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【第2回オフラインイベントレポート】 アートを通して考える、フレームの中と外 | 個人の特性を尊重し活かせる社会にするために (ゲストトーク後編)

社会課題に目を向ける企業の担当者たちと考える「フレームイン / フレームアウト」。「無意識に取りこぼしている視点」を、私たちはどう企業活動に活かせるか?

こんにちは!Social Business Lab運営事務局です。

わたしたちは、SDGsをはじめ、サステナビリティやジェンダー、ウェルビーイングといった社会的なテーマに関連するプロジェクトを、企業の中で担当する「人」たちとともに考え、学びを共有する勉強会を定期的に開催しています。

世の中に新たな考え方を提示するような「プロジェクトの裏側」を分析し、関係者をゲストに過程や課題といった生の声を共有。各企業で社会課題へ取り組み人々をつなげ、それぞれの活動や業務に活かす場を目指しています。

前編はダウン症のある娘さんをもち、フリーアナウンサーとして活躍されている長谷部真奈見さん。
後編は知的障害のある作家が作り出すアートを社会に実装し、社会と障害のタッチポイントを作ることで障害の概念を変えることにチャレンジしている株式会社ヘラルボニーの伊藤琢真さんをお迎えしワークショップを開催しました!

●参加企業
株式会社アーチャー新社 / 株式会社小学館 / 貝印株式会社 / カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 / ソフトバンク株式会社 / 土屋鞄製造所株式会社 / パナソニック株式会社 / 日本テレビ放送網株式会社 / 株式会社ニューピース / モビロッツ株式会社 / REBOLT inc.
*五十音順

ワークショップのテーマは「フレームイン・フレームアウト」
多様な個人がいれば、その家族も多様。 しかし、現在の社会ではその多種多様な個人があらゆる広告やCM、制度などから Frame outされてしまっていることが事実として多く存在しています。企業活動において、社会側の問題としてFrame outされてしまっている多様な人々とその家族の存在をどうすればFrame inできるのか?

長谷部真奈見さん、伊藤琢真さんお二人をゲストにお迎えし、フレームインされにくい現状のある特性のある方々と、一番近い立場だからこその視点でこのテーマをお話ししていただきました。これまで知らなかった視点を学び、どうすれば実際の自分達の企業活動に活かせるのか?ハードルになる点を分析し、チームごとに具体的なアクションを考えました。

前編は、株式会社ヘラルボニーの伊藤さんのトークを中心にお届けします。

伊藤琢真さん



Profile
株式会社ヘラルボニー アカウント事業部 ビジネスプロデュース局所属。
障害のあるいとこのアートに衝撃とただならぬ可能性を感じたことをきっかけに、知的障害のあるアーティストたちの活動を推進し、社会とのタッチポイントを作るヘラルボニーに入社。



まず最初に、伊藤さんが所属している株式会社ヘラルボニーについてお話いただきました。

全国にアート活動に取り組んでいる福祉施設っていうのが大体、200ぐらいあるんですね。
我々は、そういった福祉施設とか、個人で活動されていらっしゃる知的障害のある作家さんとアートのライセンスの契約を結ばせていただいておりまして、そのアートをデータとしてお預かりしていて、 様々な形で社会に実装させることで、社会と障害というもののタッチポイントを作り障害の概念を変えていくことにチャレンジしている会社でございます。
実際に我々がこのような事業を始めたきっかけがあるんですけれど、これが弊社の代表になります。

両側の2人が弊社の代表、松田崇弥、松田文登という双子です。4歳上のお兄さん、翔太さんがきっかけでヘラルボニーを起業しました。

翔太さんが重度の知的障害を伴う自閉症のあるお兄さんで、ただ、代表2人にとっては、生まれた時から当たり前に家族としてお兄ちゃんとしてそばにいる存在でした。ただ、双子が成長するにつれて、学校に通うようになったり、 親族の方と会話するようになってからは、翔太さんのことでからかわれたり、 親族からも、「翔太さんの分まで頑張ってお前らは生きていくんだぞ」みたいな声をかけられて、自分たちにとっては一緒に成長してきたお兄ちゃんという存在でしかない翔太さんが、社会というフィルターを1枚通しただけでかわいそうな存在、欠落している存在と見られてしまうことにすごく違和感を感じて作ったのがこのヘラルボニーという会社です。

このヘラルボニーという会社名、これはなんなのかと言いますと、翔太さんが自由帳にずっと書いていた謎の言葉なんです。このような形で、ヘラルボニー、ヘラルボニーと毎回自由帳に描いていたんですけれども、翔太さんに「これなんなの?」って聞いても、分からないとしか言わないんですよね。知的障害のある方っていうのは、 人にはなんか分かられないけれども、自分にとってすごく大切なこだわりだったりとか、同じことをずっと繰り返す、常同行動っていうものがあったりします。障害があるっていうだけで、いくらすてきなものだったとしても、それは障害がある人が書いたからっていうことで、 正当に評価されないような部分もあるという風に思っております。
僕たちはそういう一見価値がないという風に思われているものを、しっかり価値のあるものとして届けたいなという風な思いを込めて、このヘラルボニーという謎の言葉をそのまま会社名にしました。

