ドライビングモール天海
録りだめておいたテレヴィの録画を観ながら、漫然と晩酌するのが、日課である。ラグビーの試合を主に観ていた。イングランド代表は強い。エディー・ジョーンズHCおそるべしである。
モールを組んでいるときに真ん中に立っている選手がいる。モール顔というか、どの国でも似たようなでっかい人がやっている。正確には、ロックというポジションらしい。スクラムハーフ顔、スタンドオフ顔というのもある。スタンドオフは、だいたい各国の男前が務めている。比較されたし。
ラグビーを観てから、『プロフェッショナル仕事の流儀 吉永小百合』の録画を半分だけ観た。わたくし、吉永小百合の映画は観ないので、何が代表作なのか知らない。最後の大女優と呼ばれているらしい。
「最後の人間」といえば、ニーチェの「ラスト・マン」が有名だが。
最新作は、犬童一心監督作品。普段は、あまり出ないような、まあ（低予算ということか？）、そんな感じの作品だということで、映画の宣伝を兼ねて、半年に渡って、吉永小百合さんに密着取材である。
共演は、天海祐希さん。吉永小百合さんと並ぶと、モールを組んでいるでかい選手と、スクラムハーフみたいである。天海祐希は、モールを組みやすそうな顔である。モール顔。
「私は今でもアマチュアなので、『プロフェッショナル』なんて番組出ていいのかしらと思っていました」と小百合さん。（発言は、うろ覚えなのであしからず）
撮影中は、高倉健さんのように、ずっと立っている。吉永小百合は、撮影中に椅子に決して座らない。他の俳優の演技もチェックして、「勉強させていただいている」ということである。座ると、演技にリズムがでないと、吉永小百合はいう。
謙虚を装いながら、吉永小百合は現場に緊張感を与えていた。大女優はどんな現場でも、全力だ。天海祐希も、モールを組みながらボーッと突っ立ってるわけにはいかない。吉永小百合が、休憩スペースの「うまい棒」に興味を示して、手にとっているのを、天海祐希が大はしゃぎでいじっていた。
「小百合さんがうまい棒だって」こんな感じだった。天海祐希。宝塚の男役だから、デカイ。ラインアウトからジャンプしてボールを叩いて、吉永小百合にパス。そのまま、ドライビングモールからのトライ。
『最高の人生の見つけ方』という映画らしい。
映画の予告編を見る限り、ドライビングモールというより、モールアンプレアブルという感じだ。（にわかラグビーファンが、ジャーゴンを連発）
その後、是枝監督が、カトリーヌ・ドヌーヴと映画を撮る密着ドキュメンタリーを観た。以前、『8人の女たち』という作品を観たのだが、どれがカトリーヌ・ドヌーヴか最後までわからなかった。『昼顔』や『シェルブールの雨傘』のころのドヌーヴしか知らない。
カトリーヌ・ドヌーヴは、午前中撮影には参加しないということで、非常にやりにくそうだった。セリフも勝手に変えるし、監督の演出にも、はっきり意見する。機嫌を損ねればタバコを吹かして、自分に閉じこもる。是枝監督やりづらそうだった。
しかし、是枝監督って、女優のワガママに付き合うのがうまそうだ。ひたすら、女優の前では、腰が低い。フェーズ20くらいまで粘りそう。あの監督の最大の長所というのは、ああいうところにあるんじゃないかと思う。
カトリーヌ・ドヌーヴ。ラグビーで言えば、ナンバーエイトである。特技はジャッカル。カトリーヌ・ドヌーヴ。往年の大女優が暴れまくるの巻という感じだった。
今月ゾラの『ナナ』で読書会をやるので読んでいる。フランスにおける女優とはなにかを考える上で、『ナナ』非常に刺激的な小説だ。ナナも、午前中は起きてこない。私生活は荒みまくっている。売れてからは、自分の舞台に平気で遅れる。客もスタッフも待たせるのである。『終電車』のカトリーヌ・ドヌーヴはとてもよかった。『終電車』は舞台が舞台の映画なので、フランスの演劇人の生活がよく分かる。
是枝監督がタイトなスケジュールの撮影中にもかかわらず、一時帰国せざるを得ないという。樹木希林さんの通夜に出席するためだった。以前、樹木希林さんの密着ドキュメントもNHKでやっていた。吉永小百合と樹木希林。共演したことあるのかね。
（調べたら、NHKの『夢千代日記』で共演して以来、交流があったそうだ。）
樹木希林さん。プロップっぽい。スクラムを最前線の脇で支える。しかし、タイトな撮影期間で、是枝監督を日本に帰国させるというのは、樹木希林さんは、業が深いと思った。
映画はやっぱり台本だと思う。それぞれの登場人物が、ガッチリ噛み合わないと、大スターがだけ目立っても、面白くない。吉永小百合の映画も、高倉健の映画も、主演ばかり目立っている気がして、見る気がしない。それは、俳優のせいではなくて、演出や脚本、ひいては観客の責任なのかもしれないが。
今週『ジョーカー』を観に行こうと思ったのだが、体調が悪くて行けなかった。来週観に行ったら感想書きたい。
（おわり）
お志有難うございます。