”常勤講師”の呪縛

 今回の内容は「常勤講師」についてです。公立校での採用は基本的に正規(臨時登録のような場合は講師ですが)なので、私立学校の教員生活を中心にした内容となります。私は新卒で常勤講師となりましたが、あまりの激務に体を壊しかけました。そして後から振り返ってみると、常勤講師が激務となりやすい要因が複数あるなと思い、これを発信しようと考えた次第です。教育現場について知りたい学生や、来年から常勤講師として働く人に、少しでも常勤講師の現状を伝えられればと思います。
 なおこの記事では常勤講師という立場をだいぶ悪し様に言いますが、常勤講師としての経験はとても大事だと考えています。その上で「常勤講師は大変なので、働く前の心構えをぜひ」という記事です。
「常勤講師はダメ!」みたいな記事ではありません。

 先に断りを入れてしまうと、常勤講師はあらゆる教員の立場の中でもトップクラスに忙しく大変な立場だと考えられます。今回は「常勤講師とはどういう立場や職責におかれ、どういう状況になるのか」という事を書いていきます。


目次


1.常勤講師の概要
2.常勤講師の何が大変なのか
3.
常勤講師はなぜ大変なのか
4.
常勤講師として働くための心構え、準備
5.
少しでもマシな学校で働くためには
6.常勤講師時代の私の生活


1.常勤講師の概要

 最初に常勤講師の概要ですが、常勤講師とは非正規雇用であるにも関わらず、正規雇用の教員(以下「専任教諭」と呼称)とほぼ同量の職務・職責をもつ教員です。

 教員として働いていないと「常勤講師」が何なのか分からないという場合も多いので、まずは教員の区分からおおまかに説明します。
私立教員の雇用・勤務形態は、大まかに以下の3通りに分かれます。


・雇用・勤務形態による私立教員の区分
① 週5~6日フルタイム勤務、雇用期間の定めなし(いわゆる終身雇用)
② 週5~6日フルタイム勤務、1~5年で雇用契約満了(更新もある)
③ 週1~6日、授業のある時間だけ勤務、基本的には1年で雇用契約満了


この記事でいう「常勤講師」とは、②に該当します
。学校によって②の呼称が常勤講師だったり、特別教諭だったり、専任講師(専任教諭とは別モノです)だったりと呼び方はいろいろ異なります。この記事では基本的に上記の②に該当するものは全て「常勤講師」と呼称します。したがって、この記事のタイトルをもっと厳密にするのであれば「上記②の雇用形態で教員として働いている人の呪縛」です。長いですね。①はいわゆる正規雇用であり、②と③は非正規雇用になります。また、主な職務内容は以下のような感じです。(学校ごとに異なりますが、大体こんな感じです)

・雇用形態ごとの主な職務内容
① 担任業務、副担任業務・授業・校務分掌・部活・採点・成績処理 等
② (担任業務)、副担任業務・授業・校務分掌・部活・採点・成績処理 等
③ 授業、(採点、成績処理)

 これを見て、常勤講師と専任教諭の業務内容ってほぼ同じでは?と思う方もいるかと思います。実際のところ、ほぼ同じです。むしろ常勤講師の方が激務なくらいです。ひとまず、最初にも述べたように常勤講師は非正規雇用でありながら専任教諭とほぼ同量の職務をこなす立場ということをご理解ください。


2.常勤講師の何が大変なのか

 とにかく、常勤講師は専任教諭と同じくらいの責任や量をもつ仕事を任される事が多く、これが何より大変です。

 私立の専任教諭は教員生活が長いか、短くても何年かは経験があるケースがほとんどです。最初に書いたように常勤講師は専任教諭と同じくらいの仕事を任されることが多いので、新卒の常勤講師なのに数年間教員経験のある人がこなしているのと同じ量の仕事をこなすことになるわけです。先輩と同等のパフォーマンスを求められるわけですから、当然これが大変なのは火を見るより明らかでしょう。さらには、その先輩方は数年の教員経験のおかげで授業のストックがあります。去年はこんな感じに授業をやったとか、生徒に話を聞かせるためにどうすればよいか、などのノウハウがありますから、先輩教員たちは授業の準備が比較的ラクです。(もちろん、それでも大変ですよ)その先輩方が過剰な残業なしではこなせないような業務量を、新卒の教員が担当したらどうなるかは想像に難くないです。