JR東京駅の八重洲口や、Panasonic Laboratory Tokyoの内装などのアートプロデュースなども幅広く手掛けてきたヘラルボニー。障害のある方々がそれぞれ持っている特性を最大限に活かす仕組みづくりをされています。

ヘラルボニーがしていることというのは、アートという美しい啓発機能を持ったものを通して社会側の認識を変容させていくというようなアプローチです。
実際にヘラルボニーが百貨店を中心にポップアップなどで展開をさせていただいているんですけれども、障害のある方のお母さんとかご家族にお聞きすると、「ヘラルボニーがあるから私たちも来て大丈夫なんだな」という風に思いましたというような大変ありがたいこと言葉をいただくこともありました。

フレームインやアウト、そのように社会課題と言われているものって、最終的には個人の問題になっていくんじゃないかなという風に思っています。
今、世の中で、障害のある方の雇用をどんどんあげていきましょうという風潮があるかと思うんですが、そこで問題として言われているのが、障害の雇用率を上げるために雇用はするけれども、実際の活躍の場は業務過程の一部を担うなどが多いのが現状と聞きます。そうすると、障害のある方の持っている特性はあまり活かされない場合もあると思います。
障害っていうものでざっくりと見るのではなくて、その人はどんなことができるのかっていったところによりフォーカスをしていくと、様々な働き方っていうのを見つけ出せるのではないかなという風に思っております。

フレームごと取り払って初めて見えてくる
一人一人が持っている個性、特性と強み

私たちがフレームアウトをしないためにどんなことができるのかっていうと、 自分自身のマイノリティー性っていうのを自認することというところから始められるのではないかなという風に思っております。ちょっと話が急に飛躍しちゃうのであれなんですけれども、フレームアウトをしてしまうっていう「フレーム」って、そもそもなんなんだろうっていうところを考えたいなっていう風に僕は思っておりまして。
よく多様性を認め合うみたいなような話をされますけれども、多様性っていうことを思い浮かべるとLGBTQ+や障害っていうものとかであったりするんですが、今、時代とか社会側がラベリングしたそういったもの以外のマイノリティー性ってないのかなって思うんです。


第一回と第二回目のオフラインイベントのテーマとして掲げている「フレームイン、フレームアウト」。このフレームの定義を、マイノリティー性という切り口から再度考え直す必要性について伊藤さんは上記のように話していました。

僕の中にもきっとたくさんマイノリティー性はあって、人にそれを言うことがすごくはばかれるようなこともあったりしますし、そこってなかなか社会としてはまだラベリングがされていないけれども、自分の中にあるなという風に思うんですよね。
今はたまたま障害とかLGBTQ+はラベリングがされているってだけで、我々が多様性を受け入れる側なのかっていうことを思うと、決してそうではないと思っていて。
自分にもそのマイノリティー性があるのであれば、自分たちもフレームの内側の人間なんじゃないかと。
そういったフレームをどうやって内側に入れようかなっていう考え方もあるとは思うんですけれども、「そもそもフレームって必要なんだっけ?」っていうことを考えたくて。多様性とか、LGBTQ、障害っていう大きなくくりではなくて、 自分のマイノリティー性を自認することで、自分はその内側の人間であると自覚する。そうすることによってフレームがなくなり、大きなくくりの中の人間としてではなくて、 1人1人の個人を見ることができて、それが結果社会課題の解決につながっていくのではないかなというメッセージをお伝えできればと思います。

「マイノリティー」と聞くと、障害やLGBTQ+という大枠の中に存在している方々のことが思い浮かべられるかもしれません。
多様性を重んじることはまずマイノリティーを認知することから始まるとも言えますが、存在しているマイノリティーは大枠の中の方々だけではないはず。
いつの間に私たちは多様性を「受け入れる」立場になっていたのか?
私たちはそれぞれ特性があり、それを自認することによって自分も他人も大枠の中と外の二極のみに存在している訳ではなく、あくまでも個人だということに気付くことができる。そして、個人個人に特性や強みやマイノリティー性があって、それに気付くことによって社会課題のより適切な解決の道筋を見出せるようになるのではないか、という大変興味深いお話をしてくださいました。

Social Business Labでは皆さんとともに社会の前進へ向け活動するコミュニティを目指しています。
今回のようにゲストトークとワークショップを開催したり、参加者の皆さんが企業のソーシャルアクションについて情報交換しあえるコミュニティの形成も進めております。今後も皆さんとともに学ぶ時間を作っていきますので、ぜひTwitterをフォローの上、次回のイベントもチェックしてみてください!

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