読書日記(2023.9.7) ラウテ 森の王

NHK特集 「奥飛騨白川郷 合掌屋根を葺(ふ)く」をみた。

村人200人で、合掌屋根を架け替える。

ハンナ・アレントの『人間の条件』ではないが、耐久性のある製作物で共通世界を維持するという典型例だった。

『森の王 森の声 〜遊動の民ラウテ〜』をみた。

ネパールの森林地帯で、移動生活をする、日本の民俗学者、柳田国男の言うところの山人である「ラウテ」

森の木を切って、手作業で木工用具を作り(棚や器や、鍋敷きなど)、それを里の人々に販売して生計を立てている。

彼らの主なタンパク源は、サルの肉である。サルを食べることで、里の人と食物が被らないように、と配慮してのことである。

ちなみにサル猟は、取材班にも絶対にみせないタブーである。

この取材では20歳のサムジャナという少女に密着していた。

彼女は、なかなかフォトジェニックな少女で、里の人が、彼女を撮影して、インスタtiktokにあげたもんだから、世界でバズってしまった。

そんなラウテも、木工材料のために勝手に木を切るな、と地方自治体から警告される。

彼らが木を切っているのは入会地(コミュニティフォレスト)だということで、環境保護のために木を切るのを禁止する代わりに、ラウテに政府の補助金を支給されるようになる。

その社会保障の金でもって、子供も大人も酒を飲む。

その上若者が、酔って失火して焼け死に、ラウテのモラルも、ラウテの自治もどんどん危うくなる。

政府から土地をもらって定住するようになったラウテも、詐欺師に騙されて、借金して、土地を奪われ、カツカツの生活。

ラウテの伝統的な暮らしが困難になる中で、サムジャナは、街で暮らしたいという願望を口にする。

木工道具で、里の人と共通世界分かち合って暮らしていたラウテが、社会保障費のせい、木工道具の製作もやめて、酒浸りになり、自分たちの共通世界を失っていく様が、描かれていた。

新日本紀行 「唐桑の七福神ー宮城県唐桑ー」をみた

気仙沼の漁港。夫たちがマグロを追って遠洋漁業を続ける中、残された妻たちは、夫の無事を願って七福神に仮装しての舞を舞う。

この番組のいいところは40年後にこの映像に出ていた人のその後を追っていることである。

90歳になるリーダー格の方と、当時、最年少で現在70代の方が、後進に七福神の舞を、今も教えていた。

(おわり)


お志有難うございます。