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【KAORIUM JOURNAL #06】「まさかうちの子が手をあげて発言するなんて!」人生100年時代、香りによる多様性をもたらす感性教育とは

「香りと言葉」が導く超感覚を追求する KAORIUM JOURNAL。セントマティック代表 栗栖 俊治が、香り × 言葉がもたらす未来について様々なスペシャリストと対談しその様子をお届けします。

人生100年時代。多くの人が長生きする時代の中、変化のスピードは早くなり、もはや10年後の未来すら想像することは難しくなってきました。本を読む時代から、動画を見る時代へ。リアルで友だちと会う時代から、オンラインで会う時代へ。これからの時代に求められるのは、変化に柔軟に対応し、違いを認め合い、それを強みに変えていく力。次世代の子供たちが「正解がないこと」を学び、社会の中で活躍していくための感性教育としての KAORIUM 体験の有効性や、コロナ禍で急速に一般化した「オンライン」の場が持つ、リアルの場にはない「多様性」の育み方。さらには、教育をファシリテートする立場だからこそ感じる感性教育の難しさと可能性などを、KAORIUM感性教育プログラムの開発から携わる「ミライLABO」代表 白井 智子、そしてビジネスプロデューサー谷中 修吾との三者対談より掘り下げていきます。

「KAORIUM(カオリウム)」とは

五感の中でも最も未知な領域であり、新たな発見や市場創出が期待されている「嗅覚」。そのポテンシャルを追求し、嗅覚を通じた心の豊かさを提供するために「香り」と「言葉」を紐づけ相互に変換するAI型システム「 KAORIUM (カオリウム)」が開発されました。香りから言葉を連想し、言葉から香りを想像することは、脳の活性化に繋がるだけでなく、私たちのまだ見ぬ感性に気づかせてくれます。
そんなKAORIUM体験は、感性教育、飲食体験、購買体験など様々な分野に新しいビジネスチャンスを生み、そして人々の感受性に働きかけ、日々をより豊かなものにする可能性があります。

「この手があったか!」どこもやっていなかった香りによる感性教育

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白井 KAORIUMに初めて出会った時に、「この手があったか!」と思ったんです。感性教育の中で、嗅覚に目をつけるっていうのは、どこもやってないことだなって思いました。日本の教育の課題は、「次世代で生き残るためにいかに多様性を育むか」というところだと思うんですけど、学校では16年間も「正解」のあるものを教えこまされ続けているんです。「正解」がある教育を何年も受けて、社会に出て初めて「え、答えがないんですか」とギャップに衝撃を受ける。

栗栖 なるほど。たしかに学生時代にはテストがあって、解答にマル・バツがつきますが、社会に出ると一つひとつの仕事や課題にマル・バツがつかないですし、様々な状況や考え方、周囲の人々との関わりの中で答えも変わってきますよね。

白井 私が運営しているミライLABOでは、0〜6歳までは感性教育、そして6歳以上には、アクティブラーニングで課題を解決していくという教育をやっています。その中で「多様性」や「正解がないこと」を、どう子供たちに伝えていけるかを日々考えていまして、そんな時に、「嗅覚を使えばできるじゃん」っていうのが、私の中で一番最初の印象でした。

栗栖 光栄です。僕たちも教育分野で実装するためには現場を知っているパートナーさんが必要だと思っていて。その時に、ミライLABOさんが、子供向けの感性教育をやっていらっしゃっていて、絵や音楽を言葉にしていたりして、ぜひ一緒にやらせていただきたいと、お声がけさせていただきました。

白井 ありがとうございます。私たちもいつもたくさんのことを学ばせていただいています。

栗栖 谷中さんには、KAORIUMの可能性の視野を広げてもらいました。KAORIUMのプロトタイプが完成し、これをどう事業化するかを考えていた時期に、漠然と「香りのマーケティングの領域かな」と思っていたのですが、谷中さんに体験していただいた時に「それだけじゃないよね」って言っていただきました。

