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講師紹介#2 稲葉剛さん

代表理事の横山です。10月にスタートした弊法人の研修プログラム。
11月に行われる初回の講義は、一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事の稲葉剛さんをお招きし「社会的排除論」というテーマでご講義いただきます。

稲葉剛さんについて、改めて詳しい紹介は不要かと思いますが、以下サイトにて稲葉さんの歩みや御略歴が書かれていますので、ぜひご覧になってみてください。

今週のAERAではインタビュー記事が掲載されています。


本noteでは、本研修プログラムにおいて、社会的排除論という講義を設けた背景などについてお伝えさせていただきます。


1.社会的排除とは?

本エントリでは、社会的排除の定義として、以下を採用します。

社会的排除とは、物質的・金銭的欠如のみならず、居住、教育、保健、社会
サービス、就労などの多次元の領域において個人が排除され、社会的交流や社会参加さえも阻まれ、徐々に社会の周縁に追いやられていくことを指す。社会的排除の状況に陥ることは、将来の展望や選択肢をはく奪されることであり、最悪の場合は、生きることそのものから排除される可能性もある

(社会的排除にいたるプロセス~若年ケース・スタディから見る排除の過程~ P12)


社会的排除の概念が、貧困の概念と異なるのは、貧困は「状態」を表すものであるのに対し、社会的排除は、排除されていくメカニズムまたはプロセスに着目する点にあるということです。


2.なぜ社会的排除に着目するのか?

社会的排除は、社会のどのような仕組みや制度が個人を排除しているのかに焦点を当てる、それゆえに、メゾ・マクロ実践において個人の問題を社会化するプロセスを展開する上で、アセスメント時点において社会的排除のメカニズムへの着目することは非常に重要であると個人的には考えています。(詳細については、以下スライドに記しました)

社会的排除に着目する理由 - Google スライド


社会的排除というワードに関連して、稲葉さんが、昨年出された著作に、「閉ざされた扉をこじ開ける 排除と貧困に抗うソーシャルアクション (朝日新書) 」があります。

本書は、社会的排除を生み出す構造に対する稲葉さんたちのソーシャルアクションについての記録です。

都市、住まい、制度が人々を排除するメカニズムについての論考は、社会構造をアセスメントするとはどういうことか?という問いに応える内容になっています。

以下、今回のテーマである「社会的排除論」に関連して、印象に残った箇所について抜粋をしました。

安易に線引きをしたり、レッテルを貼るのではなく、目の前に起きている現象の背後にある排除のプロセスを丁寧に見ていく必要性を訴えたい(P46)
社会的排除をなくすために私たちが取り組むべきことは、排除された側、周縁に追いやられた側の人々の声を聞き、自らもその立ち位置に身を置いてみることではないだろうか。その上で、その人たちの目線に立って、今の社会のあり方を根源的に問い直していくことが求められている(P213)
ソーシャルアクションが功を奏し、制度化が進むと、当初は「外側からのまなざし」を持っていた活動家が制度の中に入り、内側の人間になってしまうという現象が起こる。(中略)制度を内側から変えることも必要なのだが、制度がいくら改善されても外側に取り残され続ける人は存在し、時代の変化により新たに排除される人も出てくる。

内側に立ち位置を移す人も必要ではあるが、その場合も自分の中に「外側からのまなざし」を持ち続けることを怠ってはならないだろう。制度の設計や運用に関わる人は、「今、自分たちが誰を排除しているのか」という点に自覚的であってほしい(P213-214)

上記は、制度の内に身を置く/制度の外に身を置く、または両者を行き来するソーシャルワーカーにとって留意すべき言葉であると思います。

稲葉さんが、実践を通して見てこられた「目の前に起きている現象の背後にある排除のプロセス」から、ソーシャルワーカーである私たちもまた、日々出会うクライアントが、「どのような社会構造や社会システムから排除されてきたのか?」という問いを考え、その先にある実践に歩を進めるヒントを得られるのではと考えています。

事務局からのお知らせ

稲葉さんの講義の概要はこちらです。
日時: 2021/11/20(土)13:00-15:00
講師:一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事 稲葉 剛 氏
テーマ:社会的排除論

前日20時まで申し込みを受け付けています。単発参加も可能です。

みなさまのご参加、心よりお待ちしております!