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元素もいろいろ!色のある元素についてまとめたよ!

みなさんこんにちは!サイエンスライターの彩恵りりだよ!

先日、私が仲良くしてるクリエイターで元素スキーのくしまくん (Twitter) から「液体酸素は青色なように、単体で普段とは色が変わる元素って他にあるの?」って質問を貰ったんだよ!そこで調べてみたところ、結構たくさん見つかったから、調べたのをまとめてみたよ。

今回紹介する元素は、だいたいこんな感じの基準で選んだよ。

  • 非金属元素は、同素体の違いによって色が明らかに異なる場合。

  • 金属元素は、銀白色以外の色を示すもの。

同素体があっても、色の違いが明らかでない場合には未掲載だし、色の違いがみられないか、資料が無くて不明な場合には、その同素体を省いて載せているよ。だからこれは同素体の一覧じゃないから注意してね。

水素 (₁H)

水素は常温常圧では無色透明の気体で、冷却しても無色透明な液体や固体にしかならないよ。そして水素は周期表ではアルカリ金属の上に配置されているけど、これは最外殻電子の数で決められた配置で、実際には知られている範囲では非金属の性質しか示さないよ。それでも超高圧の下では、非金属とは異なる性質を持つ事が予想されているよ。

金属水素

金属水素は、名前の通り金属的性質を持った水素で、高温高圧下で発生すると考えられるよ。水素の外側にある電子が金属の自由電子のように "流れる" 事で発生し、残された陽子はランダムに配列した液体金属、あるいはきちんと配列した固体金属のどちらも予想されているよ。必要な圧力が高すぎる事や、その他の技術的問題から、未だに金属水素は得られていないし、得られたとする一部の報告でも、電気伝導率やバンドギャップの測定に留まり、色までは報告されていないよ。ただしその性質上、金属水素は文字通り金属光沢をしている事が容易に予想されるよ。⁽¹⁾⁽²⁾⁽³⁾

暗黒水素

ところで、水素には暗黒水素と言う別の形態に関する報告もあるよ。別に何か厨二病的なネーミングではなく、可視光線と赤外線を反射も透過もしない事から黒く見えるだろうという事で、プレスリリースでそう呼ばれていたよ。ただし論文では吸収性水素 (Absorptive Hydrogen) という別の名称が使われていたよ。暗黒水素は141GPaと2400Kで出現し、光学的特性は普通の水素とも金属水素とも異なるから、もしかすると水素の新たな同素体である可能性があるよ。ただし機械学習による予測では、普通の水素と金属水素の間には、通常の相転移のようなはっきりとした境界がないとされていて、そうなると暗黒水素は真の同素体ではなく、単純に中間状態である可能性もあるよ。⁽⁴⁾⁽⁵⁾⁽⁶⁾

ホウ素 (₅B)

ホウ素は非常に同素体に富んでいて、広く認められているのはそのうちの6種類だよ。他の同素体は、報告数が少なかったり再現が無かったりして広く認められているとは言いづらいし、あるいは色の情報が無かったから除外したよ。どの同素体もホウ素原子1個ではなくB₁₂クラスターを基本単位としているけど、他のクラスターが混ざっているのもあるよ。

アモルファスホウ素

アモルファスホウ素は、完全に原子がランダムになっているわけじゃなく、B₁₂クラスターの配列がランダムというものだよ。粒が大きいとガラス状の光沢を持つ黒色の塊だけど、通常は茶色の粉末だよ。ただ、これは部分的に結晶度の良いホウ素同素体や不純物が混ざっている影響によるもので、高純度のアモルファスホウ素粉末は黒色だよ。⁽⁷⁾

α菱面体晶ホウ素

α菱面体晶ホウ素は珍しい同素体で、時間をかけて生成しないといけない、赤色の結晶だよ。⁽⁸⁾

α正方晶ホウ素

α正方晶ホウ素は不安定な同素体で、黒っぽく不透明だよ。通常得られるのはわずかに窒素や炭素を含んでいるよ。純粋なα正方晶ホウ素も、わずかに窒素や炭素を含むホウ素の結晶の上でのみ安定だよ。⁽⁹⁾