 キャリアのある専任教諭でさえ過労死ラインを越えてしまう業務量があるにも関わらず、新人で授業準備に時間のかかる常勤講師がその専任教諭と同量の業務をこなす。すなわち専任教諭の業務量+余分な授業準備の時間が常勤講師の業務量といえます。これが大変であることは明らかです。


3.常勤講師はなぜ大変なのか

 大まかには以下の理由から、常勤講師が大変だと考えています。

① 業務量が多い(前項の通り)
② 昇格を目指して頑張ってしまう
③ 勉強する時間がない
④ 年度末で職を失う可能性が常にある
⑤ 給料は大したことない

①については前項で説明したので割愛します。

②について
これは実際に教育現場に来るとわかるのですが、私立の教員にとって正規雇用というのはそうそう手に入るものではありません。30歳までに正規雇用(専任教諭)になれたら勝ち組といってもいいくらいです(2019年、理科のうち生物専攻の専任教諭募集は、関東圏の私学全体でおよそ10人くらいしか求人がありませんでした。10個の椅子を関東圏の全教員で取り合うことになり、倍率の高さが伺えます)。そのため、常勤講師という立場にいると、この専任教諭への昇格を目指して仕事を頑張りすぎてしまうという事がよくあります。


常勤講師として働く場合、勤務成績によっては翌年に専任教諭(正規)へと昇格させてもらえることがあります。これについては教員採用の募集要項に書いてあることが多く、「募集:専任教諭または常勤講師」「募集:常勤講師(勤務成績により、次年度以降専任教諭への昇任あり)」のような形で書かれていることが多いです。ただし、私の勤めていた学校は専任または常勤という求人を出していながらも、専任として新規採用された人はいませんでした。今にして思うと「専任教諭になれる可能性をちらつかせて教員を集め、働かせる」という意図があったんだろうなあと思っています……


 昇格を目指して頑張るのはいいことなのでは?と思う方も多いかと思います。それはとてもいい事なのですが、そもそも常勤講師から専任教諭へと昇格できる人数が非常に少ないため、よほど頑張ってもなかなか昇格はできないのが現状です。そもそも学校が専任教諭ではなく常勤講師や非常勤講師を雇うのは、人件費削減の側面が大きく、学校としては昇格させたくないところが多いです。そのため、多少優秀だったり結果を出したりしてもなかなか昇格できず、でも自身は昇格して正規雇用を手に入れようと頑張りすぎてしまうわけです。頑張りすぎなければいいじゃん!というのは真っ当な意見ですが、私立教員にとって正規雇用は本当に手の届かない物で、かつての勤務校でも全教員の30%強くらいしか正規雇用の教員はいませんでした。自分の同級生たちが正規雇用で働いて結婚してと人生を進めていく中自分は正規雇用ですらない、という焦りは、想像以上にキツいものがあります。この焦りから、体の限界を超えて頑張ろうとしてしまう同僚は何人もいたし、私もその一人です。

※なお、私は常勤講師として採用された時「専任としての採用でも一年目は常勤講師として勤務してもらって、二年目から専任です」と言われたものの、そのまま二年間常勤講師としての勤務でした。三年目も常勤講師だと言われたので「なぜ昇格できないのですか?」と問い質しましたが「答えられません」の一点張りでロクな回答が得られなかったため、その学校は辞めました。


③について
、これは非常に重大な問題です。常勤講師として勉強を重ねて自己研鑽を図ることは生徒のためにも自分のためにも大切なことですが、忙しすぎてその時間が取れないことがしばしばあります。こうなると地獄で、

忙しい→勉強する時間がない→能力が上がらない→授業準備等の仕事がいつまで経っても終わらない→勉強する時間がもっと無くなる→……

といった具合でどんどん負の連鎖に陥っていきます。忙しすぎて勉強する時間が取れないと、毎日の業務に追われる一方で成長する暇がありません。結果として、新卒から数年働いた時点でも能力が大して向上してないという人も少なくありませんでした。能力が向上しなければ、前項に述べたような専任教諭へ登用されることは難しい。と、どんどん負の連鎖は続きます、、、

