ヒトの細菌叢(Microbiome)とプライマル・ヘルス6
SBSK自然分娩推進協会では、ご希望の方にメルマガを配信しています。
今回は、メルマガ35号(2021.12.09)の配信内容です。
では今回も微生物叢に関する話題をお送りします。
前回の内容は下記をご覧ください。
ヒトの細菌叢(Microbiome)とプライマル・ヘルス6
セクション1 姙娠と胎児の生
Chap1 妊娠中の微生物叢の変化
4 妊娠中の口腔内微生物叢の変化
ポイント
妊娠中は歯肉炎時のような病原微生物が増える
妊娠時の免疫抑制やエストロゲン増加が原因として挙げられる
口腔内微生物の変化が機能的意義を持っているかどうか、単なるバイオマーカーにすぎないのか不明
産後はもとに戻る
妊婦の口腔内微生物叢
これまで妊婦の腸および膣の微生物組成について説明しましたが、それらで引き起こされる変化よりも驚くべきことは、妊娠中の口腔内微生物叢の変化です。
まず、妊娠中は口腔内微生物が増加してきます。
これは日本人女性の妊娠中と非妊時の細菌種のカウントによって分かりました。
さらに、歯肉縁上部の微生物の調査で、微生物組成の多様性および変化が、妊婦と非妊婦の比較サンプルで発見されました。
具体的には妊娠群で、ナイセリア、ポルフィロミナ、トレポネマが増加し、レンサ球菌およびヴェイロネラ菌が減少しました。さらに、ポルフィロモラス・ギンジバリスやアグリガチバクター放線菌を含む病原性細菌種の増殖もあり、これらが妊娠中の歯肉炎の増加の原因と推定されます。
口腔内微生物叢は、産後は非妊時に似て病原性細菌は減少します。
歯肉炎を持った妊婦の口腔内微生物と妊娠後期の健康な歯肉をもった人とを比較すると、細菌の全体的な多様性に違いは認められませんでした[43]。
今後、歯科病理における妊娠中のジスバイオシスの潜在的な役割が明らかになると思われます。妊娠が口腔内微生物叢の組成変化とどのようにつながるのかはまだ不明ですが、妊娠中の免疫の抑制に基づくメカニズムが推定されます[44]。また妊娠中のカンジダの成長を促進するためのエストロゲンの上昇[45]も関係するのでしょう。
ただ、口腔内微生物の変化が機能的意義を持っているかどうか、またはそれらは単なる生理学的変化のためのバイオマーカーにすぎないのかどうか、今後の研究が待たれます。
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