マトリョーシカ(新版)
始業式が終わると正木理恵(まさき りえ)はすぐに下校してきた。部屋に入って机の上の置き時計に目を向けると針はお昼前を指している。理恵の両親は共働きで、母親は午後七時にならなければ帰宅しないので時間はたっぷりとあった。それでも理恵は気が急いて、スクールバッグを置いて台所にいくとテーブルの上に置いてあった菓子パン一つを頬張って牛乳で流し込む。
庭に面している窓に薄手のカーテンが掛けられているリビングルームは、朝から日差しが降りそそいでいたせいでエアコンを付けなくても充分に暖か