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企業活動を通じて社会を動かしていくために今、私たちが話してみたいこと。I なぜ私たちが「Social Business Lab」を立ち上げるのか。(後編)

こんにちは!Social Business Lab運営事務局です。

2022年11月25日、企業の「中の人」が主体となり、社会を動かしたり、“ふつう”を問い直すような新たな考え方を提示するプロジェクトを実行している方々と、プロジェクトについてお話を伺いながら視点や学びを共有する勉強会をスタートいたします。

Social Business Labは、毎月1回、オリジナルの「Social Action Canvas」をベースに「あのプロジェクトの裏側」を分析し、実際にそのプロジェクトを担当した関係者から具体的な取り組みについて共有していただきながら、Tipsや考え方を知り、ともに学びあう場です。

今回はこのコミュニティの立ち上げにあたり、立ち上げに関わるメンバーの対談の後編をお届けします。

■Social Business Lab(SBL)とは?

社会の前進と企業の事業貢献を同時に実現するソーシャルアクション。そのために必要な視点やTipsを探り、共有することで、実践者や関心者をエンパワーメントしていくコミュニティ。
第一期主宰:CCCMKホールディングス(学校総選挙プロジェクト), パナソニック株式会社(ふつう研究室) / 企画・クリエイティブパートナーCreative Studio koko

ー 実際に今まで社内で立ち上げられたそれぞれの活動の中で、失敗や難しかった点はありますか?

白鳥(パナソニック株式会社/ ふつう研究室)
いっぱいあります。勿論、私たちの詰めの甘さもありますが、社会的な課題に対する社内での理解度の差もありました。伝え方を間違って反対されたり、本当は公式の発信としてやりたかったけれどできなかったり、テクニック的な部分もありますね。

石井(CCCMKホールディングス株式会社 / 学校総選挙)
もっと何をもって会社に貢献するのかを明確にしておけばよかったなと思うことがあります。貢献の仕方が1つではなく複数あったので絞らずに進めたんですが、結果として色んなことを求めながら進めることになってしまって、やることが多くなり過ぎたり、少し中途半端になってしまったこともありました。貢献する成果の出し方が複数あってもメインとサブを決めておくなどしておけば良かったかな、と思う部分もあります。色んな成果にトライしたことで気づけたこと、得られたこともあるので半々の気持ちですね。

ー 外側から一緒にプロジェクトを形にしていくクリエイティブや制作パートナーの立場からはどんな課題があると感じますか?

大谷(Creative Studio koko)
「普通を問い直す」という過程がビジネスプロセスの中でも必要なんだと思います。既存のやり方や考え方の方が安全だよね、といった空気がある。それぞれの課題特有の文脈や背景を理解してもらったり、新しい仕組みを取り入れながら何かを実現することは本当に難しい。最近は社会的な課題に触れながら何かの話を持ち込む時「思い」や「熱意」としてのみ受け取られてしまい、とはいえビジネス的には難しい、リスクになるよね、で止まることが多いなと。またはこれまで抜け落ちてきた人々の存在を示すと、逆に特別視して「多様性」として打ち出そうとか。当たり前に顧客を、消費者・ターゲットといった視点だけではなく「ひとりの人間」として大切にしませんか、それは本来すごく本質的な話だと思っているのですが、ビジネスの“当たり前”が存在する中でどう伝えるかが一緒に考えるべき課題だと感じます。

田中(クリエイティブディレクター)
必ずと言っていいほど挙がるポイントとしては、社会や何か問題を抱える当事者に向けば向くほど、なぜうちの企業でやる必要があるの?という点。企業が取り組むべき理由と社会に向けたアクションのバランス感覚がかなり難しい。やっぱり、イメージが共有できないと実利的な話になってしまう。そのバランス感覚はやっぱり証明しづらいんですよね。よりよい社会にしていくことを目的として考えると、企業が目指す目的は同じ。同じ方向に向いているなら、今後何かのプロジェクトを通じて全然違うジャンルの企業同士がコラボレーションするってあり得るじゃないですか。そこに可能性を感じていて、いくつかの企業と取り組めたらもっと大きなうねりを起こせるのかなとか。それぞれが得意な領域や役割を担ったり、もっといろんな形を通じて実現できると、自分達も参加できそう、という後押しにはなりそうだなとは感じますね。

