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エンタメの香り演出SceneryScentの世界観—私の原体験とその影響—

こんにちは。
香り演出家、郡 香苗です。

このnoteでは、香りの演出ウラ話、香りを仕事にするためにやったこと・やらなかったこと、私が最近気になっていることなどをお伝えしています。

実は来年、SceneryScentは海外進出いたします!
いまは事業のかたわら、下準備を粛々と進めています。

プライベートでは、先日数年ぶりに第二の故郷に行ってきましたので原体験の話を。
このnoteを書くために調べてみたら、最後に訪れたのは2011年でした。もう13年も前だったとは…。

私は、2010年にアロマセラピストとしてアロマトリートメントサロンを開業しました。お客様に1対1で癒しを提供するサロンです(ちなみに出身はライブラナチュテラピー。今では会長になられている林先生にもお世話になりました)。

その後香り演出家として事業をシフトさせたきっかけについては、過去の記事『エンタテインメントの世界へ。アロマセラピストだった私を「香り演出家」に導いてくれた、“特殊効果演出”の師匠のはなし』で書きましたが、今回はもっと昔、ずっと私の根底にある原体験をお伝えすることで当社SceneryScentの香り作りや事業の根幹を探ってみたいと思います。

私は、物心がついた少しあと幼稚園あたりから小学高学年ころまでほぼ毎年、母の実家である秋田県能代市の祖父母の家に一人で飛行機に乗って行き来していました。
小さな子どもがひとりで飛行機?!と思われるかもしれませんが、お子様一人で飛行機に乗る際ANAのチャイルドサポートサービス(今はANAジュニアパイロットというそうです)にいつもお世話になったおかげでとっても快適だった覚えがあります。


天空の不夜城

冬の雪深い時期にも行きましたが、よく行った覚えがあるのは7月末~8月に掛けての1、2週間。毎年8月一週目あたりに行われる能代七夕というお祭りに参加するために、この時期に招いてくれました。

能代七夕は、当時は竿灯まつりや青森のねぶた祭りほど有名ではなかったのですが、一気に知られたのは2013年に約1世紀の時を超えて復活した「天空の不夜城」がきっかけです。2022年末には紅白歌合戦に登場したそうですね(見てなかった)。

能代七夕2024-天空の不夜城-

灯籠が非常に大きく、豪華できらびやかな装飾に目を奪われてしまうのですが、私は小さな頃からなんども聴いているこの哀愁がある祭り囃子、他のお祭りでは聴いたことない特徴があるこの音色が、心をぎゅっと掴んで「エモい」のです。
参考:能代役七夕

一方私が育った大阪では、夏祭りと言えば河内音頭と花火大会。
大きな灯篭、祭り囃子、盆踊り、花火大会・・・
私のなかでの「夏祭り」は、今でも東北の祭りと関西の祭りがミックスされていて、豪華でにぎやか、でも一瞬で終わってしまう儚くて切ないものというイメージです。

原体験から作られた香り

香りを作る「調香」を仕事にする!と強く思うようになったのは、2015年「AEAJイメージフレグランスコンテスト」で佳作入選したことがきっかけでした。
このコンテストは毎年、全国各地の1つの地をテーマとしてイメージした香りの創作を通じて、調香の魅力を広めていくことを目的としたフレグランスを作るコンテストで、私が応募した2015年のテーマ地は徳島でした。
※コンテストは2020年が最後だったようです。

徳島の香りと聞いて、自分の作品のコンセプトは迷わず「阿波踊り」にしようと考えたのは幼い頃からの夏祭りの風景が頭の中にあったから。

作品のタイトルは『夢の跡』。
作品の説明にはこんなコメントを添えました。

盛夏。
瀬戸内からの海風に乗ってあちこちで聞こえ始める鳴り物、高まる期待と憧れ。
祭りの喧騒
白熱する空気
一体となる情熱
乱舞する陶酔感
そして極限まで高まった興奮のあとに残る祭りのあとの侘しさと切なさ。
熱い阿波おどりの記憶をすべてそっと香りにしまい込んだ。
『夏草や 兵どもが 夢の跡』
真夏の夜の夢は覚めたとしても、興奮冷めやらぬ香りの記憶はこころの奥深くに落ちていつまでも残り続ける。

今思えば、阿波踊りというより夏祭りの儚さをイメージした香りとコメントですね。だから佳作だったのかも!
この一時的な喪失感の心理状態、ロス感のことを「祭りのあと症候群」と呼ぶそうです。

