見出し画像

「働くこと」を思考する

買ったきっかけ

ミクロ・マクロはやってることのイメージつくけど、労働経済って何してんだろ…って思ったから

本のメモ

どんな人が書いているか

経済博士(阪大)->民間(三菱重工)->公共(世界銀行)->経済学の准教授(東洋大学)
そういえば昨日友達が東洋大学の人とマッチングアプリで会ってたな

第1章: 外国人労働者

主な在留資格として

  • 高度専門職(研究者や技術者など)

  • 経営・管理(経営者など)

  • 技術・人文知識・国際業務(通訳など)

  • 特定技能(介護, 宿泊, 外食など14分野)

  • 技能実習(農業, 建設, 製造など80業種)

  • 資格外活動許可(留学生など)

  • 特定活動(外交官の家事使用人, ワーホリ, EPAに基づく看護・介護実習生など)

->1993年まで単純労働を目的とした在留は認められていなかったらしい

総数
約65万人(2010)->約72万人(2013)->約108万人(2016)->約166万人(2019)
国籍
中国25.2%, ベトナム24.2%, フィリピン10.8% …

非熟練外国人労働者の受け入れは慎重になってきた(厚労省2002)
・日本人の就業機会を奪うから
・労働市場の二重構造化(生産性の低い部門が温存される)が起きるから
・景気変動に伴って失業が発生した場合、社会保障費の負担が増大するから
->外国人かどうかはあまり関係なく、今人手不足だからって低スキルの人を好き勝手呼ぶの良くないよ!ってことかな

海外の実証研究によると

  • 外国人労働者は正規労働者と補完関係にあるが、非正規労働者とは代替関係にある。

  • 低スキルの女性外国人労働者は、家事・子育て関連サービスの供給を通じて、受け入れ国の高スキル女性労働者の労働供給を増やす。

  • 外国人労働者が多く流入する地域では、安価な労働力に依存することによって、生産性の低い労働集約型産業が高度化することを遅らせている。

第2章: 障害者雇用

障害者の総数は約963.5万人で、人口の約7.6%
内訳は、身体: 436万人, 知的: 108万人, 精神: 420万人 
(平成30年版厚生労働白書)
であり、高齢化や潜在的な障害の顕在化によって、年々総数は増加している。

2006年に障害者自立支援法が施行され、従来の保護する方針から自立させる方針への転機となった。
現在、事業主に対して一定割合以上の身体・知的・精神障害者の雇用が義務付けられている。身体障害者を雇用する際に必要なスロープなどの設置費用に対し、法定雇用率を満たしていない企業からの調整金を支給する仕組みもある。

経済分析によると
助成金の引き上げは障害者雇用・社会収支からみてある程度の効果が見込まれるが、納付金や調整金の引き上げ・法定雇用率の引き上げは必ずしもいい効果をもたらさないことを示している。
また、法定雇用率を達成した企業の利益率が低いことを明らかにした研究もあり、要因として、障害者雇用のための探索コストや、最適雇用率を超えた雇用などの可能性を挙げている。

第3章: 高齢者雇用

高齢者雇用安定法は、2012年の改正で60歳未満の定年禁止、65歳までの雇用確保措置をとることを義務付けた。
2025年には高齢者比率(65歳以上)が人口の30%を占めると予測されており、その際の総数は約3677万人である。
日本の高齢者労働力率は、他国と比較してすでに高く、2018年度において33.9%である。
アメリカ: 24.0%, カナダ: 18.1%, イギリス: 14.0%, ドイツ: 10.3%, 香港: 18.6%シンガポール: 38.2%(すべて2018年度) 

高齢者は、生産性が同じであっても、雇用主や消費者による差別的嗜好によって、若い人に比べて不利な扱いを受けることがある。
また、社員が若いうちに生産性以下の賃金を払い、高年齢時に生産性以上の賃金を支払う企業が多い。
この場合、定年時に総生産と賃金の総支払い額が一致するように設計されているため、企業は定年後の高齢者を雇いづらいという考えもある