石井(CCCMKホールディングス株式会社 / 学校総選挙)
「なぜうちの会社がこの取り組みをするんだろう?」ってきっと思うんだろうなって感じるんですよね。このラボの一つの成果として出せたらなって思うのが、企業だからできることがあるはずだと。イシューに対してダイレクトに取り組んでいる人たちや団体もあったりする中で寄付をするのもひとつのアクションですし、一方で企業自体が起こすアクションも必要だと。企業が主体的に何らかの動きを起こすことによって企業間での繋がりが生まれてコラボできたら、動きが大きくなる可能性がある。企業だから生み出せるソーシャルアクションの形をこのラボの中で見つけられたらいいですね。

大谷(Creative Studio koko)
企業の活動って「ターゲット」という言葉を使うと思うのですが、大きい企業になればなるほどやっぱりどうしても小さな声や、マイノリティとされる領域には目を向けてもらえないなと感じていて。そこに目を向けながら、なかなか上に届かない声をどういう風に繋げていけるんだろうって模索されている人たちは希望だと思うんです。企業の中で動けるからこそアプローチできる範囲を見つけられると、ひとりで見ていた領域が拡張していく。結果として中の人たちの動きが、企業の「らしさ」や「信頼」をつくっていくんじゃないかなって。だからこそ、一発じゃなく続けられる仕組みをつくらなきゃいけない。

ー 社内で理解を得たり、応援してもらえる環境づくりなどは必須になりそうですね。

白鳥(パナソニック株式会社/ ふつう研究室) 
プロジェクトを始めるにあたって「重要人物の中に判断できる人がいない」っていうのが一番ネックでした。判断できない理由は、事例やデータベースがないのでGOかSTOPかわからない。でも何とか続けてみたら、問題を理解して応援してくれるようになったり。半年くらい後に、やっと効き始めたということがあったんです。今は見えないかもしれないけれど「こういう世界があるんですよ」って伝え続ける。自分が知らない世界だったら「存在しない」って思っている人たちや、気づいていない人たちに長く継続して面で接することが大切だなと。いろんな繋がりを持ちながら、それを多角的にできればいいなと思います。

石井(CCCMKホールディングス株式会社/ 学校総選挙)
パナソニックさんのような規模の企業になってくると、SDGsやCSRに関しても、しっかり取り組んでいますよね。やってないからやろうっていうよりも、既にやっているにも関わらずさらにまた別のこともするって、また違う難しさがあるんだろうなって思うのですが、どうですか?

東江(パナソニック株式会社/ ふつう研究室)
CSRでやることと、事業活動として取り入れていかなければならない視点って、やっぱり全然違うじゃないですか。人事的な取り組みはやっている一方で、自分たちがサービスや商品として社会に何かを届けるときに、実際には何をどんな風にできているのか?外のリアルな生活とのギャップをすごく感じていて、そこが一番ですね。

白鳥(パナソニック株式会社/ ふつう研究室)
お客さんとの距離や、生活とのリアルなタッチポイントでどうなのかっていうのは、やっぱりまだまだ余白がいっぱいあるなと感じています。そういう意味でいうとCCCさんが取り組まれているプロジェクトの方が、私たちのスタンスややりたいことと近い感覚がありました。ダイレクトに、問題にアタックできる感じ。だから会社としてのスタンスはどうであれ、やりたい形をつくっていかねばとは思ったりしています。

ー 昨今、様々な社会課題について言及したり考えるとき、時にポリコレだと揶揄されたり冷笑されるような風潮も出てきたように感じるのですが。これから「より良い社会」ってなんだろうを考えながら前進していくためには、どんな動きが必要だと思いますか?

