参照)。
(問2) $${|\boldsymbol{h}|=(2\pi /\lambda)|\boldsymbol{s}-\boldsymbol{s_0}|}$$だから、$${|\boldsymbol{s}-\boldsymbol{s_0}|}$$の大きさを求めればよい。図中の2つの直角三角形(頂角が$${\theta}$$)の対辺の長さが$${\sin{\theta}}$$だから($${|\boldsymbol{s}|=|\boldsymbol{s_0}|=1}$$)、$${|\boldsymbol{s}-\boldsymbol{s_0}|}$$はその2倍となります:$${|\boldsymbol{s}-\boldsymbol{s_0}|=2\sin{\theta}}$$。よって、$${h(=|\boldsymbol{h}|)=(4\pi/\lambda)\sin{\theta}}$$。

(終)

文献

[1] 林久夫、"X線小角散乱入門”、輪講資料、1978.
[2] 橋本竹治、"X線・光・中性子散乱の原理と応用"、講談社、2017. 大著です。原理的なことが詳細にしかも網羅的に著されています。



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