アメリカの研究によると、年齢差別禁止法によって、60歳以上の労働者の雇用確率が6-7%引き上げられていることが明らかになった。

第4章: LGBT

電通LGBT調査2018によると、LGBT層に該当する人は人口の約8.9%である。
厚生労働省は、2016年より、採用選考の指針を示した「公正な採用選考の基本」において、「LGBT等性的マイノリティ(性的嗜好及び性自認に基づく差別)など特定の人を排除しないこと」を明記した。

海外の研究では、
性的指向を明らかにした上で、書類応募から面接の知らせが届く確率は
レズビアンは異性愛者と比べて12%低い
ゲイは異性愛者と比べて25%低い
特に、ゲイは機械工、レズビアンは幼稚園の先生や清掃で、面接の応答率が低く、それぞれ男性•女性が支配的な職種で差別を受けやすいということが明らかになった。

賃金に関しては、海外の研究で
レズビアンは異性愛者に比べて9%高く
ゲイは異性愛者に比べて11%低く
いわゆるレズビアンプレミアム、ゲイペナルティが
存在することが知られている。
日本の研究では、ゲイペナルティは確認されたが、レズビアンプレミアムは観察されなかった。
->根拠ない予想だけど、心が男みたいでバリバリ働ける女の人がいたとしたら確かに賃金高そう…

第5章: 発達障害・認知特性

発達障害の定義として

  • 自閉症: 社会的関係形成が困難で、興味や関心が狭く特定のものこだわる特徴があること。

  • 高機能自閉症: 自閉症のうち知的発達の遅れを伴わないもの。かつ自閉症の特徴のうち、言葉の発達の遅れを伴わないものをアスペルガー症候群という。

  • 自閉症•高機能自閉症•アスペルガー症候群を併せて、自閉症スペクトラムという。
    注意欠陥多動性障害: 年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/または衝動性•多動性を特徴があること。

  • 学習障害:  聞く、話す、読む、書く、計算するまたは推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示すさまざまな形態。

そもそも、人の認知特性として

A: 視覚優位者
➀写真のように二次元で思考するタイプ
➁映像のように三次元で思考するタイプ
B: 言語優位者
➀文字や文章を映像化してから思考するタイプ
➁文字や文章を図式化してから思考するタイプ
C: 聴覚優位者
➀文字や文章を、耳から入れれ音として情報処理するタイプ
➁音色や音階といった、音楽的イメージを脳に入力するタイプ

がある。
->医師が作った本当の頭の良さがわかるテスト、っていう本で詳しく解説されていた気がする。俺は視覚優位者の映像タイプだったはず。

第6章: 幸福度・価値観

->あんま面白くなかったので割愛

第7章: さまざま能力と能力開発

->認知能力•非認知能力、人生100年時代の学び方〜みたいな内容、興味あるけど面白くなかったので割愛

第8章: 結婚・出産・育児

結婚によって賃金が上がることを、経済学でマリッジプレミアムといい、

分業仮説: 結婚して家事から解放された人は仕事に専念できる
労働意欲仮説: 家計を担うことに責任感が生じて労働意欲があがり、生産性が上がる
シグナル仮説: 結婚したという情報が、信頼できる人であるというシグナルとして機能して、より重要な仕事を任されるようになる
差別仮説: 雇い主が結婚した人を差別的に優遇する
隠れた魅力仮説: リーダーシップ、容貌のように結婚市場でも魅力となる特性が労働市場での生産性を高めている

学歴•年齢•勤続年数が同じ一卵性双生児の兄弟を比較した研究によると、マリッジプレミアムは26%という結果になった。

子供は、将来的な家事•家業の手伝いや、稼ぎ手となった後の金銭的援助を期待するという見方から投資と捉えることもでき、存在自体が親にとっての喜びであるという見方から消費と捉えることもできる。

日本の1990-2010年の国勢調査を用いた研究によると、保育所定員率の上昇は、母親の就業率に影響を与えなかった。これは、三世代同居でみられる祖父母による保育が保育所に置き換わったと解釈されていて、核家族世帯においては、保育所整備が母親の就業を促す効果が確認されている。

