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次世代の学びをデザインする6つの実証プロジェクトを発表

子供たちが不確実性の高い未来に対応し、社会に貢献する力を養うため、文部科学省では「主体的で対話的な深い学び」の重要性を伝えています。この学びは、単なる知識習得ではなく、思考力や自己理解を深め、自律的な学びを育むことを意味しています。

スクールタクトを運営するコードタクトでは、これらの学びの実現に向けて、ICT活用やデータに基づくフィードバックが不可欠だと考えています。そこで、社内の研究部門である「教育総研」では、教育現場の変革に向けて2024年度に実施する6つの実証プロジェクトを発表しました。

児童生徒の学びの質の向上と、効果的な授業運営・学級経営の観点から、これらのプロジェクトの概要と未来の学びの可能性を考えていきます。


教育総研による実証プロジェクト

当社コードタクトでは、社内チームとして教育工学や教育心理学の研究をするメンバーによる教育総研を組織し、当社のビジョンである「個の力をみんなで高め合う学びの場」の創り出すための理論的・実践的研究を行っています。また、それらの研究成果をスクールタクトの機能に反映し、現場の先生と児童生徒の学びを支えるサービスの創出に努めています。

スクールタクトの先進性や、データおよび学術に裏付けられた開発の根幹を担う教育総研は、設立以降多くの研究を重ねてきました。2023年度には、小規模学級での生成AIを活用した授業設計(※1)や、コンセプトマップを使った実践・評価(※2)などを行い、研究成果の一部を、学会や論文での発表を通じ広く公開しています。今回発表したプロジェクトも、これまでの研究をより発展させるために実施されます。

※1 【学会発表】生成AIを活用した見方・考え方を働かせるための授業設計の提案
※2 【実証研究】学習者主体の学びを実施することで、通常の授業よりも理由を説明する力が向上 〜ジグソー法を用いた主体的・対話的で深い学びの実現〜

一人ひとりが自分らしく学ぶ姿を目指して

1.AIと一緒に学ぶプロジェクト

生成AIを活用して、議論の深化や多角的な考えを促す授業設計を行うプロジェクトです。

実証では、生成AIにより作られた多様な意見を取り入れて協働学習を行います。事前事後に児童生徒に行う質問紙の調査から、多様な意見があることでの視点の広がりや議論の深まりの変化を分析します。

多くの学級は、同じ地域に住む同学年の児童生徒で構成され、特に児童生徒数が少ない学級においては、通常の学習環境で多様な意見に触れる機会は限られます。さまざまな視点や考えに触れる機会が増えることで、自分の考えや学び方を理解するメタ認知の育成にもつながることが考えられます。

2.自己調整型の学びプロジェクト

児童生徒が自ら学習を調整し、粘り強く取り組む力「自己調整型の学びのスキル」を可視化するためのプロジェクトです。

実証では、事前の質問紙調査を通じ、児童生徒が自己認識する「学びの自己調整力」を把握します。その後、児童生徒はICTツールを活用し、自己調整型の学習を行います。質問紙調査の分析結果(自己認識)と、児童生徒が学習の中で実際に行った計画に対する進捗や調整の様子(行動ログ)、単元テストの結果などを関連づけて分析し、個々の「自己調整型の学びのスキル」を可視化します。

個人のスキルが可視化により捉えやすくなることで、先生は個別学習や自己調整学習などの際に、適切なタイミングでの指導や支援が行いやすくなると考えられます。

ICTツール(施策版)

3.振り返りAI分析の利用が学習効果に及ぼす影響の検証

2023年にリリースしたスクールタクトの機能「振り返りAI分析(β版)」(※3)の発展に向け、機能の活用による学習効果を測るプロジェクトです。

実証では、特定の単元においてこの機能を集中的に使用し、AIによる振り返りの分析結果と、単元の始めと終わりで取得する成績データを紐づけ分析することで、振り返りの質と学習効果の関係性を検証し、機能の発展につなげていきます。

振り返りAI分析(β版)分析結果画面

※3 振り返りAI分析(β版)とは、スクールタクトの回答欄に入力された振り返りのテキストを、独自開発のAIにより、客観的かつ瞬時に振り返りの5つの観点に分類する機能です。
https://schooltakt.com/reflection-ai/


より効果的な授業運営・学級経営を目指して

1.グループ編成プロジェクト

協働的な学びの質の向上に向けて、児童生徒の特性に応じたグループ編成を提案し、その効果を測定するプロジェクトです。

実証では、「グループや班で学ぶとき、一人ひとりのよさが生きる役割分担を、自分たちで考えて学習を進めることができるか」などを問う質問紙調査の回答をもとに、児童生徒個人の「学びの自己調整力」や「学びの相互調整力」などの特性を把握します。その後、特性に応じ編成されたグループで協働的な学びを行い、提案したグループ編成が、協働的な学びの質の観点から有効であるか、定性的な調査から検証していきます。

2.意見類似度マップの実装に向けた機能・UIのヒヤリング

複数の児童生徒の意見をAIが分析し、意見の近さ・遠さをマップ状に可視化する「意見類似度マップ」(※4)の機能実装に向けたプロジェクトです。

主体的・対話的で深い学びの観点から、児童生徒が能動的に意見を出し、多様な視点の中で学習が行える環境を、意見類似度マップをもとに効果的につくり出していくことが目的です。現機能の評価や改善点について、実証に参加する先生にヒヤリングを行い、先生がデータにもとづく効果的な指名や、グループ編成がしやすくなるよう改善を図っていきます。

意見類似度マップ

※4 意見類似度マップは、テキストデータを分析し、児童生徒の意見の近さを可視化して作られるものです。自分の考えに近い人、遠い人を一目瞭然で知ることができます。

3.学級内の人間関係を可視化する実装(コミュニティ分析)

児童生徒のいじめや不登校の早期対応を目指し、行動ログを用いて学級内の人間関係を可視化するプロジェクトです。

スクールタクト上で学級内の児童生徒間の交流(他者のキャンバスを見る、「いいね」をする、コメントを送るなど)が起こる授業や活動から行動ログを取得し、学級の人間関係を表すコミュニティグラフを作成します。学級担任が日々の中で捉える人間関係と照らし合わせ、その有効性を検証します。データの側面からいじめや不登校の兆候を早期につかむ手立てとなります。

まとめ

AIやデータを活用した本プロジェクトの取り組みが、児童生徒の学びの質の深化や、先生のより的確な指導・支援につながる可能性を秘めていることが見えたかと思います。

教育総研は、子供たちがより自分らしく学べる環境を目指し、実証に参加される先生方と共にプロジェクトをデザインしていきます。研究成果については、今後またスクールタクト公式noteなどでご紹介します。

実証プロジェクトの詳細については、以下の動画でご覧いただくことができます。ぜひご覧ください。



それではまた。
学びとマナビが、ひびき合う。
スクールタクトでした。

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