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「ひとりじゃないよ」って誰か言って

最近は調子が悪かった。
「調子が悪い」って使いやすい言葉。
どこか身体の具合が悪いわけでもないのに、なぜだかだるい。
夜になると不安がいっぱい押し寄せてきて、潰れてしまいそうになる。
このまま息を止めて静かになれば楽なんじゃないかとも思う。
十分なご飯も、温かいお風呂も、落ち着ける部屋もあるのに。生きるのが辛いと思ってしまう。
少なからず友達もいるし、仲のいい家族も、優しい恋人もいる。それでも生きるのがしんどい。

✤ 何もできなかった

朝は10時に目が覚めて、12時までずっとベットの上。
家族はとっくの間に家を出て、学校や仕事場に向かっている。
私だけがこの家でぼーっと天井を見つめている。
何もできてない。なにをやっているんだろう。
そんな気持ちが頭の中にぽつぽつと浮かんでくる。
それでも私は動き出せない。
自分の満足いく自分でいられない。

こんな生活をしていても一応受験生。
勉強しなきゃいけない。
ただ、自分の生活は「勉強」か「何もしない」か、しかない。
そんな生活が嫌で仕方がない。

❖ 何かしてみようと思った

少し元気になってきて、予備校には行かずとも、「なにかやった」という達成感が欲しくなってきた。
9時に目が覚めて、10時までぼーっとした。
身体を起こし、コンタクトを着ける。
お母さんが用意してくれた弁当を温める。
昨日もらった缶コーヒーを飲むために、コップを出して氷と冷たいミルクを注ぐ。
テレビを観ながらコーヒーと弁当を口に運ぶ。

家事をしようと思った。
"家事"は私が「何かをやった」と感じられる1番簡単な方法だ。
お気に入りのYouTuberの動画をテレビで流し、BGMを聴きながら洗濯物を畳んでいく。
無心で手を動かしている時間が結構好き。
畳んだ洗濯物をしまう。正直面倒くさい。
洗濯物を片付けて、身支度をする。
服を考えたり、メイクをするのは好きな方。
半袖のTシャツに白いマーメイドスカート。
ボブヘアのサイドを少しアレンジしてセンター分けにしてみた。

何をするかは決めていないが、どこかいつもと違う場所に行きたいと思った。
鞄の中に、単語帳と、母が面白いと言っていた本、その本が合わなかった時のための芥川龍之介短編集、
それからリップや櫛、ミニ扇風機などを入れる。
いつもは行かない川沿いで読書をしようと思った。

❁ 外に出る

初めは歩いて川沿いまで行こうかと思ったが、丁度良いバスがあったのでそれに乗る。
10分ちょっとで目的地に着いた。
風が強くて少し雲がかかっているが、半袖でも十分過ごせる位には暖かい。
コンビニで飲み物を調達し、目星をつけていた河川敷の階段まで歩いていく。
外国人が数人いた。気にせず本を開く。
宮島未奈さんの"成瀬は天下をとりにいく"
読書はあまり得意な方ではないが、頭の中にすっと情景が浮かんできて読みやすい。
主人公の成瀬も面白い。
しばらく川のせせらぎを聴き、風を感じながらゆっくりした。

風が鬱陶しかったのでカフェを探して歩く。
いい感じのお店を見つけた。
入ってみると、少し私には敷居が高い場所だったかもしれないと不安になったが、なんとか注文を済ませられた。
ジンジャーエール(600円)とバナナケーキ(350円)。

バナナケーキ(?)

ジンジャーエールはスパイスが効いていて、喉越しが良く、バナナケーキはしっとりとしていて、中のナッツがいいアクセントになっていた。
成瀬を読みながらぜいたくな時間を過ごす。

30分ほど滞在して、ローカルバスに乗って図書館へ向かうことにした。
初めて乗るルートのバス。住宅地の細道を抜けていく小さなバスはどこか懐かしく、趣を感じさせた。
知らない道をゆっくり進んで行くバスに、ごちゃごちゃしていた思考が整理されていく。
このまま一周してみたいくらい。

それから暫くして日も暮れた。
図書館で3時間ほど、本を読んだり単語帳を開いたりした。
家に帰るために恋人と待ち合わせをして同じバスに乗る。

私の1日ももうすぐ終わる。
鞄に入れていた芥川は結局読まれなかった。
今夜もゆっくり眠れますように。

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