β菱面体晶ホウ素

液体にした単体ホウ素を冷却して得られる結晶はβ菱面体ホウ素だよ。それは黒く、金属光沢を思わせる輝きを持っているよ。絶対零度まで安定な結晶構造だと長らく考えられていたけど、近年ではα菱面体ホウ素の方が低温では安定ではないかとされているよ。⁽⁸⁾

β正方晶ホウ素

β正方晶ホウ素は、一見すると黒っぽいけど、光に透かすと赤っぽく見える結晶だよ。1300℃から1500℃でタンタル、タングステン、レニウムのフィラメント状に蒸着すると出現するけど、結晶構造は極めて複雑で解析困難だよ。不純物がない事から同素体の1つとみなされているものの、ちゃんとした結晶構造は未知だよ。⁽¹⁰⁾⁽¹¹⁾

γホウ素

γホウ素は暗灰色のホウ素の同素体だよ。12GPaから20GPaと1500℃から1800℃の高温高圧で生成し、19GPaから89GPaの環境で安定している高圧相だよ。⁽¹¹⁾

炭素 (₆C)

炭素の同素体は極めて多種多様に存在するものの、色と言う点ではあまり面白くないよ。

黒色不透明の炭素同素体

黒鉛無定形炭素ガラス状炭素フラーレンカーボンナノチューブなど、低圧でも生成する炭素同素体の多くは黒色だよ。主にこれらは正六角形の平面を基本としているから、結晶は不透明で光沢を持つよ。

無色透明の炭素同素体

ダイヤモンドは高圧で生成する炭素の同素体で、同じ単体でも同素体では性質が違う、の代表例でもあるよね。純粋なものは無色透明だけど、不純物を含んでいると色がつき、多くは黄色だよ。

ロンズデイル石は六方晶で、ダイヤモンドより硬い可能性のある同素体だけど、そもそもロンズデイル石がダイヤモンドとは別構造の結晶なのか自体に賛否両論あり、人工物の合成もうまく行ってないよ。天然でロンズデイル石とされている結晶は灰色や黄色だけど、純粋なものはダイヤモンドと同じく無色透明と観られるよ。⁽¹²⁾

窒素 (₇N)

窒素は無色透明の気体で、液体窒素や固体窒素も基本は無色透明だよ。ただ、高圧下でのみ存在する固体窒素は、非金属の性質を離れるため、色がつくはずだよ。

η窒素

η窒素は80GPaから270GPaと10Kから510Kの間で存在するアモルファス固体だよ。230GPaでは、透過光は赤色から黄色、反射光は黒色だよ。η窒素は色に加えてバンドギャップ的にも半導体である事が分かっているよ。面白いのは、圧力を上げるとバンドギャップが狭まる事だよ。まだ確認されていないけど、280GPa以上ではη窒素は金属になる可能性があるよ!⁽¹³⁾

μ窒素

μ窒素、又はζ-N₂は、特殊な高圧相の結晶だよ。基本とするのは普通の窒素分子だけど、並び方は立方ゴーシュ構造だよ。合成にも一工夫が必要で、一度100Kに下げた後に110GPaと2000Kにかける必要があるよ。ただ、これは1500Kまで下がる可能性が計算科学的に示されているよ。半導体と推定されているけど、その値は半金属と推定されるほど小さいナローギャップ半導体だと言われているから、この値から推定すると、不透明の黒色になるよ。⁽¹⁴⁾⁽¹⁵⁾

黒リン構造窒素

リン以下の元素と違い、窒素は黒リンと同じ結晶構造の窒素は中々合成されてこなかったよ。長らく未発見だった黒リン構造窒素、またはbp窒素が、140GPaと約4000Kで合成できたのは2020年だよ。ただ、黒リン構造を持っている窒素ではあるけど、これを黒窒素と言うのは語弊があるよ。実験的には透明である事が分かっていて、理論的にも150GPaでのバンドギャップは2.2eVと、黒リンと比べてかなり広いと推定されているよ。2.2eVはリン化ガリウムと大体同じだから、色も同じような感じ、透明なオレンジ色になると推定できるよ。⁽¹⁶⁾

酸素 (₈O)

他の元素と比較して、酸素はその電子構造から、色んな色が出てくるよ!