育児休業制度には、育児休業給付金と復職保証のそれぞれに対する効果に注目する必要がある。
育児休業給付金は1995年から支給開始され、基本給付金と育児休業給付金あわせて出産前賃金の25%が支給されており、2001年には40%に引き上げられた。
日本の研究によると、この給付率の上昇が女性の就業継続を押し上げたという効果は認められなかった。
これは、休業後に仕事を続けられるような支援(保育園の整備など)が無かったからだと解釈されている。

第9章: 病気, 介護

->力尽きてきたので割愛

第10章: 多様な働き方

->正規/非正規についての章
このテーマに関して他の本で頑張る予定なので割愛

第11章: 感情労働•過剰サービス

CAなどの「おもてなし」を求められる仕事が感情労働だと説明されている。そのような仕事はメンタルヘルスが不調になりやすい。
仕事に遊びの要素を入れるゲーミフィケーションという概念があり、仕事を行う上での心理的負担を軽減する効果がある。
これらの労働に対して、消費者が細やかなサービスを求めすぎているという側面もある。

第12章: 海外で働く, 地方で働く

海外に在留する日本人の総数は約139万人で、このうち長期滞在者(3ヶ月以上の滞在者のうち、いずれは日本に戻るつもりである人々)は、約87万人で全体の約63%である。
海外で働く人に注目すると、企業慣行の違いによって活躍しづらいことに悩む人々が多い。
このような人々の性質に注目すると、勤め先で軋轢を起こすほど、今まで学んできた方法•知識を棄却して学び直しを行なっているほど、主観的に貢献できていると判断する傾向にある。

第13章: 非営利組織, 副業・複業, 起業する

人口減少に伴う人口密度の低下により、一人当たりの行政コストが圧迫されている。
このような背景から、官民いずれも対応できないサービス需要の担い手として非営利組織が期待されている。
ボランティアの活動動機は主に、役に立ちたい、貢献したいという活動自体から効用を得るパターンと、経験•自己成長によって人的資本を高める目的のパターンが存在する。
近年では、企業に勤めながら副業として非営利活動を行う人が増加している。しかし企業側から副業を見ると、過剰労働の危険性や人材流出•技術漏洩の懸念があり、非営利活動で得た知識を本業で活かすといった、企業側のメリットを認識することが求められる。

第14章: 知的機械の労働市場へのインパクト

アメリカの研究では、702職種のうち66%以上の確率でコンピュータに代替可能な職種の人口割合は47%であり、日本では同様の手法で野村総研が49%の雇用が代替可能であると試算した。

技術革新が労働に与える影響を増幅•軽減する要因として

  • 技術(資本)と労働は代替的か補完的か

  • 生産物に対する需要の価格•所得弾力性はどうか

  • 労働供給は弾力的か

が挙げられている。

他にも、機械化による所得の二極化に対してどのように分配するか、という議論や、コンピュータに代替されないような人間が備えるべきスキルは何か、という議論がある。

->イラスト生み出すAIが凄すぎて日本で禁止されたよね。大体の試算では芸術家とかイラストレーターは、代替されにくいって前提だったと思うけど、そういう大前提がひっくり返されるとワクワクしちゃう。


第15章: 失業と貧困

求職者数(失業者)を横軸、求人数(欠員率)を縦軸にとって、両者の関係を書くと右下がりの曲線になる(片方が増加すればもう一方は減るという関係にある)。これをベバリッジ曲線またはUnemplyment-Vacancy rate (UV曲線)と呼ぶ。
ベバリッジ曲線が上方にシフトする場合、つまり求職者数と求人数が同時に増加する場合は、労働市場のマッチング機能が低下しており、失業が構造的であることを示している。

読んだ後

感想

労働経済っぽいテーマを考える場合、大体は大卒正社員ばっかり考えてそれ以外のテーマが抜け落ちがち(自分の場合)。大学進学率が50%くらいだから、大卒正社員自体も全体の半分くらいな気がする。

自分と同じ立場じゃないので、他の重要なテーマに対して興味が薄れがちだけど、この本は網羅的にテーマに対するポイントをおさらいできて良い。
ただ、話が具体的じゃない章とか、途中で疲れたのもありだいぶ端折ってしまった…。