谷中 私はビジネスプロデューサーとして、今まで3桁以上の事業開発に関わってきました。その実務経験を活かしたビジネス教育では、大前研一さんが学長を務めるBBT大学で、経営学部と大学院MBAの教授を兼務しています。ちょうど「ビジネス」と「教育」をまたぐ領域にいるのですが、その立場から見ても、香りのポテンシャルってすごいと思ったんです。香りによる感性教育は、間違いなく、その一つ。それに、個人的な体験で言えば、インドへ行ったとき、現地の独特な香りが強烈に印象に残ったんですが、普段の生活で“インドっぽい”香りを嗅いだ瞬間、当時の現場にタイムスリップします。香りが人に与えるインパクトはすごい。KAORIUMは、そこにITを加えるというのが非常に面白いなと思いました。

栗栖 ブレストしていただいたアイデアの中に、これはすごいなってのもありました。日本人が思わず笑っちゃうようなネタで、羽田空港のトイレにKAORIUMを設置しましょうってアイデアをいただいたり(笑)。真面目な領域だけで縛るのではなく、突き抜けた視点で視野を広げていただいたなって思ってます。

谷中 普段、新しい事業を開発するとき、単に正統派のビジネスアイデアではなくて、一見クレイジーとも言える“突き抜けたアイデア”を生み出すことを大切にしています。KAORIUMは、まさに“突き抜けたアイデア”を組み合わせることで、ポテンシャルを発揮する。特に注目しているのは、感性を言語化するという部分ですね。体感したことを言葉にすることで、脳内に新しい回路が開かれる。その結果、文字通り、見える世界の景色が変わります。

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白井 そこが今、感性教育の現場に求められていることだと思います。例えば絵画だと、上手に描けた子と描けなかった子の差が、どうしても視覚として見えてしまう。でも、香りの感じ方はみんな違っていて、さらに目に見えないもの。さらにその違いを共有するのに言葉が必要になる。言葉を生み出そうとする行為が加わり、その過程に感性や楽しさが生まれるんだと思うんです。感性教育の中で、嗅覚に目をつけるっていうのは、どこもやってない。どんどん可能性が広がっていくと思います。

ほんのちょっとの時間でも効果を一気に引き出せる
感性教育における多様性を伝えるフォーマット

白井 今回セントマティックさんとご一緒させていただきたいと思ったのは、ミライLABOだけでは届けられない、もっと広い範囲の子供たちに届けてあげられるものがつくれるという部分です。そこですごく意識したいのが、ファシリテートする方のこれまでのセンスに縛られないようにすること。というのもファシリテートする先生自体の経験、例えばどんな本を読んできたかなどが、生徒さんにそのまま影響するんです。学校ではどの先生のクラスになるかが、その子の人生を決めてしまうリスクがあるんです。

谷中 ものすごくわかります。そこで、感性教育の手法を広く伝えるために、どのファシリテーターでも同じ効果を発揮できるような「型」が必要。フォーマットがあると、多くの人がファシリテーターの役割を担うことができますよね。ですが、感性そのものは「型」にはめるものではない。そもそも答えがない、多様なものです。つまり、感性教育では、多様性を生み出すフォーマットが必要なわけです。

白井 そうなんです。感性という正解のないものを教育としてやるには、ファシリテートする側がどういうスタンスを持っているか。みんな違ってて当たり前、多様性であることが素晴らしいという部分など、腑に落ちさせるフォーマットがあるといいなと思います。KAORIUM体験は正解を求めない、人と違って当たり前、っていうことがわかりやすく体験できる。まさに感性教育における多様性を伝えるフォーマットのような存在だと思います。

栗栖 面白いですね。感性教育における多様性を伝えるフォーマット。そういった意味でも香りと感性教育は相性がいいですね。同じ香りでも一人ひとりの感じ方が違うのは、生まれ持った遺伝子レベル、その後の人生の中で培われた経験に由来します。僕が「甘い匂い」って言っても、他の人は「これ葉っぱのような苦い匂いだよ」って言うこともありますし。香りの感覚自体、正解のないもので、ダイバーシティそのもの。

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谷中 例えば、視覚では、他者が見ているものを確認しやすい。しかし、嗅覚では、他者の感覚を確認しづらいので、想像するしかない。つまり、曖昧になる。しかし、KAORIUMでは、それを“見える化”しているわけです。だからこそ、他の人の感じ方について、「そういう見方があるんだ」という気づきが大きくなるのだと思います。したがって、見える世界の景色が変わる。そうなると、他者の見方を取り入れて、世界を表現できるようになる。これは、すごいことです。