オゾン

普通の酸素はO₂だけど、天然にはO₃であるオゾンもあるよ。普通の気体酸素と違い、オゾンは気体状態でも淡い青色をしているよ。色合いは凝集するとよりはっきりとした色味になり、液体オゾンは濃い青色に、固体オゾンは青黒色ないし濃紫色と表現される色になるよ。⁽¹⁷⁾⁽¹⁸⁾

液体酸素

普通の酸素は、大気圧下では-182.962℃から-218.79℃の間で液体になるよ。無色透明な気体と違い、液体酸素は淡い青色になるよ。⁽¹⁷⁾

α酸素

α酸素は大気圧下では最も低温で現れる固体酸素の相で、-249.4℃以下で現れる水色の固体だよ。結晶構造は単斜晶系だよ。⁽¹⁹⁾

β酸素

β酸素は-229.4℃から-249.4℃の間で現れる固体酸素の相だよ。非常に淡い青色で、結晶構造は菱面体晶だよ。また、室温で圧力を上げていくと最初に現れる相でもあるよ。圧力を上げていくと色は段々と淡青色から淡ピンク色へと変化していき、やがてδ酸素になるよ。⁽¹⁹⁾

γ酸素

γ酸素は-218.79℃から-229.4℃の間で現れる、大気圧下で最初に遭遇する固体酸素の相だよ。液体酸素と似た淡い青色をしていて、結晶構造は立方晶だよ。⁽¹⁹⁾

δ酸素

δ酸素は高圧でのみ現れる固体酸素で、室温では約9GPaで現れるよ。色はオレンジ色で、圧力を上げていくと赤みが増していくよ。⁽¹⁹⁾

ε酸素

ε酸素は、数ある酸素の同素体の中でも非常に劇的な存在だよ!色は濃い赤色で、室温では10GPaで相転移し、顕著な体積減少が観測されるよ。分子も単純なO₂ではなく、O₂分子が菱形に並ぶO₈クラスターになるよ。この事から、ε酸素は赤酸素八酸素とも呼ばれるよ。色は圧力を上げていくと黒っぽくなっていくよ。β酸素、δ酸素、ε酸素で見られる色の変化と、ε酸素で見られる分子構造の変化は、高圧による分子間距離の減少が原因と考えられているよ。⁽¹⁹⁾⁽²⁰⁾

ζ酸素

ζ酸素は、知られている限り最も高圧の固体酸素の相だよ。ζ酸素は室温では96GPa以上で現れる金属酸素であり、高い電気伝導度を持つ黒色固体だよ。ε酸素と違いζ酸素はO₂分子を保ったままで金属状態となっているよ。また、約100GPaと0.6Kで超伝導を示すよ。⁽¹⁹⁾⁽²⁰⁾⁽²¹⁾

フッ素 (₉F)

ハロゲン元素は色がついている事が特徴の1つだよ。原子番号が大きくなるほど色が濃くなり、凝集する傾向にあるよ。フッ素は非常に淡い黄色の気体、塩素は黄緑色の気体、臭素は赤褐色の液体、ヨウ素は黒紫色の固体、アスタチンとテネシンは不明だけど恐らくかなり黒っぽい金属であると推定されているよ。ただし、フッ素だけは唯一固体で2種類の相が知られているよ。⁽²¹⁾

αフッ素

αフッ素は-228℃以下で現れる固体フッ素の相だよ。結晶構造は単斜晶系で、βフッ素と比べてF₂分子が高密度で集まった1.97g/cm³の固体だよ。不透明な淡黄色結晶で、脆くて硬いよ。⁽²²⁾⁽²³⁾

βフッ素

βフッ素は立方晶系の固体フッ素で、-220℃で凝固した淡黄色の液体フッ素が最初に取る結晶構造だよ。柔らかく透明な1.70g/cm³の固体で、その性質は結晶格子に配列したF₂分子が無秩序に回転している事が由来と見られているよ。αフッ素へ相転移する時、無秩序だったF₂分子は一方向に揃い、分子間の距離が小さくなるため、大きなクリック音がして、しばしばサンプルケースを壊すほどの爆発を起こすよ!⁽²²⁾⁽²⁴⁾

ナトリウム (₁₁Na)

常圧ではナトリウムは銀白色の金属だけど、高圧にかけるとその性質は変化するよ。150GPaで黒色に、190GPaで透明な赤色に、300GPaで無色透明になってしまうよ!しかも、これらは全て絶縁性を持っている電子化物だよ。これは、高圧により結晶格子中の電子の配列が変化し、電子が自由に動けなくなったことによるものと考えられているよ。⁽²⁵⁾

リン (₁₅P)

リンは炭素の次ぐらいに同素体の代表例として使われ、色の変化で言えばリンの変化は随一かもしれないよ!

