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【新刊案内】『生らくごのススメ!東京版』 真打昇進披露興行のススメ!



2021年1月末に『生らくごのススメ!東京版』が発売となりました。生で落語を聴いてみたいというときに、まずは誰を聴いたらいいか、どこに聴きに行けばいいのかを解説する落語のガイド本です。コロナ禍のなかで落語会も時短になったり開催が中止されたりしていますが、落語に飢えている人にもお楽しみいただければと思います!


生らくご体験 新宿末廣亭の桂宮治真打昇進披露興行に行ってきました!


 本書では、ほぼ一年中、落語や講談、浪曲、太神楽などさまざまな演芸が楽しめる寄席の魅力について、佐藤友美さん(演芸誌「東京かわら版」編集人)に解説していただきました。そこでは紙幅の関係であまり触れられませんでしたが、普段はふらっと入れる寄席も、披露興行や31日に企画される余一会など特別興行のときは注意が必要です。整理券配布のため早めに行ったり、事前に販売された前売券で当日は立ち見のみということがあるからです。


 この新刊案内の記事を書くために、(という理由で堂々と平日に休みをとって)、編集Fは2月11日の中席(なかせき)から始まった桂宮治披露興行に行ってまいりました。春風亭昇太師匠以来29年ぶりの抜擢真打で、将来の大看板の期待も集める、新真打桂宮治師匠の披露興行の様子をご紹介したいと思います。

 原則として昼夜入れ替えのない新宿末廣亭も、この期間は特別興行のため昼夜入れ替え制となります。夜席の披露興行ですが、当日11時から配布の整理券をもらったうえで、開場時間から番号順に入場するしくみになっていました。

(前売券を購入済みの方も、整理券をもらわなければなりません。)

 今はツイッターなどSNSで寄席や出演者、また、実際に見に行っている人からのリアルタイムの情報も確認することができます。2月17日(水曜)、朝から整理券待ちの行列があるとの情報で、ドキドキしながら向かった昼ごろにはすでに100番台に突入していました。

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賑やかな披露興行

 開場前の15時40分すぎに改めて末廣亭の前に戻ると、すでに人が集まりはじめており、寄席の人の案内で番号順に並び始めます。並んでいるうちに検温もすませます。当日券の場合は列の動きに合わせて移動しながら、木戸(入場券を買うところ)で入場券を購入します。※開場後も札止めとなるか、最終入場時間までは入場が可能です。

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 寄席の外と中には花が、高座の背面にうしろ幕とよばれる大きな幕が張られています。高座の両脇には酒樽や帯なども飾られお祝いの雰囲気で華やかです。前座による開口一番から夜席がスタート、仲入り(休憩)までの流れは通常の寄席と変わりません。

伸ぴん「他行」/伸べえ「熊の皮」/ナオユキ「漫談」/交代出演 昇々「お面接」/鯉八「最後の夏」/母心 漫才/可龍 寄席の踊り/米福「近日息子」/北見伸 奇術/小文治「つる」/昇太「宴会の花道」 (仲入り)

仲入り後はいよいよ披露口上です

 仲入り後は幕が上がると新真打を真ん中に、進行役の鯉八師匠、伸治師匠、ゲストの立川談笑師匠、落語芸術協会理事の小文治師匠が黒紋付に袴姿でずらっと並び、口上が始まります。伸治師匠は、10代目桂文治師匠とのエピソードを交えながら、弟子である宮治師匠の真打昇進を寿ぎます。続いて立川流の立川談笑師匠が、新真打を激励、小文治師匠が宮治師匠への期待を込めた口上の後、客席といっしょに三本締めとなって一旦幕が下がります。再び幕が上がって後半、

 ねづっち 漫談/ゲスト・談笑「イラサリマケー(居酒屋・改)」/伸治「あくび指南」/ボンボンブラザーズ 太神楽曲芸

と入れ替わり立ち替わり、主任(トリ)への期待が高まっていく空気のなか、いよいよ出囃子とともにの新真打宮治師匠が登場です。
 宮治師匠がこの日高座にかけたのは「花見の仇討ち」。花見の趣向に「仇討ち」の狂言を計画した長屋の4人が、つぎつぎと予想外の出来事に見舞われ、ついには本当の仇討ちと思い込んだ侍が助太刀に加わってしまう…という噺です。計画立案段階から危うさが漂い、さらに当日、計画からどんどんと逸れていく4人に、笑いっぱなしです。

「その客席を呑み込むような圧倒的な存在感で爆笑の渦に落とす高座」と演芸写真家の橘蓮二さんが評した通り、パワフルな高座で大満足のうちに終演となりました。

 拍手が鳴りやまずカーテンコール。寄席での写真撮影・録音はご法度ですが、ここだけ客席から撮影タイムとなりました。お祭りに参加している楽しさが満載です。


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桂宮治師匠の披露興行は、二月下席(2/21~2/28)浅草演芸ホール(昼席)、三月上席(3/1~3/10)池袋演芸場(夜席)、三月中席(3/11~3/20)国立演芸場(昼席)、三月下席(3/23)お江戸日本橋亭(夜席)、四月上席(4/1)お江戸広小路亭(昼席)と続きます。

※整理券配布などの情報は各寄席のHPなどでご確認ください。


 また3月21日(下席/しもせき)の上野鈴本演芸場から、落語協会の真打披露興行がはじまります。今年は春風亭正太郎(春風亭柳枝)さん、三遊亭粋歌(弁財亭和泉)さん、柳亭市江(柳亭燕三)さん、柳家小太郎(柳家㐂三郎)さん、三遊亭めぐろ(三遊亭れん生)さんの5人です。

 そして5月からは落語芸術協会の三遊亭小笑さん、春風亭昇々さん、春風亭昇吉さん、笑福亭羽光さんの真打昇進披露興行もあります。

 寄席に行ってみたいという方、はじめての寄席体験が披露興行というのも印象深い体験となるでしょう。つぎつぎと頭角を現す若手落語家の「今」を見逃すのはもったいない。

 コロナ対策のマスク着用、飲食禁止、声掛け禁止などの注意を守りつつ、楽しみましょう。


ちょっと足を伸ばして

新宿末廣亭からほど近い紀伊国屋書店新宿本店4階の落語コーナーはかなりの充実ぶり。『生らくごのススメ!東京版』ではパネルを展示していただいております。そしてさらに、新宿本店では購入特典として橘蓮二さん撮影の柳家喬太郎師匠のポストカードもございます。(初回注文分のみの限定配布となります)

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編集:深澤

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