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母乳相談室で言われた呪いの言葉

2016年の12月に双子の男の子を出産した。初めての子供たちなので右も左もわからない状態での双子だった。

双子は2000gをギリギリ越えたくらいで産まれたので1ヶ月弱NICUとGCUで入院していた。その間先に退院してしまった私は夜な夜な母乳を絞り、帝王切開後の身体で出産した大学病院までよろよろと通っていたのだ。

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年末に双子は退院した。私は必死でミルクを作って飲ませ、オムツを変えて、ミルクを作って飲ませ、搾乳をした。小さく産まれた双子は吸い込む力がまだ弱く、母乳を直接飲めないので手で絞って哺乳瓶であげる必要があったのだ。

手で絞っていると赤ちゃんが直接飲むよりどうしても母乳トラブルになりやすい。しょっちゅう乳腺炎になってしまった。乳腺炎になったときに最初は産院の母乳外来に行ったのだが、遠くて双子を連れて出かけるのが大変だったので近くの母乳相談室へ行った。生後2ヶ月頃のことだ。ここで呪いの言葉を浴びた。

乳腺炎のマッサージだけしてもらうつもりだったのに、最初に産まれたときの体重と、その後の体重の経過を事細かに記載させられた。それを見た助産師さんが言うのだ。

「体重増えすぎ! こんなに太ったらだめよ。最初の1ヶ月なんて1キロも増えてるじゃない! ミルク飲ませすぎ!」

その後乳腺炎のマッサージをして貰ったのだが、母乳の出かたを見た助産師さんはこうも言うのだ。

「おっぱいいっぱいでてるから大丈夫よ! これだけ出てれば1人分はミルク足さなくても大丈夫!」

なるべく母乳育児をしたいと思っていた私はこの言葉に一気に堕ちてしまった。欲しかった答えを貰えてストンと宗教のようにハマってしまったのである。

その日から1回の授乳で双子に1人はおっぱい、1人は控えめにしたミルクをあげるようになった。もっと飲みたいと泣く双子をバウンサーに乗せてひたすら揺らして我慢させた。1人だと2人を抱っこできないので泣き止ませるのも大変だった。

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「飲みすぎだったんだって、これがちょうどいい量なんだよ」

そう言ってひたすら次の授乳時間を待ち続けた。


さて、この記事を書いていることからわかるように、私の呪いは解けた。助産師さんから言葉を貰って1ヶ月ほど経ったときのことだ。

自治体の3~4ヶ月検診で身長体重測定をしたあとの面談で、保健師さんが言うのだ。

「ここ1ヶ月の体重の増えが悪いけど、ミルクもうちょっと増やせない?」

思い当たることはもちろんあった。もっと欲しいという双子にミルクを我慢させていた。保健師さんにそれを説明するとすぐに事情は分かってくださった。母乳相談室には母乳信仰が強い助産師さんもいるから時々そういうことがあるようだ。

冷静になって思い返すと「最初の1ヶ月なんて1キロも体重増えてるじゃない!」とあの助産師さんは私を叱ったが、双子は最初の1ヶ月は大学病院のGCUで体重とミルクの量を毎日管理されて育っていたのだ。プロに委ねて、私はミルクの量に一切介入していなかった。でも必死になっていたあの時はそのことに全然気が付かなかったのだ。

泣きながら双子に自分の選択ミスを詫びて、その日からミルクの量を元に戻した。ちなみに本筋とは外れるが、双子にミルクを上げる際はバウンサーミルクを採用している。

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バウンサーに乗せて哺乳瓶をタオルで固定する。こうやってあげてるんですけど…と大学病院のGCUの看護師さんに正直に白状したことがある。

「すごい良いと思いますよ! お母さんが工夫して負担が減るならそれが一番いいんです。赤ちゃんは『ママ抱っこで飲ませて欲しい』なんて思ってないんですから!」

言葉は救いにも呪いにも、毒にも薬にもなるなと本当に思った。

ちなみに私に呪いをかけた母乳相談室は「桶谷式母乳育児相談室」というところだったのですが、生後7ヶ月の頃再び乳腺炎になって「何を言われても気にしないでマッサージだけしてもらうぞ!」と意気込んで別の桶谷式に行ったところ

「双子ちゃんなのに母乳続けてるなんてすごい! 元気にスクスク大きくなってますね」

とひたすら褒めちぎってくれたし、体重の増えなど一切指摘されなかった。同じ流派(?)でもやり方考え方は人それぞれなのである。

両親、義母、義父、医者、助産師、看護師、保健師。妊娠出産育児は色々な方に会って、様々な言葉を受けるが、どうかそれが呪いとなりませんように。そんな気持ちを込めて私の出来事を書いてみました。

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