白リン

白リンは文字通り白っぽいワックス上の柔らかい固体だよ。ただし光に当たると、表面はすぐに黄色っぽくなるよ。このためしばしば黄リンとも呼ばれるけど、両者は同じだよ。黄色の由来は、表面にわずかに生じた赤リンだよ。とても酸化されやすく、酸素に触れる状態で放置すると、暗闇で緑がかった燐光を発するよ。⁽²⁶⁾⁽²⁷⁾

赤リン

赤リンは空気を遮断して白リンを250℃以上に熱すると生じる固体だよ。最初生じるのはアモルファス赤リンで、より高温にさらすと結晶化するよ。だから、市販されている赤リンのほとんどはアモルファスの粉末だよ。なお、より色の淡い紅リンと呼ばれるものは、独立した同素体ではなく、微細な赤リン粉末と見られているよ。⁽²⁶⁾⁽²⁷⁾

紫リン

紫リンは、独特の金属光沢を持つことから金属リン、あるいは初めて合成した人の名前を取ってヒットルフのリンとも呼ばれるよ。紫リンは金属としての性質は持たず、むしろ化学反応しにくい同素体だよ。紫リンは赤リンよりさらに高温、空気を遮断して550℃に加熱すると生じるよ。⁽²⁷⁾⁽²⁸⁾

黒リン

黒リンは最も化学的に安定しているリンの同素体だよ。高温だけでなく1200MPaの加圧が必要で、これまでの同素体と違い半導体だよ。フォスフォレンと呼ばれるグラフェンに似たシートは黒リンの1層で、新しい半導体材料として注目されているよ。⁽²⁶⁾⁽²⁷⁾

青リン

青リンは2016年に初めて合成された同素体で、金の表面に分子線エピタキシー法で合成されたよ。たった1層分しかない非常に微細なものだから、目で見て青いと認識することはできないよ。バンドギャップが1.10eVであることから、単体のケイ素と同じような色味を持っているという予測による名前だよ。今のところ合成が難しいことから、それ以上のことはわかっていないけど、理論計算では青リンを2層重ねると金属の性質を持つことが予測されるから、もしかすると大きな結晶は、名前に反して青には見えない可能性もあるよ!⁽²⁹⁾⁽³⁰⁾

硫黄 (₁₆S)

硫黄は同素体が少なくとも30種類見つかっていて、ちゃんと数え直せば倍ぐらいになるんじゃないか、って思えるくらい多種多様だよ。ところが色と言う点で言うならかなりつまらなくて、どれも黄色を基本とし、色が薄くなって白っぽくなるか、もしくは色が濃くなってオレンジ色から褐色っぽくなるかのどちらかだよ。これは硫黄原子の繋がり方によって吸収する色の波長が変化するからで、特に液体となった硫黄は色が様々に変化するよ。ただ、超高圧と低温では超伝導を示すから、これについて色の資料がなかったけど、もしかすると違う色をしている可能性があるよ。⁽³¹⁾⁽³²⁾

銅 (₂₉Cu)

は銀白色以外の色をしている代表的な金属元素だよね。これは電子軌道に由来するものだよ。銅の電子軌道の外側は3dと4sで、光が当たるとこの軌道の間を電子が移動するよ。電子の移動で発生したエネルギー差分は光の形で放出されるけど、大半の金属元素ではこの差が大きく、可視光線の領域にはならないよ。一方で銅の場合はこの差が1.9eVと小さく、これを光の周波数に変換すると810nmになるよ。だから銅はピンク色を帯びた赤色になるんだよ。⁽³³⁾⁽³⁴⁾

ガリウム (₃₁Ga)

どういう訳か、ガリウムはしばしば銀白色以外の色の金属元素のカウントから省かれてしまうよ。資料によっては単に銀白色と言われる一方、別の資料では青色を帯びている、と書かれているよ。なんでビミョーに見解が分かれているのか、青色っぽい理由はなんなのか、ごめんわかんなかったよ…。⁽²⁷⁾⁽³⁵⁾

