「メクルメクいのちの秘密」の感想

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今回は、メルマガ20号(2021.8.24)の配信内容です。

今日は夏休みです。

これまで「プライマル・ヘルス」の意訳を載せてきましたが、難しいという声もあり、今回は休みます。

そこで別の本「メクルメクいのちの秘密」(地湧社)の内容を紹介します。

著者は鳥取県の智頭町で「助産院いのちね」の代表理事をされている岡野眞規代さん。先日お会いした時頂いた本です。

岡野さんは吉村医院で5年間婦長を務められた方で、お産に関する思いや発見、それに吉村先生の哲学や人となりが紹介してあります。

私が特に感じたところを紹介します。

本は吉村先生の楽で便利なものが人をダメにした」の発声で始まる。

哺乳動物としてのヒトが、自然なお産をしようというなら、自然な動物としての体力や筋力が必要である。体力も運動も苦手で不自然な妊婦が、お産するときだけ安全に生ませてくれ、というのはそもそも虫が良すぎる。というのが要点であろう。従って吉村医院では、体力・筋力を鍛えるため毎日の歩行や薪割りなど独自のトレーニングを行っている。

これは別に私が直接聞いた話だが、吉村医院で生んだというある女医さんは、「体つきが違います。まず体を鍛えないと自然分娩はできません」と言い切るほど徹底している。

鍛えるのが嫌なら、病院でのベルトコンベアーのお産を覚悟したほうが良い。

吉村医院では「微弱陣痛」は待機する。それは原因ではなく結果だからだ。必要があって微弱になっている、すなわち頸管の熟化のための待ち時間、頭の応形機能の進行時間、産婦の不安や緊張などだと考える。そうすると心理的に安心な状態で待機することが最良の対策である。一方病院のベルトコンベアー方式のお産では、微弱陣痛は異常であって難産の原因となると考えて、陣痛促進剤という介入でベルトコンベアー方式が駆動を始め、悪くすればドミノ倒しのように次々と介入がはいる。

両者の違いは分娩後の赤ちゃんの様子で更に顕著になる。

吉村医院で自然にツルンと生まれた赤ちゃんは天真爛漫である。いつまでも泣き叫ぶことはない。そしてマニュアルではなく臨機応変に母子相互作用を強めるケアをする。仮に口蓋破裂の赤ちゃんであっても、自力でおっぱいを吸える力を信じて直接哺乳をトライさせる。赤ちゃんの努力と学習の結果で成功することもある。

病院では赤ちゃんはストレスを抱えた不機嫌な表情または目をつむったままが多い。マニュアル通りに母子のケアを進めていくので個々の母子の絆の強化までは難しい。口蓋裂の赤ちゃんには直母は無理だとして、マニュアル通り口蓋裂用の授乳器具を最初から使用する。栄養摂取の点では合理的かも知れないが、母子の努力を引き出すことはないし、直接母乳の感覚を通しての母子の相互作用も随分異なってくることになる。

「メクルメクいのちの秘密」はお産にあると岡野さんは言いたいのだろう。

 

対象読者は、助産婦向けだが同時に妊産婦さん向けの本でもある。

吉村医院のお産について多くが書かれているが、著者の体験から発展させた考察が随所にみられ大いに参考になる。

ぜひ一読を推奨するが、私が岡野さんの考察に最高に感じ入ったのが次の一文である。

「死ぬものは死ぬ。それがイヤならここで産んではいけない」という吉村先生の言葉に妊婦は戸惑う。

「吉村先生のやろうとしているお産はすばらしい。けれど、先生はあくまで男性。妊婦さんたちの心のケアは、女性である私達助産婦の腕にかかっている。」

実に的を得ているはないか。

 

 以下は私の見解です。

「医学というのは男性中心の学問であり施術であるから女医も含めて男性的。
妊産婦のソバで辛抱強く寄り添って励まし、出産後は赤ちゃんも含めて相互の関係を強める、などの芸当は医者ができる話ではないと思う。
男は子供と遊ぶことはできる、ミルクを与えることもできる。
しかし生み育てる能力は生物学的に女性にのみ与えられた天賦の才だ。
だから医師は助産婦にはなれないし、なる必要もない。
必要なのは相互のリスペクトに基づいた役割分担である」

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