④について
書いてある通りです。常勤講師は常に「年度末(3月末)には職を失うかも、、、」という恐怖と戦いながら働かなればなりません。

 これは常勤講師の雇用契約の問題です。一般論として日本では一度雇われれば犯罪でも犯さない限りそうそうクビにはなりません。しかしこれは、「期間の定めの無い雇用契約(要するに終身雇用)」の話です。終身雇用の場合は雇用契約の際に「あなたは終身雇用、ずっと雇ってあげるよ」という契約をしているからこそクビにしにくいわけです。
 
 常勤講師の場合はたいてい一年間のみの契約となっており、一年ごとに新しい雇用契約を結びます。要するに常勤講師は「今年で君との雇用契約は終わるけど、来年も同じ契約で働いてよ」というやりとりを毎年学校と交わし、同じ勤務校で何年も勤務するわけです。この太字の部分がミソで、常勤講師は毎年、雇用契約を終了(つまり退職)するわけです。多くの学校は人手不足ですから雇用契約が終わった次の日からまた新たに常勤講師として雇う(いわゆる「契約更新」)という事をするのですが、この契約更新が行われなければ自然に失職するということです。つまり、ちょっとでも校長や教頭に嫌われてしまうと、年度末に失職してしまう可能性がかなり高くなる。このプレッシャーと戦いながら仕事をするというのも、常勤講師の辛さの一つです。

※上記のように校長など人事権を持つ人に嫌われるとたちまち失職のおそれが出るため、自分のやりたいように授業が進められなかったりするのも大変です。校長に忖度した授業形態にすると生徒がつまらなそうにしたり、自分のやりたい授業形態と合わなくなる。でも失職は嫌だし、、、というジレンマ。


⑤について
これは前述したように、常勤講師は人件費削減等の目的もあって賃金が安く抑えられがちだという話です。(もちろん、ある程度の額がもらえるところもあります)
私は新卒で常勤講師になり、その時は手取り(税金とか引かれた後の金額)で20万程度、ボーナスは年に30万ほどでした。これは新卒としては悪くない給与額ですが、常勤講師は基本的に一年で契約が満了するため、昇給がありません。この額で数年も働けば、あっという間に同年代中では低年収の仲間入りです。(一般企業勤めの同級生は基本的に毎年昇給していくので)「失職の恐れと戦いながら激務をこなし、やっともらえる給料もたかが知れている」という状況は、想像を絶するストレスです。

このように常勤講師が大変である要因は様々であり、その業務量や精神的負荷の大きさから考えても、常勤講師はかなりハードな立場であると考えられます。


4.常勤講師として働くための心構え、準備

・激務になることは覚悟する必要がある
・教員採用試験を受けておくと何かと助かる
・1度や2度くらいは勤務校を変えるつもりで働いたほうが良い
・教員生活を送る上で貴重な経験になることは間違いない
・健康だけは損ねないようにする必要がある
・可能であれば実家から通ったほうがいい

 ざっくりまとめると上記6点です。これまでも書いたように、常勤講師の職務が激務となる可能性はきわめて高いと考えられますので、そこは覚悟していく必要性があります。(私の常勤講師初年度はやはり激務で、時間外労働は概算で100時間/月くらいだったと思います。)ただ、この激務の中で試行錯誤しながら仕事をなんとかやりくりするという経験は、その後数十年の教員生活において強い武器になると思います。そのため、将来の自分への時間投資だと割り切って、過労死ラインは越えない程度に頑張ってみるというくらいの心持ちでいるといいかもしれません。(ただし、健康に影響がありそうなときは必ず定時帰宅。これは鉄則です)