ヒ素 (₃₃As)

灰色ヒ素

灰色ヒ素は、最も一般的なヒ素の形態だよ。灰色とは言うけど、これは表面の酸化色で、新鮮な表面は金属光沢を持っている半導体だよ。天然の灰色ヒ素である自然砒は世界中のあちこちで産出するけど、福井県の赤谷鉱山では世界でも珍しい自然砒の結晶が出てきて、その外観から金平糖石と呼ばれるよ。⁽²⁷⁾⁽³⁶⁾⁽³⁷⁾

黒色ヒ素

黒色ヒ素は、灰色ヒ素を昇華させ、ゆっくり冷やすと生じるヒ素の同素体だよ。灰色ヒ素より反応性が低く、天然の黒色ヒ素は輝砒鉱と呼ばれるように、より酸化に強く、光沢を失いにくいよ。ちなみに天然ではパラ輝砒鉱と言う、自然砒とも輝砒鉱とも異なる結晶構造の鉱物が、大分県の向野鉱山で見つかっているけど、これは独自の同素体ではなく、灰色ヒ素と黒色ヒ素が原子レベルで交互に配列したものである事が分かっているよ。⁽²⁷⁾⁽³⁶⁾⁽³⁸⁾⁽³⁹⁾⁽⁴⁰⁾

黄色ヒ素

黄色ヒ素は、灰色ヒ素を昇華させ、急冷すると生じるヒ素の同素体だよ。非常に不安定で、室温や光で容易に灰色ヒ素へと変化してしまうよ。一方で黄色ヒ素は水にある程度溶けるという、灰色ヒ素や黒色ヒ素にない性質を持っている事から、化学の分野でヒ素を研究するには最適な同素体で、ユニークな構造を持つ化合物が黄色ヒ素を出発点としているものもあるよ。⁽²⁷⁾⁽⁴¹⁾⁽⁴²⁾

セレン (₃₄Se)

セレンは硫黄ほどではないけど同素体が多数あるよ。ただし色と言う面では、次の3つに大別されるよ。

黒色セレン

黒色セレンは市販されているセレンでは最も良く見かける同素体だよ。単斜晶系ではあるけど、その構造は複雑で不規則と、ややアモルファスに近い所があるよ。⁽⁴³⁾⁽⁴⁴⁾

赤色セレン

赤色セレンはやや不安定な同素体で、結晶構造のない完全なアモルファスだよ。セレンを製錬した場合、最も簡単に得られる赤色粉末として得られ、部分的に結晶化すれば赤褐色に、微細な粉末になればピンクっぽくなるよ。⁽⁴³⁾⁽⁴⁴⁾

灰色セレン

灰色セレンは、常温で最も安定した同素体で、金属光沢を持っている事から金属セレンとも呼ばれるよ。黒色セレンや赤色セレンを200℃程度の高温に晒すか、より高温で昇華させたり溶媒で溶かした後に徐々に再結晶させると生じるよ。厳密には常温でも灰色セレンへの変化は進んでいるけど、極めて遅い事からほとんど無視できるよ。⁽⁴³⁾⁽⁴⁴⁾

スズ (₅₀Sn)

スズペストの存在から、スズに同素体がある事は比較的知られているよね!

αスズ

スズの同素体が有名な理由は、灰色スズとも呼ばれるαスズがあるからだと思うんだよ。文字通り灰色で金属光沢は鈍くなり、電気伝導率も半導体並みに低くなるよ。αスズは13.2℃以下でβスズが相転移して生じるけど、実際にはもっと低い温度でないと進行しているとみなされないくらい遅いよ。αスズはβスズより体積が大きく、脆くて分解しやすく、しかも周りのβスズをαスズへと変える触媒効果も持つから、スズ製品を破壊する原因になるよ!だからこれを "伝染病" になぞらえてスズペストと呼ぶんだよ。⁽²⁶⁾