ちなみに、このコンテストで大賞を獲られた女性がいま当社専属調香師として活躍してくれています。

香り作りのこだわり

今から10年前、アロマサロンを開業していた頃に書いていたブログ記事に「香りの空間アート創りで私がこだわるところ」というタイトルを見つけました。

香りの空間アート創りで私がこだわるところは、
「個性があること」
それと同時に真逆のようですが、
「普遍性があること」。

「香りの思い出」は心の奥底に記憶され、その記憶は無意識になって私たちが日常的に感じる感情となって表れます。

言葉にできない気持ち
表現できないような気持ち
魂が震えるような気持ち
感動
嬉しさ
悲しさ
楽しさ
あこがれ
切なさ
そして怒り
その空間にいる人々がみんな同じ香りを鼻で感じても、想い起こされる感情はみんな違う。それが個性。

それを踏まえて香りを創るのと、独創的に「私が良いと思う香り」を創るのとではまったく違うと考えています。

「自分が好きなように創りあげた世界観を、解ってもらえる人にだけ解ってもらえればいい。」というアーティストさんもいると思います。それはそれで良いのですが・・・

嗅覚は無視することができません。
絵や写真が嫌なら目を閉じればいい。
音が嫌なら耳を塞げばいい。

でも匂いだけは、鼻をつまんでも気分が悪くなってしまうものです。
なので、けっして独りよがりではダメなものだと思っています。
それが普遍性。

匂いは、古い記憶、それにまつわる感情などを嗅いだ一瞬で簡単に呼び覚ますことができるモノでもあります。

『香りで癒やすこと』はアロマセラピストの役割です。
その空間にいる人たち一人ひとりの世界が開くように。
想い起こされる感情が表出されて浄化できるように。
そんな願いを込めて香りを創りました。

ああ10年前も今もまったく変わってないなと、ホッとしたような気持ちです。私はそれからはずっとアート作品として香りを創り続けてきたのだと思います。

それが香水でもなく、空間デザインとしての香りでもなく、エンタメのステージ演出としてその作品を活用できる「場」が与えられました。

その過程で実は、もう一つ重要な原体験があるのですがそれはまた今度。

別れの寂しさ

なんだかんだ母方の祖父母っ子だった私は、祖父母の家がある能代市が大好きでしたが、夏の短い帰省が終わって、大阪に帰らなければいけない別れが必ず訪れます。

幼いころの「また来年」はどんなに気の遠いハナシだったか。
帰るのが嫌で嫌で、前日からそれはとても憂鬱だった覚えがあります。毎年そんな別れを繰り返しているうちに、祭り囃子の音色と祖父母の家の匂いが記憶に染み着いていました。

大阪に帰り、どんなに高い建物から遠くを見渡しても祖父母の家は見えない切なさ、この別れの寂しさや恋しさが、「SceneryScent=風景の香り」作りにつながっています。

いまはもう祖父母も亡くなり、母の実家だった家も空き家になっています。幼い私が夏の間に通った懐かしい店ももうありませんが、過疎化は進んでい
ますが懐かしい風景はまだありました。

幼いころの短い時期の記憶ですがいつまでも暖かく心に響く、確かな第二の故郷です。

夢と感動の記憶を作る

懐かしい香りを嗅ぐと一瞬でその当時がフラッシュバックしてきます。
嗅覚の懐かしさの特徴は、その時のことをハッキリと思い出すというよりも、その時に感じた「感情」の記憶がよみがえると言われています。

SceneryScentのミッションは、夢や感動の「記憶」を生み出し、やがてその記憶が人々が生きる希望になる世界を作ることです。

エモさや懐かしさは一見後ろ向きに見えるかもしれませんが、あの時に感じた、思い出すだけで心が暖かくなるような記憶があるから未来に向かって生きていけるという希望に繋がります。

私たちは今、そんな「記憶」への糸口を作っています。
みなさんが観るライブやコンサート、お芝居、ステージやテーマパークで繰り広げられる夢のような世界での感動の記憶が、明日への希望になりますように。

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私が代表を務める大阪・淀屋橋「株式会社SceneryScent(シーナリーセント)」では、エンタメのライブイベントや、展示会、店舗などで香りを演出する事業を行っています。

世の中に「ある」香りの再現も、「ない」香りのオーダーメイドもOK。
また、香りを拡散する機器Scent Machine(セントマシン)を開発製造。販売はもちろんレンタルも行っています。

◆ライブイベント、ステージ、テーマパークでの香り効果演出
◆商業施設の装飾香り演出
◆結婚式・披露宴の香り空間演出
◆ミュージカルなど舞台演出での特殊効果の香り演出
◆アニメやゲームなど推しキャラの香り

株式会社シーナリーセント https://sceneryscent.com/

香り演出家 郡 香苗


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