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新しい生活様式の中で、ルールを守った給食時間

(※2020年度取材記事です。)

毎朝の健康観察
 朝8時、校庭に張られたテントで、登校する児童を迎えます。健康カードに次々と判を押してチェックする先生方。昨年6月の学校再開から続けている豊島区立駒込小学校(児童数467名・2020年度)の新たな日常です。

校庭の一角にあるテントで、登校してきた全児童の健康カードを3名の先生がチェックする。

 1月14日は、同校の朝会で毎年行われる女子栄養大学学生による食育指導が予定されていましたが、年明け2度目の緊急事態宣言発令により中止に。取材も続行すべきか悩んでいたところ、永野祥夫校長(当時)が「給食時間の感染対策や栄養士の仕事ぶりを見てください」とお声掛けくださり、取材者の感染予防を万全にした上で、健康観察から給食時間までお邪魔しました。
 朝7時半に出勤して健康観察を手伝っていたのは栄養士の大川原敬子先生です。音楽と図工の先生と共に、慣れた様子で全校児童に対応します。外のテントにじっと座っていると、足元から底冷えする寒さ。健康カードを忘れる子がいると、その場で体温を計測して用紙に記入、保健室へ直行させて、保護者に確認した上で登校させます。夏の暑い日も雨の日も毎日…と考えると、大変な作業ですが、マスクからのぞく先生の眼差しは温かく、子どもたち一人ひとりに気を配っている様子が伝わってきました。

2020年8月は感染対策のため、2食器の給食を提供。「あぶたま丼、夏野菜のみそ汁、牛乳」の献立

2食器給食への戸惑い
 同校の給食は自校式(学校内で調理する方式)で、民間委託の調理員(正規3名、パート3名)で約500食を提供しています。昨年度6月の分散登校中の給食は、午前登校の児童分のみ提供、配膳は教職員が担当し、手間を省くために2食器だけの給食となりました。区内は各校自校式で献立内容も違いますが、感染対策としての提供方法は区の方針に従います。2食器の給食は通常授業になってからも続き、7月からは10日間ごとに同じメニューを繰り返す「サイクルメニュー」の実施となりました。など日本古来のさまざまな食材、季節感、伝統的な行事を大切にした上で、「楽しい」給食を経験させたい、と話します。

蛇口は1個置きに使えないように貼り紙をし、手洗いの手順も掲示。また、牛乳のイラストに×印を掲示した手洗い場では、食物アレルギー児童のために牛乳パックを洗わない決まりになっている。


ブレない感染対策
 給食時間になりました。手洗い場では、子どもたちが距離を取って丁寧に手を洗います。1年生以外は、2学期後半から給食当番が配膳するようになりました。ほかの児童は密にならないように、担任の指示で並び、給食を取っていきます。「いただきます」をした後、どのクラスも「シーン」と前を向いて食事をします。カメラを向けているから、というわけでもなく、このルールに従う日常に慣れている、そういう雰囲気です。

サッカーで使われるグリーン、イエロー、レッドカードを使い、声掛けの代わりにコミュニケーションを取る校長先生。

 そこへ、エプロンと使い捨て手袋を着けた永野校長が現れました。大柄で行動が目立つせいか、子どもたちが目で追います。「私が行くと子どもがしゃべるから、担任が来ないでと言うんです」と苦笑い。それでも、サッカーで使うグリーン、イエロー、レッドカードを使うなど、工夫して見回りをされていました。

 ソメイヨシノ発祥の地である同校は、創立104年の伝統ある小学校です。地域との結び付きも強く、お年寄りとのふれあい給食など特色ある行事も多いですが、昨年度はほとんど実施できませんでした。しかし、2学期に全児童に導入された1人1台タブレットや、オンライン配信等ICTを活用して、特色ある教育活動を継続し、子どもたちが楽しめる行事を工夫しようと、学校全体で取り組んでいます。

 感染拡大が続く東京都内の学校で教育活動を続けるには、感染対策は徹底しなければなりません。「オールスタッフで、決めたことは必ず実行する!」とのスローガンで、給食時間も徹底する教職員のブレない姿勢、それが子どもたちにも浸透しています。新たな日常を見せていただきました。     (編集部・望月章子)

(月刊「学校給食」2021年5月号特集2より)