白井 子供ってもともと感性の塊なので、視覚だったり聴覚だったり既存の感性教育だけではなく、KAORIUM体験ならもっともっと広げられる。

谷中 しかも、ほんのちょっとの時間でも、一気に効果を引き出せるのがすごいですね。それを子供の時から経験できるというのは、とても素晴らしいことだと思います。

動画に慣れすぎた子供たちの文章に対する苦手意識!
自己肯定感を高めるKAORIUM体験で解決

白井 お母さんの悩み第一位は「子供が作文が書けない」ことなんです。今の若い世代はデジタルネイティブで、動画の方が頭に入ってきやすい。本も読まなくなってきているし、メッセージもスタンプで送りあったりしている。文章化することに慣れておらず、苦手意識を持っています。

栗栖 なるほど。

白井 読書感想文などには正解が求められたり、一生懸命書いたものでもバツをつけられてしまい、自己肯定感が削がれてしまい「表現するのが怖い」と思っている。

谷中 私はコピーライターでもあるのですが、実は書き方のコツを掴むと、どんどん言葉が出てくるというメカニズムがあると思っています。端的に表現すると、感性を言語化する「切り口」のようなものです。その「切り口」に気づく、すなわち、感性と言語をつなぐ思考回路がひらかれると、作文でも感想文でもスラスラ書ける。KAORIUMの体験は、感性を言語化する「切り口」を学ぶ機会になっていて、しかも香りの実体験と紐づいているので学びが深い。

白井 そうなんです。ただ感じるだけだったら、頭の中で終わってしまう。だから言語化してアウトプットするきっかけづくりとしてKAORIUM体験は素敵なんです。香りから言葉を引き出していく段階で気をつけたことは、パターン化するけど、パターンのその先のアウトプットにどれだけ幅を効かせられるか。例えば「レモンの香りからどう感じるか?」だけではなく、レモンから何かに例えたり、過去に遡ったり、未来を想像してみたりと、あらゆる方向に膨らましやすい。そうすると香りから言葉がどんどん溢れる。

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谷中 嗅覚には正解がない。だから、すべての香り体験が学びになる。しかも、香りと言葉のワークショップでは、自分の学びだけでなく、他の人の学びも見ることができる。そうすると、感性と言語をつなぐ思考回路が刺激されて、脳内に溢れる感性言語のボキャブラリーが加速度的に増えていくと思います。

栗栖 3月に実施した香りと言葉のオンライン講座( 「香り完成教育プログラム」開催レポート )では、「君は谷川 俊太郎か!」と言いたくなるような想像力溢れる素晴らしい表現の文章が、参加した小学生から出てきたことに、すごくびっくりしたのですが、子供たちの持っている感性を言葉で引き出すことができたら、文章ができることのワクワク感、そして出来上がった文章を見てほしいっていうワクワク感の両方を味わえる。

白井 3月オンライン講座は、どんどん言葉が出てきた。子供たちは止まらなくなってしまって。たくさんの保護者の方から「まさかうちの子が手をあげて発言するとは思わなかった」という声をたくさんいただいたんです。普段手を上げないようなお子さんでも積極的に表現することを楽しんでくれたんです。

深堀りするっていうKAORIUMならではのアクション、それをした時に、子供たちが伝えたくてしょうがない、みんな手をあげたくなっちゃう。「はい!はい!」っていう空間になったんですね。子供たちが自分の考えを発言する、誰かと共有するのは楽しいという経験をしてくれて、そのおかげで私たちが計り知れない才能に溢れた作品がどんどん出てきた。

栗栖 人それぞれの感性の香りからできた言葉だから、「それは違うよ」という否定ができなくて、褒め合うことができることで、子供たちの成長機会にも繋がる。

白井 褒め合えることで自己肯定感が高まり、子供が自らアウトプットしてもいい、表現することがたのしいっていう心理的安全性とか、恐怖を抱かせないってところを設計していける。それがKAORIUM体験の持つポテンシャルだなと思います。