 また、常勤講師として働く場合には翌年の教員採用試験(公立・勤務校以外の私学どちらも)を受けておくと良いと思います。先ほど「常勤講師は専任教諭への昇格を目指すあまり激務に身を投じてしまう」ということを書きましたが、これは「今の学校で一生勤めたい、だから今の学校で専任にならなきゃ」という考えからくるもので、今の学校以外に道がないと考えるからこそ頑張りすぎてしまうわけです。「どこかの学校でいつか専任になれればいいや」という考えであれば、今いる学校以外にも逃げ道があると考えることができ、体を壊すくらいなら少し手を抜いて、他の学校で頑張ろうと思えるのではないでしょうか。さらに他校の内定を持っていれば、「来年専任に昇格できないなら辞めます」といった具合で人事査定の時に交渉の材料にもできます。採用試験はぜひ受けまくりましょう。
 なお、教員の世界では職場を何度も変えるというのはよくある話です。むしろ様々な学校のスタイルを経験している方が将来的に授業・生徒指導の幅が広がって良いので、2〜3回くらい学校を変わるくらいなら全く問題ありません。
 最後の「実家から通った方がよい」という部分についてですが、常勤講師は激務の割に給料はそこまで高くありません。奨学金の返済等がある場合、一人暮らしだと貯金をする余裕もないです。「激務なのに貯金もできない、病気などが重なれば生活費も危うい」という状況は非常に強いストレスになり、体を壊す一大要因となり得ます。実家から通えば最悪仕事を辞めたとしても生活できなくなることはありませんから、教員としての職務に慣れるまでは実家から通う方がオススメです。


5.少しでもマシな学校で働くためには

①頻繁な教員募集をかけてない学校を狙う
②学校のHPをよく見ておく
③進学実績や各種SNSを見て、生徒のレベルを把握しておく
④教科や労働法規の勉強をしておくこと

ざっくり書くと上記4つです。

 ①についてですが、常勤講師は学校運営にかなり携わるため、毎年別の人を募集するというのは非常に効率が悪いです。にも関わらず毎年のように常勤講師の募集を行っている学校は「労働環境が劣悪なため、毎年常勤講師が辞めていく職場」であると考えられます。そのため、毎年のように常勤講師の募集を行っている学校はあまりオススメできません。ブラックな可能性が高いです。(具体的にどの学校がオススメできないかを書くと営業妨害ととられる恐れもあるため、具体的な校名への言及は避けておきます。)なお、日本全国の教員募集については下記のサイトで確認できるので、ぜひ毎年チェックしてみてください。リンクを踏むのが怖いという方は、「私立 教員採用」で検索すれば一発で出てくると思います。

以下リンク
http://www.shigaku.or.jp/employ/recruit.html

 ②について、これは学校の教育方針が適切かどうかを評価するものです。最近よく見るものでは「グローバル教育に力を入れており、英検の取得が…」「ICTを導入した主体的な学びを…」「部活も熱心に行って文武両道で…」「プレゼンテーション能力を養い…」などの表記でしょうか。これらのような「それっぽい」言葉が学校紹介文や校長メッセージ中に大量に含まれている学校はほぼブラックだというのが私の考えです。はっきり言うと、これらの能力を同時に養うのはほぼ不可能です。それこそ開成高校や灘高校のような超一流私学でやっと可能なくらいです。これをHPに掲げるということは、保護者に対して「ウチの学校にくればこれらが身につきます」と宣言しているも同然です。従って、上記のような言葉を掲げる学校では「英検を取得させつつ、プレゼンテーションを頻繁に行わせて教員がそれを評価し、かつ部活指導も精力的に行い、ICTを用いた先進的な授業を行い、グローバルな視点を身につけさせ、進学実績も出しつつ、生徒指導も行う」という能力が教員に求められることとなります。無理だよこんなの。
 比較的ホワイトな学校は、その学校の教育方針を独自の言葉で表現し、伝えてくれます。ぜひ色々な学校のHPを見てください。

 ③もかなり重要です。教員を志す理由は人それぞれです。部活指導がしたい人、難関大学の進路指導をしたい人、楽しい学校生活を送らせてあげたい人、ヤンキーの子に勉強の面白さを教えたい人、勉強もほどほどに人生を教えたい人…十人十色の「自分が目指す理想の教員像」があると思います。しかし、例えばほとんどの生徒が就職するような学校に「進学指導をしたい先生」が勤務する場合、この先生は進学指導をできない可能性が高いです。また野球部を全国大会に連れて行きたい先生が、「部活は16時まで、学生の本分は勉強である」みたいなガチガチの進学校に勤務する場合、これも全国大会は非常に高い壁となります。このようなミスマッチを防ぐために、自分のやりたいことをできる学校を勤務校として選ぶ必要があります。そのためには学校HPや進路実績をよく見て、生徒や学校のレベルを適切に把握することが大事です。

