私的蔵書の並べ方
後先考えずバンバン買ってしまうものだから、本が次々増えていく。数えるほどしか本を持っていなかった頃は購入順に並べていればよかったが、増え始めるとそうはいかない。
そこで、蔵書の並べ方について色々考えるのだが、これが案外難しく、私は未だに納得の行く方法に出会えていない。
とはいえ、取り敢えずこのやり方でいくか、という方法は見つけており、現在はそれに従って本を収納している。何の役にも立たないかもしれないがここに記す次第。
並べ方
自分なりに編み出した本の並べ方は、以下のようなもの。
判型: 文庫と新書、B6と四六判を一括りにし、他は独立
並び順: 大まかなジャンル毎
元々は、判型毎にきっちり仕分け、著者名の50音順にまとめていたが、著者名を全て把握するのは至難の業であり、効率的であるとも言い難い。そこで使いやすさを考慮した結果、この並べ方に落ち着いた。
出版社毎に並べるのも考えた。所謂一般的な書店の、文庫・新書コーナーの並べ方である。出版社毎にまとめて並べると背表紙が統一されて見栄えが良くなるのが利点だが、私にとっては欠点のほうが目立った。というのも、複数のレーベルから同じ著者の本が出ている場合、出版社毎にまとめると本が離れてしまい、探しづらくなってしまう。それでは意味がない。
また、統一感のある本棚よりも、雑然とした、ごった煮的なビジュアルのほうが個人的に好きなのもあった。そのほうが使いづらいじゃないかと言われそうではあるが、自分で定義付けを行った本棚のほうが、予め定義付けられた、謂わば借り物の本棚よりは、自分の思い通りに使うことが出来るのではないか。断言は出来ないが、少なくとも私はそう考えている。
ジャンル分けの方法
肝心のジャンル分けも、日本十進分類法にキッチリ従う、読んだときの印象(元気が出る、泣きたくなる、など)で分ける、といった様々な方法があると思うが、私は以下のように行っている。
その本で扱われているざっくりとしたテーマで分ける
そのテーマの中で複数のサブテーマに分かれる場合、さらに分ける
同テーマ内での並べ方は細かく指定しない(自分なりの文脈だったり、単に著者名順だったりする)
テーマ名を50音順で並べる
ざっくりとテーマ分け
テーマの基準は各々に委ねられるが、自分が分かりやすければ何だって良いのである。分かりやすいところで言うと、私の本棚には、雑学本ばかり並んだ「雑学」コーナー、ブックガイドや読書術の本が並んだ「本の本」コーナー、などがある。
上記のような分かりやすい区分以外にも、自分なりに「この本とこの本は近いな」と思ったものを、同じテーマとしてまとめた箇所は多々ある。例えば、森永卓郎『マニア力』(マイナビ新書)と、柳宗悦『蒐集物語』(中公文庫)をまとめて「収集・コレクション」テーマとして扱い、そこに赤瀬川原平『超芸術トマソン』(ちくま文庫)や北尾トロ『ニッポン超越マニア大全』(文庫ぎんが堂)も合わせて「趣味」というテーマにしている。
また、手持ちの蔵書の中でも特に数が多い著者(私の場合、星新一やナンシー関)は、それだけで一つのテーマとして独立させている。
このテーマ分けには弱点がある。例えば、どのテーマに当てはまるか判断し難い本の処遇をどうするか。或いは、複数のテーマに跨がる本をどう扱うか。
こういった問題に恐らく正解は無く、結局は各々がやりやすい方法を見つけるしかないと思っている。前者については「総記」テーマを設け、そこに吉成真由美・編『知の逆転』(NHK出版新書)や、ジョン・ファーンドン『オックスフォード&ケンブリッジ大学 世界一考えさせられる入試問題』(河出文庫)などをブチ込んでいる。また、後者に関しては、文学研究者の林望氏が「もう1冊買って両方に置く」という解決策を示している(『役に立たない読書』インターナショナル新書)。実際にやるかはともかく、盲点をつくような方法だと思う。
テーマ細分化
例えば、ひとくちに「歴史」と言っても、日本史や世界史、或いは地域毎にまとめてヨーロッパ史やアジア史やアフリカ史、はたまた年代で区切って中世史や近代史など……のように細かく分けることができる。これも、自分が使いやすいように分けるのが望ましい。とはいっても、歴史の本に関してはそれほど持っていないので、私はひとまず日本史と世界史に分けて並べている。
先に挙げた「本の本」テーマであれば、ブックガイド、読書術、古本、書斎、図書館……と、かなり細分化することができる。
他にも、「文学」というテーマでまとめるなら、執筆年代で区切ったり、豊富なサブジャンル毎にまとめたり、といったこともできる。
テーマ内での並べ方
テーマ内の並べ方はバラバラで、サブテーマが無ければ判型毎にまとめたり、著者順に並べたりしている。また、サブテーマが複数存在する場合は、自分なりに文脈を持たせて、納得の行く順番になるよう心がけている。
例えば「恐怖」テーマなら、「恐怖そのものの原理(戸田山和久『恐怖の哲学』など)→恐怖の対象となる事象(荒俣宏『お化けの愛しかた』など)→ホラーコンテンツ制作(五味弘文『お化け屋敷になぜ人は並ぶのか』など)」といった感じで、テーマ内の流れを意識した並び順にしている。
或いは、左側は易しめで、右に進むにつれ難しい内容になっていく、というのも、感覚的に分かりやすい並べ方ではある。
テーマを50音順に並べる
テーマ毎の仕分けが終わったら、いよいよ本棚にしまう段階である。
私は、各テーマを50音順に並べている。似たテーマをまとめて並べても良いのだが(心理学と哲学とか)、そうすると必ず余るジャンルが出てくる上に、テーマのまとまり毎の明確な境目が生まれてしまい、個人的に好ましくないため、敢えて機械的な50音順の並びを採用している。
テーマ毎のまとまりがあっても、両隣のテーマは全く関係が無い。それが良いのである。敬愛する星新一御大は「アイデアは異質なものの結びつけから生まれる」と説いたが、その「異質なもの」が必然的に隣り合うのが、50音順の魅力である。
そして何より分かりやすい。自分で仕分けたテーマが50音順に並んでいるから、例えば「クイズの本どこだっけ」となったら、本棚のはじめの方から探せば、自ずと「クイズ」の並びに辿り着く。蔵書数が多いのであれば、書店のようにインデックスを差すのも良い。
終わりに
以上が、私なりに編み出した蔵書の並べ方である。合う合わないは当然あると思われるが、蔵書整理に困っている方の一助になれば幸いである。
また、「自分はこんな風に並べている」という意見も是非見てみたいと思っている。私は他人の本棚を見るのが大好きなので。
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