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飛騨天文台ってこんなところ!

こんにちは!カガクテラスの廣瀨公美です。

今日は、京都大学の大学院理学研究科の附属天文台の一つ、
飛騨天文台をご紹介します。
私は、この飛騨天文台で、よく太陽の観測をしていました。

飛騨天文台ってどこ?

飛騨天文台は岐阜県高山市上宝町というところにあります。
大雨見山(おおあまみやま)という山の山頂近く、
標高1200mほどのところです。
夏は暑い日でも30度までいかないので、涼しくて快適ですが、
冬は最高気温が0度よりも低い日もあり、たくさん雪が降って大変です。
2m以上雪が積もることも、しばしば。

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とっても自然豊かな中にあって、野生動物に出会うこともありました。
さっきの雪の天文台の写真にも、かわいい動物が隠れています。
ウサギさんがいるの、わかりますか?
天然記念物の二ホンカモシカは、特によく見かけました。
カモシカは、親子3匹でよく散歩していて、
夏はもちろん、冬でも元気に、2m以上積もった雪の上を軽々と歩いている姿も。
カモシカが歩けるなら、私も雪の上を歩けるんじゃないかと思い、
挑戦しようとしましたが、、、無理でした。
一歩足を雪の上に置いた瞬間、ズボッと雪の中に足が入っていって、
とても歩けませんでした。
下の写真が、カモシカです。
私と目が合って、ちょっと驚いた表情をしています。

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飛騨天文台自慢の望遠鏡

この飛騨天文台には、現在4つ望遠鏡があります。
古い順番に
60cm反射望遠鏡
65cm屈折望遠鏡
ドームレス太陽望遠鏡(DSTと呼んでいます)
太陽磁場活動望遠鏡(SMARTと呼んでいます)

の4つです。

60cm反射望遠鏡と65cm屈折望遠鏡は夜の星をみるために作られた望遠鏡。
DSTとSMARTは、「太陽」と名前に入っている通り、
太陽をみるために作られた望遠鏡です。

60cm反射望遠鏡は京都からやってきた!

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60cm反射望遠鏡は、1960年に完成し、もともとは京都の花山天文台にありました。
しかし、京都は街が夜でも電気で明るくなり、その明るさが、
天体観望のさまたげになっていきました。
そこで、1968年、街明かりの少ないところに、この望遠鏡を移したのが、
飛騨天文台のはじまりです。

直径60cmのおわん型の鏡で光を集めるタイプの望遠鏡です。

昔は目で見ての観測、そののち、フィルム撮影を使って、
月や惑星、彗星の観測をしていました。
最近はデジタルカメラを取り付けて、ブラックホールや突然明るさの変わる星など、
地球から遠いところにあるいろいろな天体を観測するようになりました。

60cm反射望遠鏡は、さまざまな天体の活動や、爆発現象の研究で、
宇宙の果てを探っています。

東アジア最大のレンズ・65cm屈折望遠鏡

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65cm屈折望遠鏡は、東アジア最大の大きさのレンズで、光を集めます。
その名の通り、直径65cmです。
1972年、飛騨天文台2番目の望遠鏡として、誕生しました。
とても大きい望遠鏡で、筒の長さは11.5m、重さは17トンもあります。

この望遠鏡はかたむけると、接眼レンズ(のぞく部分)が、
手の届かない高い位置にきてしまいます。
これでは星は見られません。
そこで、この望遠鏡の建物の床が上下に動くというおおがかりな
しかけがあります。

65cm屈折望遠鏡は、太陽系内の惑星を細かくみる研究に使われ、
特に火星についての研究で大活躍しました。
この望遠鏡のおかげで火星の雲の発生や台風についての研究が進みました。

世界一の”虹”を作り出す、ドームレス太陽望遠鏡(DST)

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ドームレス太陽望遠鏡は、英語で、「Domeless Solar Telescope」といい、
その頭文字をとって、「DST(ディーエスティー)」と呼んでいます。
1979年に完成した望遠鏡です。

DSTのウリの1つは、分光器(ぶんこうき)という光をにじ色にわける装置。
この装置で、望遠鏡で集めた太陽の光をにじ色にわけます。
「真っ赤な太陽」、「虹は7色」といわれることもありますが、
本当は太陽は赤色だけを出して光っているのではなく、
たくさんの色の光がでてきています。
その太陽の光を色ごとに分けると、にじになります。
ただし、にじは7色にきっちり分けられるものではありません。
DSTは、光を世界一多くの色のにじにできるように、
設計されているのです。
そして、太陽の光がにじになっているところを撮影します。

研究では、「太陽面のこの部分の、この色とその近くの色だけを
詳しく観測したい」、ということがよくあります。
そうすると、その部分の太陽面の磁石のような力「磁場」がわかったり、
太陽面で動いているモノの速度がわかったりします。
DSTは、世界一の色数のにじで、太陽の研究に役立っています。

”宇宙天気”の研究期待の太陽磁場活動望遠鏡(SMART)

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太陽磁場活動望遠鏡を英語にすると、「Solar Magnetic Activity Research Telescope」で、略して「SMART(スマート)」と呼んでいます。
飛騨天文台では一番新しい望遠鏡で、2003年に完成しました。

SMARTは4つの望遠鏡がセットになっています。
そのうちのT1(Telescope1)は、私が研究に主に使っている望遠鏡です。

DSTはにじ色に分けるのが得意で、
DSTでは太陽の光がにじになっている写真を撮るのでしたね。
SMARTのT1も特定の色だけの太陽の写真を撮ります。
SMART/T1は、太陽の一部分だけではなく、全面の写真です。
これだけなら他の望遠鏡でもできることですが、
SMART/T1のすごいところは、特定の色とすごく近い色74色の
太陽全面画像も撮ることです。
その近い色だけどちょっと違うたくさんの色のデータを組み合わせると、
太陽面上にあるモノが爆発で飛んで行ったとき、その速度がわかるんです。

現在、宇宙飛行士さんや人工衛星が宇宙空間で活躍しています。
もし、太陽から爆発で飛んでくるものがあったとき、
宇宙空間にいる人や衛星は被曝してしまいます。
地上にいる私たちは地球の空気が守ってくれているので、
被曝することはありませんが、飛行機に乗っている人は危ないかもしれません。
さらに、あちこちに張り巡らされている電線に、
想定外の電流が流れてしまうこともあり、電気を届けるための施設が、
壊れたことも実際に北アメリカで起こっています。
このようなことを防ぐため、太陽活動の毎日の活動具合を予想する、
「宇宙天気予報」の研究が盛んです。
SMARTはこの宇宙天気の研究に役立つと期待されています。

飛騨天文台のこれから

現在、飛騨天文台には、太陽研究者が多く在籍していて、
DSTとSMARTが研究面で主力の望遠鏡となっています。
60cm反射望遠鏡と65cm屈折望遠鏡も、特別公開時などに一般公開され、
多くの方に楽しんでいただいています。
飛騨天文台は、科学者だけでなく、皆さんに愛される天文台になるといいなと思います。

カガクテラスの代表である、私、廣瀨も、
この飛騨天文台で多くのことを学びました。
学んだことは、天文学や物理学の単なる知識ではありません。
飛騨天文台で、たくさんの人が宇宙をみるために努力し、
みえた時の感動を一緒に味わえたことは、私が得た本当の財産です。
カガクテラスでは、カガクすることで得た感動を、
皆さんに発信していきます。
お楽しみに〜♪

おまけ:雪の日の飛騨天文台で見つけた白うさぎ。
    元気に走り回っていました!

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