白鳥(パナソニック株式会社/ ふつう研究室)
私は、すべてを外に求める必要はないなって思っていて。パナソニックって20何万人も社員がいて、その家族もいる。関係者の中でも、既にいろんな人がいるわけですよね。その人たちに、そもそもこういう世界があるんですよっていうのを伝える。伝えて一緒に考えてもらう。「こうしましょう」じゃなくて「こうじゃない?」っていう問いかけに対し、自分の意見を持っていただくような状況を作るのがまず第一歩なのかな。それを冷笑する人がいたとしても、冷笑するのをただ周りに流されてするんじゃなくてちゃんと意思を持ってやって欲しい。何にせよ、主体性があるような状況になっていくのが大事なんだなって思っています。社会にインパクトあたえるっていうのはちょっとまだまだ烏滸がましい感じではありますけど、まずは身内から考えるベースを提供していけたらと思っています。

内藤(CCCMKホールディングス株式会社 / 学校総選挙)
学校総選挙プロジェクトは、隔月で高校生とオンライン座談会をする機会があるのですが。そこでの対話を通じて感じてるのは「自分の声なんて届かない」って大抵の子が思っていること。でもそんな中、例えばLGBTQ+に対して自分はまだ知識がないから話を聞いてみたいって参加してくれたりする子がいるんです。本来大人としては、そんなふうに課題意識や疑問を持っている若い人たちのために、何か自分たちの声が届くという体験や環境を作ってあげる必要があるんじゃないかなと。校則を一つ変えることができた、といったことも十分な成功体験になると思うので、声を上げたことで何かが変わる体験が増えていくような環境があることはすごく大事なのかなって感じています。

石井(CCCMKホールディングス株式会社 / 学校総選挙)
対話が必要ですよね。これだけいろんな違う考えを持った人がいる中で、対立が生まれるような課題に向き合う際、ディベートや議論で相手を納得させるではなく、他者を理解する姿勢だけが大事だと思うんです。きっとそれが制度やルールにも、反映されてくるようになってくるんじゃないかと。これが「ふつう」という感覚やルールって、まだまだ囚われてしまう人が多いんじゃないかなと思うし、そこから外れることを「違うこと」と捉えがちなのかなと思ってます。あと変わる方法、変える方法がもっともっと世の中に溢れたらいいと。オンライン署名や発信もひとつの方法で、何かが変わることがゴールだと思うと、変える術が必要。その手段をもっと見つけて共有して、作っていける形になったらアクションも増えて、きっと心地よく過ごせる人が増えていくのかなとは思っています。

東江(パナソニック株式会社/ ふつう研究室)
企業も日本社会もそうかもしれないのですが「優秀」の基準がすごく画一的だと思っているんですね。ちゃんと毎日会社に来れて言われたことができて、期日を守れて。それができるとすごく生きやすい構造になっていると思うんですけど。そうじゃなくてもっと他にできることがたくさんある人がいろいろいる。その基準を少しでも変えてみることで、すごい力を発揮する人もいるんだろうな、と。いろんな形の優秀みたいなものが、ぽんぽん見えるようになったら、社会に対して何かできる、自分も行動できるって思える人の幅も広がるんじゃないかなって。そのためにも本質を置き去りにした「多様性」という言葉の使い方ではなく、それぞれが持っている強さを発揮できる環境ができること、見た目や表面的な多様性という話ではなく、個々への理解が広がるといいなって思います。

大谷(Creative Studio koko)
社会を変えていくには、法制度と風潮がどちらも変わらなければならないと思うのですが。企業活動は、風潮に与える影響がやっぱり大きいと思うんです。毎日、企業の活動に触れずに生きていくことは、ほぼできない。でも「企業」といっても個人の集まりで成り立っているから、その中で動こうとしている人たちの声や意思を、上で凝り固まっている構造に混ぜられるように、力を合わせられないだろうかと思います。クリエイティブ制作の立場にいると、トップとしか仕事しないっていう人がいるんですけど、私は今の社会構造だとそれじゃダメだと感じていて。そもそも決裁権を持った人たちの属性に偏りがあるのと、そこにアクセスできる人も限られる。小さな声を、既存の状態にどれだけ混ぜられる空気や仕組みをつくるか。例えば、小さいコミュニティと大企業との接点作りかもしれないし、企業内で活動する人たちが折れずに済むような場づくりかもしれない。「いわゆるそれってお気持ちでしょ」とか「ビジネス視点では」「大多数は」っていう話の文脈で片付けられてしまわないように、人の思いや感情、意思が途中で折れてしまわないように。