 ④は護身用です。どれだけ考えても、ブラックな学校に当たる時は当たります。ブラックな学校に当たってしまった場合、いかに素早くブラックに気づいて辞めるかが大事です。そのためには「何が合法で何が違法なのか」を知っておかなければ、ブラックであることに気づけません。また、その学校を脱出する場合は次の勤務先を探すために教員採用試験を受ける必要があります。いかなる学校の採用試験でも教科の知識は必須になりますから、専門教科の能力を高めておくことは非常に重要です。


6.常勤講師時代の私の生活

 最後に、実際の私の常勤講師生活について、具体的にどういう生活スケジュールだったかを中心に書いていきます。参考になればと。

【月~金】

6:00 起床、風呂・食事・出勤準備
6:50 自宅発
7:30 職場着、業務開始
8:00 朝礼
8:15~8:35 朝のHR、朝学習の監督
8:35~8:45 学校内出欠や遅延等の確認
8:50~15:20 授業・授業準備(休憩する暇はなかった…)
15:20~15:40 清掃の監督
15:40~16:30 学校全体の出欠等の確認、チャイム等の設定
16:30~17:00 翌日の学校全体への連絡文書作成(毎日)
17:00~19:00 部活動顧問(比較的ラクな文化部)
19:00~20:00 その日の朝学習等の採点、
20:00~21:45 翌日の授業準備
21:45 職場発(この時間以降までいると翌日校長から怒られる)
22:30 自宅着(最寄り駅の牛丼屋で夕飯を済ませてから)
22:35~24:00 授業準備
24:00 就寝

 およそこんな感じの生活でした。平均すると一日に4コマの授業があったため、一日あたりの授業時間は3時間20分(200分)なのに対し、授業準備の時間は残業と自宅残業を含めて最大でも5時間程度です。勤務時間内で終わらせる場合授業準備の時間はおよそ2時間ですから、残業がないと仮定するならば「2時間の間に3時間20分の授業(=プレゼン)を考える」ということになります。(キツすぎるよ…)例え残業したとしても5時間で3時間20分の発表内容を考えるのはそこそこキツいです。記事の3にある③で書いた「忙しくて勉強する時間がない」というのはこういう状態です。

 これに加えて2日に1回は高3生が入試問題の質問に来ていたため、そちらに対応しなければなりませんでした。これを蔑ろにするわけにはいきませんから、生徒の下校時刻までは付きっ切りでした。(そういう日は授業準備がほぼできないまま帰宅)

 こうして忙しい状態の毎日でしたので、本来は授業を全力でやるべきなのに「この授業は学力の低い生徒が多いからある程度適当にやっても何とかなるな………」といった具合で手を抜かざるを得なかった事が多々ありました。全力でやりたい仕事なのに自分の体のために手抜きしなければならず、そのしわ寄せを生徒に食わせてしまっているという状態は、熱意をもって教員になった人間ほど大きな心理的ダメージになると思います。


 ここに書いた全ては私がかつて勤めていたある学校の話です。しかし、この記事でいう「常勤講師」に当てはまる立場の教員は記事の3に書いたような理由から、激務になりがちなのではないかと推測しています。不幸にも今年亡くなられた下記記事の教諭も、この記事でいうところの常勤講師にあたる「一年契約の特任教諭」でした。

淑徳高校教諭が自殺 部活顧問で長時間労働、労災申請へ

 他にも様々な学園で非正規教員の雇い止め等が横行していることから、学校に対して常勤講師が弱い立場にあるというのがよくわかるかと思います。

搾取される非正規教員たち 露骨な脱法、徹底した支配

 常勤講師はダメ!とか、正規以外で働くな!というわけではないです。教員として一度は通るべき道ですし、常勤講師も非常勤講師も非常に魅力的な仕事です。ただ、その道を通る新しい先生たちが心身を害してしまわないよう、少しでもこの記事が参考になればと願うばかりです。


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