シュヴァルツの(ゆくゆくは)100冊

毎年夏になると書店で見る、「○○文庫の100冊」的なフェア、あるじゃないですか。あれやってみたいんですよね。

選考基準

個人で勝手にやるものなので、受賞歴がどうとか、世間の評価がどうとか、そんなものは一切考慮せず、ただただ私が面白いと思った本をまとめていきます。

また、出版社や判型の縛りもありません。安く手に入る文庫本から、そこそこお高い単行本まで、面白ければ何でもリストアップします。

そして、新品で手に入るかどうかも考慮していません。つまり絶版の本も含むということです。でも、今どきはきれいめの古本がネットで簡単に手に入る時代。古本だとしても読んでほしい本が沢山あるので、ご理解ください。

更新は随時。本は順不同、追加した順に並んでいます。何かの参考になれば嬉しいですし、参考にならなかったとしても、本の世界は広いということが伝わったら幸いです。

現時点での掲載数: 4/100冊(2024年8月19日現在)


1. 未来いそっぷ - 星新一

  • 出版社・レーベル: 新潮文庫

  • ISBN: 978-4-10-109826-5

一番最初は、私が読書にハマるきっかけとなった本を。ショートショートの神様、星新一の短編集「未来いそっぷ」。

星新一作品って、小中学生の頃に通る、でお馴染みだと思うんですが、私も例に違わず小学生の頃に知りました。表題作『いそっぷ村の繁栄』が童話のパロディということもあって、この本は特に子供でも読みやすい。

ただ、そこで終わらせてしまっては勿体無いと私は思います。

『熱中』のスラップスティックな感じとか、『余暇の芸術』の先見性とか、成長した今読んでも面白い、というか今だから益々面白く読める作品が沢山あるんです。大人になってから敢えて読んでみてほしい。

星新一作品の傑作選としては、弟子の新井素子が編者を務めた『ほしのはじまり』(角川書店)があり、こちらもおすすめ。星新一の生涯を知るなら、最相葉月『星新一 一〇〇一話をつくった人』(新潮文庫、上下巻)という評伝がありますし、作品そのものの評論である、浅羽通明『星新一の思想 予見・冷笑・賢慮のひと』(筑摩選書)も読み応えがあります。

2. 自分だけの一冊 北村薫のアンソロジー教室 - 北村薫

  • 出版社・レーベル: 新潮新書

  • ISBN: 978-4-10-610345-2

  • 絶版

新潮新書の目録を読んでいたときに見つけ、どうしても読んでみたかった本。古本を通販で買う、という行為を初めて行ったのもこの本です。

著者の北村氏は、自身の小説のみならず、氏が編んだアンソロジーも人気らしい(私はどちらも読んだことはないですが)。その氏が行った、アンソロジーに関する講演を収録した一冊。
曰く、回転寿司で何をどういう順番で食べるか、もある種のアンソロジーで、それを寿司ではなく文章で行うと「作って心躍り、読んで楽しい」と著者は言います。

アンソロジー作りの楽しさについて語られる話の多くは、著者の実体験に基づき、それを踏まえて氏は「アンソロジーは、作品を読むと同時に選者を読むもの」と説きます。どういう作品を収録するかは勿論、何をどう並べるか、というところに、選者らしさが出るという。

アンソロジー、というか文学自体それほど通ってきていない私ですが、アンソロジー編んでみたい、と思わされる本です。絶版なのが本当に惜しいところ。

3. 信仰の現場 すっとこどっこいにヨロシク - ナンシー関

  • 出版社・レーベル: 角川文庫

  • ISBN: 4-04-198603-6

  • 絶版

有名人の特徴を捉えた消しゴムはんこと鋭い文章で人気を博した、夭折のコラムニスト・ナンシー関氏。そんな氏があちこちに出向いて記した、珍しいルポルタージュです。

冒頭の「何かを盲目的に信じている人にはスキがある」から始まる一文だけでも読む価値あり。世間からしたら傾いている人も、同志が一堂に会する場ではその傾きが「正」であり、それ故無防備になる、という指摘には、大喜利界隈に属する身としてはちょっと耳が痛くもありますが……。

矢沢永吉やウィーン少年合唱団のコンサート、「笑っていいとも!」の公開収録、三流大学の合格発表、平成4年4月4日4時44分の四ツ谷駅などなど、取材する対象は多岐に亘ります。そこから得られる考察、批判と自虐の数々はかなり面白いです。
この本も絶版なんですが、ナンシー氏の文章が凄いのは、30年近く前の題材を取り扱っていても、物事の本質を捉えているので一向に古びないということ。敢えて今読む価値は十分にあります。なにせ私自身ナンシー氏が亡くなった後に生まれていますから。

ナンシー氏の著書で現在入手しやすいものとしては、いずれもテレビコラムを再編集した『ナンシー関の耳大全77』(武田砂鉄・編、朝日文庫)と『超傑作選 ナンシー関リターンズ』(世界文化社)があり、また『評伝 ナンシー関』も中公文庫で復刊されています。

4. 人生はあるあるである - レイザーラモンRG

  • 出版社・レーベル: 小学館よしもと新書

  • ISBN: 978-4-09-823504-9

  • 絶版

前々からこの本の存在は知っていて、少し興味はあったんですが、言語学者の川添愛氏が読売新聞で紹介していたのが決め手となり、古本で購入。大当たりでした。

著者は「あるある早く言いたい」でお馴染みのレイザーラモンRG氏。正直「タレント本だし……」と思いながら読み始めたのですが、めちゃくちゃ良い本です。とにかく愛に溢れている。

あるあるを見つけるプロセスについて「物事をじっと見て、肯定的に捉えること」と自ら定義されている通り、RGさんの根底にあるのはとても温かく優しい視点だということが分かり、それは学生プロレス時代の話や東日本大震災のときの活動などからも裏付けることができます。

私が大喜利をやってきた上で見聞きしたり考えたりしたこととも重なる箇所がいくつもあり、私の考え方もある種正しかったんだなというか、プロもこう言ってるんだから信じて良いんだろうな、と安心できる内容でした。この薄さでこの満足感を得られる本はなかなか無いです。

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