スズペストはしばらく忘れられていたけど、ヨーロッパで有害物質を規制するRoHSが提出され世界的に有害物質の除去が進められた結果、最近復活してきたよ。スズペストはスズに含まれるわずかな不純物によって進行を防ぐ事ができるんだけど、RoHSによってわずかなカドミウムや鉛も除去された結果、ビスマスやアンチモンと言った無害な不純物も除去されてしまったからだよ。⁽⁴⁵⁾

βスズ

スズとして一般的に見かけるのはβスズだよ。金属光沢を持ち、白色スズとも呼ばれるよ。⁽²⁶⁾

アンチモン (₅₁Sb)

金属アンチモン

普通にアンチモンと言えば、唯一安定な同素体の金属アンチモンだよ。新鮮な表面は金属光沢を持つ半金属だけど、空気中で酸化しやすい事から灰色アンチモンとも言うよ。⁽⁴⁶⁾⁽⁴⁷⁾⁽⁴⁸⁾

黒色アンチモン

黒色アンチモンは準安定な同素体で、気体アンチモンを急冷すると生じるよ。100℃以上に加熱すると徐々に金属アンチモンへと変化するよ。空気中で酸化しやすく、自然発火性を持つよ。⁽⁴⁶⁾⁽⁴⁷⁾⁽⁴⁸⁾

黄色アンチモン

黄色アンチモンは非常に不安定な同素体で、スチビンを暗闇の中で-90℃以下で酸化させた場合にのみ生じるよ。それ以上の温度や光がある状態だと、黒色アンチモンが生じるよ。⁽⁴⁶⁾⁽⁴⁷⁾⁽⁴⁸⁾

爆発性アンチモン

爆発性アンチモンは白い外観を持つ同素体だよ。名前の通り爆発性を持つ非常に不安定な同素体で、ちょっとした衝撃や加熱で爆発し、金属アンチモンになるよ。塩酸中の塩化アンチモンを電気分解すると生じるけど、表面にかなりのハロゲンを含んでいて、爆発した時に生じる煙は塩化アンチモンだよ。上記3つと異なり、爆発性アンチモンは特定の結晶構造を持たないアモルファスであり、だからこそ不安定で爆発する可能性があるよ。ただし、爆発性アンチモンは独立した同素体ではなく、複数の結晶構造の混合物、あるいはポリマーだとする意見もあるよ。不安定性から未だに検証できていないけどね。⁽⁴⁶⁾⁽⁴⁷⁾⁽⁴⁸⁾⁽⁴⁹⁾

セシウム (₅₅Cs)

セシウムの色は淡い黄金色だよ!セシウムの反応性の高さから、セシウムの金色は痕跡量の酸素の吸着で生じた酸化被膜のせいではないか、という意見と昔は対立していたよ。でも現在の技術でも高純度金属セシウムは金色をしている事から、セシウムの真の色は淡い黄金色でほぼ間違いないよ。これは、セシウムの持つ電子の性質からも説明できるよ。セシウムは青色の波長をわずかに吸収する性質があるから、差し引きで黄色く見えるよ。一方でリチウムからルビジウムまでのアルカリ金属は、吸収する波長は紫外線だから、全ての波長を反射し銀色に見えるよ。⁽⁵⁰⁾

バリウム (₅₆Ba)

バリウムは普通は銀白色の金属だけど、非常に高純度な場合にのみ、わずかながら金色になるよ。カルシウムやストロンチウムも淡黄色と説明される事があるけど、これはわずかな酸化被膜の色かもしれないし、ちょっと調べた範囲ではどっちだか分からなかったよ。⁽⁵¹⁾

オスミウム (₇₆Os)

オスミウムは青色を帯びた銀白色の金属で、他の白金族元素とははっきりと違う色味を持っているよ。理由は電子軌道だけでなく、六方晶系という結晶構造が、光の反射に影響を与えていると観られるよ。⁽⁵²⁾

金 (₇₉Au)

は銀白色以外の色をしている代表的な金属元素だよね。同じ族である銅と同じように、金の色も電子軌道に由来するものだよ。詳しい理由は銅と被るから割愛するけど、金の場合は外側の軌道は5dと6sになり、エネルギー差は2.7eVと少し大きくなるよ。だから金は銅と違い、波長が520nmの黄金色になるよ。なお、金の電子軌道は古典的にはこうはならず、相対論効果によりやや収縮しているのが影響しているよ。⁽³³⁾⁽³⁴⁾

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