田中(クリエイティブディレクター)
社会のあり方を考える上で、SNSって間違いなくもう外せないですよね。SNSを通じて何かを世の中に発信するって考えた時に、万が一心ないコメントがあったとしても、図太さを持って発信し続けることが大事だと思うんです。その図太さを何がつくるかって、誇りだと思うんですよ。誇りがあれば、変えたいっていう一心でやり続けられる。その誇りは、これから企業の名刺代わりになっていくと思うんです。つくっているサービスや商品だけではなく、社会に対してどんな姿勢を見せるかが名刺代わりになってく中で、社会に存在する課題にアプローチするような取り組みは誇りを生み出してくれるんじゃないかと。会社が主体的に動くことで、じゃあ自分はどういうことができるんだろうとか。課外活動としてこういうことに参加しようとか、いろんなスタイルが生まれれば、個々人の誇りも養われていくんじゃないかな。それが、図太く発信し続けることにもつながる。そういう意味で、企業と個人の関係もすごく大事だなと。

ー 確かに社内の現場の人から企業が動くケースもあれば、企業が主体的に動けば社内の人たちが変わっていくケースもあると思うので、誰にどういった形で関心を持ってもらうのか様々なアプローチがありそうですね。

石井(CCCMKホールディングス株式会社 / 学校総選挙)
無関心層をどう減らすかっていうところは大きいなって思いますよね。関心層は確実にいるし、関心層はやれることやっている人も多いんだろうなと。ただその一方で、無関心層が明らかに多いんだろうなと思っていて。 関心は無くはないけど行動に移れていないっていう人も含めて、その層にどうアプローチできるかが大事なのかなって思ったりはします。少し前にアンケートをとったことがあるんですけど。社会にとって何か良い活動をしていることを知って、それが何か行動に繋がるかというと多くの人ががまだ繋がっていない。

白鳥(パナソニック株式会社/ ふつう研究室)
やっぱり、場づくりってすごく大事なのかもしれないですね。何事も何らかの結果が見えるから続けられる、っていうところはあると思うんです。反応も何もないところに向かってずーっと言い続けるのってメンタルにくるし、諦めになってくる。どんなに熱意があったとしても、そういう意味ではやる気を失ってしまうのかなって。ちゃんとレスポンスができる場や仕組みがあれば、関心も高まっていくのかな。

田中(クリエイティブディレクター)
身近だとそれが対話になって、そういうところがきっとできるでしょうし。でも社会って大きな中で対話ってめちゃめちゃ難しいので。そういうところでちょっとずつ自信と誇りと、自分に何ができるんだろうって考えるきっかけを持てるといいですよね。

大谷(Creative Studio koko)
見える景色を変えていくことも大切だなと。今までみてきた「ものの見え方」が変わること。会社の中で知らない、想像できないから判断できないという点が壁になることを踏まえると、視覚的に1回見たことがある、聞いたことがある状態をどれぐらい増やせるかなって。これまで見たことがある世界だけが「ふつう」じゃないこと。SNSでそうじゃない側面がだいぶ見えるようになってきたけれど、それをどれぐらい大きな単位で見える形にして作っていけるかなと。何かひとつ世の中に出るだけでも、直接的じゃなくともその後が変わるはずだと信じています。どこかでリファレンスになったり、あの企業もやっているからやろうってなったり。例えその時小さくても、1つの点から繋がっていく。そのために、それぞれがそれぞれの持ち場で頑張り、支え合う。それが大事かなと思います。

Social Business Labでは、今後様々な企業の中の方たちと繋がっていく場をつくっていきたいと考えています。コラボレーションやお問い合わせは、こちらからご連絡ください。