栗栖 体験を通して、子供たちが積極的になっていく。そうして「文章を作ることってこんなに楽しいんだ」と知ってもらえたら嬉しいですね。

白井 はい。これからAIが発達していく中で、人間しか感じ取ることのできない感性の部分を言語化できるというのは確実に強みになります。

JAXAでも必須!強いチームビルディングやワクワクを生み出す対話をいとも簡単に導く香りと言葉

白井 「桃太郎は本当に正義なのか」っていう授業をしていて、「鬼は悪者だ」と思うけれど、「桃太郎が鬼を叩き、キジが目を突き、犬は足を噛む」っていうのは「鬼がやった悪行」と何が違うんですか?って、子供たちに考えてもらったんです。「鬼だからやっつけていいの?」「鬼にも子供がいたらどうする?」っていうと、子供たちもハッと気づく。正義って何だろう?というのを話し合って、考えるんです。ゴールはどうなったかというと、「言葉で解決しよう」そして、「暴力はダメだ」だったんですよね。

栗栖 それは面白いですね。

白井 また少し別のお話ですが、JAXAさんと何度か教育のイベントをやらせてもらった時に、「組織が多様でないと、宇宙でのミッションは達成できない」と言うんです。なぜかと言うと、一つの物事が起きた時に、同じことを経験して、同じことに興味がある人だと、一つの側面しか見えないから。その他の多くの可能性に気づくことができない。だから、強い組織になるためには、いろんな分野への興味や考え方を持っている人たちが集まるのが大切ということなんです。

栗栖 結局一人にできることには限界があるということですよね。多様性があるからこそ強いチームができるというのは、そういうことなのかなって思います。

谷中 一人ひとりの「考え方が違って当たり前」という相互理解を深めるという観点では、KAORIUMは、会社のチームビルディングや企業研修においても重要な役割を果たしそうです。

白井 チームビルディングの中で、メンバーの一人ひとりが違うということを当たり前に理解した上で、いかにその違いを掛け算していけるかということを念頭においているリーダーが、これから必要なリーダーかなと思います。

谷中 同時に、メンバーの意見が出やすくなるように、ファシリテーションの役割を担うリーダーが、ワクワクする雰囲気づくりを体現できるかが大事ですよね。私はビジネス教育をしていますが、根底にあるのは、人の持ち味、特性を引き出したいという想い。その人が何に関心があって、どのように世界を見ていて、何に一番ワクワクしているのかを引き出す対話を重視しています。答えのない時代の中で、新しいビジネスをつくっていく上では、チームメンバーのワクワク感から出発するという価値創造型のアプローチが重要なんです。

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白井 教育で大事にしているところも同じで、いろんなツールを子供に伝える。そこから何を選び取っていくかは、もともと持っているワクワク感が一人ひとり違うんですよね。理科にワクワクする子もいれば、図工だったり、国語だったりする。子供が自分らしさに導かれる環境や場づくりをするのが大人の仕事。日本が一生懸命「多様性のある社会をつくりましょう」と掲げてますけど、それをいとも簡単にやってくれるのが、目に見えない香りっていうのをすごく感じてます。

栗栖 香りの感じ方はみんな違って当たり前だし、どれが正解で、どれが間違っているとかが存在し得ない。KAORIUM体験をみんなでやると、一人ひとりの素の違いをお互いが楽しめる。十人十色でワクワクする「対話」が生まれてアイスブレイクのような効果があるんです。香りを使っているのがなぜいいかというと、「何を言ってもいいんだ」っていう雰囲気をつくりやすい。だから、余計に自分を解放しやすいっていう面で、相性がいいのかなと思います。

白井 KAORIUMの体験を通すと、どうしてそう思ったのっていう対話が自然と生まれ、いい議論につながると感じます。

谷中 幼少期から、香りと言葉による感性教育を経験できるようになると、日々の生活を楽しんで生きる人たちが増えていく。それが、ある一定の数に達した時に、一気に社会が変わってくると思う。いろんな人と繋がりやすい時代なので、「一緒にやってみたい!」という人たちが世界中から集まって、みんなで楽しみながらポジティブな社会をつくっていけたら最高ですね。

