ヒトの細菌叢(Microbiome)とプライマル・ヘルス1

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今回は、メルマガ29号(2021.10.5)の配信内容です。

再度プライマル・ヘルスに関する話を書いていきます。
「プライマル・ヘルス」の表題からはミシェル・オダンの本と思いきや、実はこれは私の勝手な訳です。元の表題は
The Human Microbiome in Early Life:Implications to Health and Disease
で、「早期のヒトの細菌叢:健康と病気への影響」です。

しかし編者の意図するところは「人生早期の細菌叢の重要性」ですから、「プライマル期における細菌叢への健康に及ぼす影響」と言い換えても良いでしょう。そのほうが過去のメルマガとも関連するので、オダン先生の「プライマル」の用語を使うことにしました。

この本はヘルシンキのSamuli Rautava教授とイスラエルのOmry Koren教授(どちらも私は全く存じませんが)の編で多くの研究者が書いています。今年2021年の出版です。引用文献は2018年のものもありますから、「頑張れ助産院」の細菌叢に関する話より最近の話題です。

未だ読み始めなので何とも言えませんが、妊娠中の食事が母親の腸内細菌叢に影響し、それが赤ちゃんに影響することなど、日々の指導にも役立てることができるのでは?と思います。

では、まず今回は編者のイントロを紹介します。この本の概要がわかるでしょう。(分かりやすくするためかなり意訳しています。ご了解下さい)

Introduction

「この本のインスピレーションは、健康科学で起こっている2つの重要な理論的および臨床的進歩に立脚しています。

第一に、胎児期、出産期、幼児期の暴露(何の?)は、新生児および乳児の健康に大きな影響を与えるだけでなく、成人期や老年期の病気のリスクとして長期的な影響を及ぼす可能性があります。胎児の成長停止や早産などの周産期合併症は、将来の心血管疾患のリスクの増加因子であり、帝王切開早期の抗生物質は肥満およびアレルギー疾患のリスクとの関連もよく知られています。

第二に、微生物学の進歩は、ヒトの健康における微生物の役割を明らかにしてきました。細菌は、もはや潜在的な病原体ではなく消化機能や免疫応答から成長、代謝、神経生理に至る、宿主の生理機能を調節する重要な共生生物と見なされています。

以上2つの大きな進歩の中で、私たちはプライマル期のヒト細菌叢に関する宿主の生理学と健康の、包括的な知識を必要としています。

初期の哺乳類、脊椎動物、真核生物の祖先は、すでに細菌が生息している世界で進化してきました。細菌と多細胞生物は、複雑な相互依存のネットワークを生み出しました。

腸内細菌叢の変化は、アレルギー性および自己免疫疾患および炎症性腸疾患から肥満、2型糖尿病、さらには神経学的または精神疾患の範囲に至るまで、様々な非伝染性の慢性疾患に関連しています。

新しい研究では、病気の原因としての異常な腸内細菌叢の役割があります。この考えに沿った研究では、腸内細菌叢の特徴ある変化が、後にアトピー性疾患を発症したり肥満になったりする人の、生後数週間とか数ヶ月の早い時期に検出されました。

長期的な健康と病気のための、赤ん坊と微生物との最初の出会いは重要です。乳児期の正常な免疫・代謝・腸・の発達には、微生物との継続的な相互作用が重要です。周産期および乳児期の腸内細菌叢は、帝王切開、早産、母乳育児の欠如、または抗生物質の使用によって変化を起こすことがあるからです。

人間の胎児が、健康な妊娠中に生きた微生物と接触するかどうか、羊水空内に生きた細菌がどの程度存在するのか、正確には未解決のままです。しかし、母親の腸および膣細菌叢が妊娠中に変化を起こし、細菌性膣炎または絨毛膜炎となると胎児に有害な影響を及ぼす可能性があります。

妊娠中の微生物との接触(直接的な影響、または妊娠中の母親を介した間接的な接触)は妊娠の結果や新生児の健康にどのような影響を与えるのでしょう。

微生物への暴露が将来の健康や胎児の病気の早期の決定要因の一つであるとするのは非常に興味深い仮説です。

本書は、利用可能なデータだけでなく、理論的な理解やギャップを通じて、新しいアイデアが刺激されることを期待しています。」

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