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ヒトの細菌叢(Microbiome)とプライマル・ヘルス 9

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今回は、メルマガ42号(2022.03.09)の配信内容です。

今回も微生物叢に関する話題です。
前回の内容は下記をご覧ください。

セクション1 姙娠と胎児の生命

Chap1 妊娠中の微生物叢の変化

9)妊娠中の母親の微生物叢は子に影響を与える

乳児の主な微生物播種は出生時に起こります。分娩時の最初の暴露は母親の身体なので、母親の微生物叢が新生児と接触する最初の微生物です。したがって、腟から生まれた乳児の初期腸内微生物叢は母の膣微生物叢に似ているのに対し、帝王切開によって生まれた乳児の微生物集落は母体皮膚のそれに似ています。

ところで母親の微生物が子に様々な影響を及ぼすことはわかっていますが、胎児が独自の微生物集落を獲得する前でさえ、妊娠中の母親の微生物叢は胎児に影響するのは驚きです。子に対する影響には、成長の促進、免疫系の発達、BMIへの影響、喘息およびアレルギー疾患発症への影響が含まれます。

母親の微生物叢は、免疫に関する細胞の数および遺伝子発現に影響を及ぼし、出生後早期の腸内及び皮膚の免疫を始動させます。この機序についてはかなり詳細にわかっています。

母体微生物叢が子の自然免疫に及ぼす主な影響の中には、IL17およびIFNγ(T細胞の活性化や免疫機能に関与)産生細胞の調節、ならびにiNKT(下記注)細胞の調節があります。

一方妊娠中の微生物暴露が枯渇すると、免疫機能障害を引き起こし、  Th17(*1)、Treg(*2)、好中球、マクロファージ細胞のレベルを低下させ、iNKT細胞(*3)レベルを増加させます。サイトカイン(免疫に関する生理活性物質の総称)レベルへの影響としては、IL17、IL1β、およびTNFα発現があります。

特定の細菌(大腸菌)でコロニー化された妊娠マウスにおける妊娠コロニー形成実験では、子犬における炎症反応を減少させることが明らかになりました。

胎児に及ぼすもう一つの母親からの影響は、神経心理学的ファクターです。情緒、神経認知、微生物叢、免疫システムの相互接続はよく知られています。腸-大脳軸の一部としてこれらの経路を調査すると、うつ病や不安が腸内微生物叢組成に影響を及ぼすことがわかりました。興味深いことに妊娠中の母親の不安、うつ病、およびストレスが胎便中の細菌叢の多様性の減少とエンテロコッカス科の数度の減少に関連していることがわかりました。以上から、子の成長、免疫システム、および神経発達に対する影響は、妊娠中のバランスのとれた母親の微生物叢が重要性であることがよく分かります。

(*1) ヘルパーT17:細胞外の細菌を排除する機能を持ち、その異常は自己免疫疾患と関連する。
(*2)Treg 制御性T細胞:T細胞の一種で免疫細胞が過剰に働き過ぎるのを制御し、アレルギー反応や炎症反応などを抑える。
(*3)iNKT細胞:T細胞、B細胞、NK細胞に続く第4のリンパ球と言われ、長期免疫記憶にかかわる。

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