オンラインという「サードプレイス」が及ぼす新しい可能性

谷中 コロナ禍になって、オンライン会議システムの活用が、急速に一般化しましたよね。テクノロジーの進化によって、物理的な制約で会えない人と会えるというのは、すごくいい環境だと思います。普段会うことのできない人たちにも、様々な機会を届けられる。しかも、みんなで共通の体験ができる。社会全体でオンラインミーティング特有のリテラシーが高まることで、これからさらに広がっていきそうです。

白井 オンラインでいくつものサードプレイスのような自分の居場所を持てるっていうのが、次世代の子供たちにポテンシャルがすごいのを感じます。普段とは全く関係ないコミュニティの中に自分の身を置ける。学校だと、グループ分けやキャラ設定をされてしまいます。オンラインだと、住んでいる環境も違う人たちとのやりとりになるから、クラスという狭い環境の中で誰かと比較されたりしていた「自分というキャラクター」をリセットできる。

谷中 私がビジネス教育を行なっているBBT大学は「100%オンライン」という環境なんですけど、まさに同じことが言えると思います。業界、業種、役職、年齢などバラバラ。住んでいる場所も、東京、地方、海外に散らばっています。立場や環境に関係なく、フラットにディスカッションできるのがオンラインの良さですよね。

白井 子供にとっては、高校までの環境は、生まれた場所によってある程度決まる。よく大学デビューという言葉を聞きますが、そのタイミングで自らの選択で環境を選んで、新しい自分になれる。オンラインという環境なら、子供でも輝ける場をいくつでも持てる。

栗栖 3月の香りと言葉のオンライン講座( 「香り完成教育プログラム」開催レポート )にも、さらに広がる可能性を期待していまして、今年の夏には花の香りをテーマにした「 KAORIUM クリエイティブアワード 」を開催するんです。コロナにより屋外で今までのようなリフレッシュの仕方ができない状況において、家に花があることの幸せを感じ、そして花の香りを楽しんでいただくってのすごくいいんじゃないかなと思ったんですよね。withコロナの中で、オンラインだからこそ伝えられる、新しいライフスタイルとしてご提案するようなイベントに仕立てていきたいな、という風に思っております。

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人生100年時代におけるこれからの未来の子供の教育

白井 今、100年時代と言われていて、2007年以降に生まれた子供たちは、半分以上が100歳以上まで生きる。また世の中の変化のスピードはどんどん早くなっていく。きっと10年後には全く今と違う未知の世の中になっていると思います。答えがない中で変化に対応できるかというのが非常に大事で、教育はそこがポイントになる。一つの正解だけをみんなが求めて向かってしまうのは、リスクでしかない。

谷中 ビジネス界ではこれまで、物事をロジカルに考えるという管理型経営の教育が主流でした。もちろん、それはそれで大事ですが、管理型経営に寄りすぎたことで、コロナ禍において社会のひずみが顕著になった。まさに様々な社会システムの見直しが求められるタイミングで、そのバランスを取り戻す時に、感性教育が重要になると思います。素直に自分のワクワクに従って、直感的に行動していいんだという思考回路をひらく。ワクワクにフォーカスするようになると、純粋に楽しいからやるんだという行動様式になる。そうなると、ビジネス界が変わり、社会が変わっていく。香りと言葉を繋ぐ感性教育が、社会変革のトリガーになるというのは、とっても面白いですよね。

白井 そうですね。しかもこれからの時代は、「世界中の人が同じ経験をして、同じ恐怖を味わい、でも同じ未来にそれでも向かっていくんだ」っていうことを経験した子供たちがつくっていくもの。また、大人の私たちがこれまで作ってきた社会ではない「未知なる未来」になっていく中で、子供に伝えていけるのか?学校教育以外のところで、子供たちの未来をよりよくするために何ができるんだろう?というところ。学校に通う時間は1200時間、お家で過ごす時間は1600時間もあるんです。学校教育とは全く別の観点で、子供たちの良さを伸ばしていくというところに目を向けてもらいたい。

谷中 そもそも教育の定義は、「どう生きるか」という思想哲学によって大きく変わりますよね。私自身は、人はワクワクに従って生きるとき、その人の持ち味が引き出されると思っています。なので、教育の本質とは、ワクワクのスイッチをONにすること。自分のワクワクに気づいて行動すると、自然に成果が出る。成果が出ると、周りからも認められる。周りから認められると、多種多様な人のあり方を認められるようになる。そして、ライフスタイルそのものがよくなっていく。では、ワクワクのスイッチをONにする教育の鍵となるのは何なのか?それが、感性への働きかけだと思います。その引き金の一つがKAORIUMなんじゃないかと思います。

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栗栖 なるほど、今思い出したのですが、KAORIUMのコンセプトをシリコンバレーで発表した時に、「今まで誰もやってきていない感性をデジタイズしようとしてる」って言われました。IT事業領域におけるビジネスの勝ち筋の1つとしてデジタイズされていなかったものをデジタイズすること、と言われており、例えば Amazonはショッピングをデジタイズしたと、言われたんです。感じ方は一人ひとり違うし、国によっても違うし、文化によっても違う。その感じ方の違いも感性感覚と言葉を紐付けデジタイズしたら、もっと面白いものが出来るんじゃないかなと。夢が広がります。

谷中 これを日本から発信するというのが、また面白いですよね。日本の歴史の中で1万年以上を占める縄文時代の研究もしているのですが、縄文社会で人は自然と共存共生していた。自然の声を聞いていた。自然の香りからも、極めて豊かな情報を得ていたと推察されます。言わば、超感覚。日本は、感性の国。

白井 世界一オノマトペが多いのは日本ですし、八百万の神様が自然の中にいる中で自然と共形成されてきた文化や言語は日本人しかない感性。ここから始まっていくって意味はすごくあるかなと思います。

プロフィール

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谷中 修吾
ビジネスプロデューサー/クリエイティブディレクター
BBT大学 グローバル経営学科長・教授
BBT大学大学院MBA 教授

静岡県湖西市出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修了。
3歳からマリンバ演奏で舞台経験を重ね、クリエイターとして様々な創作表現活動に従事する。外資・戦略コンサルティングファーム Booz Allen Hamilton にて、政府機関・民間企業の戦略立案・実行支援を経て現職。
マーケティング技法を駆使した事業開発を専門とし、地方創生まちづくりのビジネスデザインを数多く手がける。国内最大級の地方創生イノベータープラットフォーム「INSPIRE」を立ち上げ、超絶まちづくりの集合知を社会にシェアする取組を展開。内閣府「地方創生カレッジ」講師を務め、受講者満足度No.1を獲得。環境省「グッドライフアワード」総合プロデューサー、東京都「東京ベイエリアビジョン」官民連携チームメンバーなどを歴任。世界30ヶ国を遍歴し、国内外の地域創生に専門知見を持つ。
ビジネス・ブレークスルー大学(BBT大学)では、マーケティング/スタートアップ系科目の教鞭を執る。

オフィシャルweb: https://www.shugo-yanaka.com/



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白井 智子
株式会社ミライLABO 代表取締役

「世界を、もっとカラフルに。」をミッションに掲げ2016年、株式会社ミライLABO創業。渋谷区神宮前にて感性教育を大切にする保育所「MIRAI LABO KIDS」と、小学生向けSDGs教育とアントレプレナーシップ教育「コドモクリエイターズインク」を経営。また、法人向け教育コンテンツの開発やCSR、CSVを軸としたブランディングプロデュース等も行っている。
5年間でリアルで約3000人、オンラインで約3500人のこどもたちに「生きるチカラ」を育てるカリキュラムを実施している。

オフィシャルweb: http://www.mirai-labo8.com/


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栗栖 俊治
SCENTMATIC株式会社 代表取締役

慶応義塾大学大学院を卒業後、NTTドコモにて10年間、携帯電話やスマートフォン向け新サービス・新機能の企画開発に従事し、iコンシェル、しゃべってコンシェル、音声認識機能、GPS機能等のプロジェクトリーダーを担当。
「最高のUXづくり」を徹底して目指した「しゃべってコンシェル」ではグッドデザイン賞ベスト100・未来づくりデザイン賞を受賞。
2015年より3年間、NTTドコモ・ベンチャーズ シリコンバレー支店へ出向。数々のシリコンバレースタートアップを発掘し、NTTドコモ本社事業部門とスタートアップとの協業実現や出資に成功。
2018年、日本へ帰国。2019年11月 SCENTMATIC株式会社を立ち上げ、現在に至る。

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